第3回 製作工程に起きる"糸ほつれ"の世界

人工知能(Artificial Intelligence)、すなわち「AI」。この革新の技術が取り沙汰されるようになってから、もう半世紀以上の年月が経とうとしています。そう遠くない未来において、AIが私たちの生活・社会・文化を多方面から支える存在、あるいはそれら自体となり得る、そのような世界の到来が見込まれているのです。現代と未来に欠かす事のできない、AIに関する多彩な諸相をお伝えするべく、私たちクリスタルメソッド株式会社が「全20回」に渡ってAI解説特別連載「AIはゼウスではないが大いに役立つ」をお届けしています。第3回は、「製作工程に起きる"糸ほつれ"」に関するお話を致しましょう。

ミスターコーヒーテスト

第2回で、私たちは「2Dセグメンテーション」というAI技術のお話をしました。「2Dセグメンテーション」のセグメンテーション(Segmentation)とは、「分割」を意味する英語。2Dとは、平面的な情報、主には「画像」を意味するものです。何かを判断する際の基準をAI自身が設定する「深層学習(Deep Learning)」を用いれば、2Dセグメンテーションは飛躍的にその有用性が高まります。第1回でご紹介した「レントゲン画像の読影」などの医療用の画像検査を始め、工業用検査、自動運転やカーナビ、ロボティックス等、製造業や生活のあらゆる側面での応用が、既に広い範囲で行われているのです。

しかし、私たちは2Dのセグメンテーションだけで、満足をする訳にはいきません。私たちは3D、すなわち「三次元」の世界に住んでいるからです。AIは画像だけではなく、立体的なこの現実世界の情報を瞬時に、そして正確に判断して貰わねばなりません。そうした「三次元のAIによる判断を問う」という話題に関連する、ひとつの有名な逸話があります。それが、「ウォズニアックのミスターコーヒーテスト」です。

ウォズニアックという名前を知っている方も多いと思います。スティーブ・ジョブズと双肩を成す、Apple社の共同創業者スティーヴ・ウォズニアックです。彼は、私たち人間とAIの決定的な違いについて説明しようとした際、非常にシンプルな事例を掲げてみせました。ウォズニアックいわく、「あるAIを搭載したロボットがいるとしよう。そのロボットが家に歩いて入ってきてコーヒーメーカーとコーヒー豆を探し、コーヒーを淹れてくれる能力があるのなら、そのロボットにはすべて高度な知能を有しているとみなすべきだ。このAIに対する知能テストは『ミスターコーヒーテスト』とても表現しよう」と。

「コーヒー豆を探して、コーヒー機器を使って、コーヒーを淹れてくれるAIの開発が、そんなに難しいことなのだろうか?」と、お考えになった方もいるかもしれません。しかし、三次元を判断する事は、二次元を判断するよりもずっと複雑なのです。それこそ、私たち人間は2歳児程度でも「わんちゃん」と「ねこちゃん」の違いをすぐに判別できるでしょうが、コンピューター視覚システムがそれを適切に判断する為には、多くの技術者の労力が費やされます。

「ミスターコーヒーテスト」にAIが合格する為には、推論、物理学、機械視覚、汎用ロボットボディーの製造、ロボットアクチュエータの適性操作、ビッグデータベースへの即時アクセスと解析など、無尽蔵の高度なAI技術が必要となるのです。

糸ほつれ

ミスターコーヒーテストに合格するようなAIの登場は、まだ少し先の未来になるでしょう。しかし、弊社を含め、既に三次元へのAI応用(3Dセグメンテーション)は、製造業を始めとしたあらゆる分野に波及しています。私たちはAIの行動目的を特化する事によって、その実現を果たしています。言うなれば、「コーヒー豆を探すAI」、「コーヒー機器を使うAI」、「コーヒーを淹れるAI」といった具合に、それぞれ細分化・分業化した目的をAIに与える事により、3Dセグメンテーションを可能としているのです。

弊社のAIにおける応用事例の中に「糸ほつれ」を発見する3Dセグメンテーション系のAIがあります。繊維産業のメーカーは、検査工程で製造糸の表面を事細かにチェックし、品質を維持しなければなりません。こちらの検査工程において、AIがカメラによって撮影した糸の様子を外観検査によって捉え、「糸ほつれ」の異常検知を解析します。撮影する際の照射光の種類(可視光・紫外線等)や角度によって、立体検査時の異常検知の解析が微細に異なって来ます。人間でも熟練工ではないと確認しきれない、非常に奥深い世界。その「糸ほつれ」の世界に、AIが果敢な挑戦を続け、その実績を上げています。

製造業向けIoT活用カンファレンス 2020 秋

「革新」が「日常」に広がる世界。私たちは今、まさにAI技術との付き合い方を考え、来に向けて力強く歩む段階にあります。此度、2020年9月17日(木)、「製造業向けIoT活用カンファレンス 2020 秋」が東京会場(東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー・KITTE 4F)にて開催されます。AIの技術仕様から具体的な活用事例まで、より多くの「革新」を理解する大変意義のあるイベントとなっております。私たちクリスタルメソッド株式会社
も、その分野の一翼を担う活動者として、同イベントへの参画を行わせて頂いております。AIの技術利用にご興味のある皆様は、ぜひとも積極的にご参加を下さいませ!

■「製造業向けIoT活用カンファレンス 2020 秋」※ロゴ画像など
公式サイト:https://f2ff.jp/event/iotc-2020-02
会期:【東京会場 (オンラインセミナーも予定) 】 2020年9月17日(木)
会場:【東京会場】JPタワーホール&カンファレンス(KITTE 4F)
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー・KITTE 4F
主催/運営:株式会社ナノオプト・メディア
参加料金:【東京会場】事前登録にて無料
後援団体:
持続可能なモノづくり・人づくり支援協会
日刊工業新聞社