第7回 液晶ディスプレイ製造の異常検知AIの世界

人工知能(Artificial Intelligence)、すなわち「AI」。この革新の技術が取り沙汰されるようになってから、もう半世紀以上の年月が経とうとしています。そう遠くない未来において、AIが私たちの生活・社会・文化を多方面から支える存在、あるいはそれら自体となり得る、そのような世界の到来が見込まれているのです。現代と未来に欠かす事のできない、AIに関する多彩な諸相をお伝えするべく、私たちクリスタルメソッド株式会社が「全20回」に渡ってAI解説記事をお届けしています。第7回は、「液晶ディスプレイ製造の異常検知AI」に関するお話を致しましょう。

人類はAIに何を期待するか

前回、第6回ではAIと「深層学習(Deep Learning:ディープラーニング)」の関係性について触れました。深層学習の基本は「ニューラルネットワーク」という考え方であり、こちらは、私たちの脳の仕組みのひとつである神経細胞(ニューロン)の繋がりと、その繋がりによって行われている情報交流の流れを模倣するものでした。このような仕組みを持つ深層学習の登場により、AIは医療用画像処理を始め、工業用検査(外観検査・欠品検査等)、自動運転やカーナビ、ロボティックス等、製造業や生活のあらゆる側面での応用が行われています。

しかし、そもそも――なぜ、私たちはAI開発にこれほどの情熱を掛け始めたのでしょうか。そもそも、私たちはAIに何を望んでいるのでしょうか。今回は手始めに、こちらの点を掘り下げていこうと考えます。私たち(主には、AI開発に携わっている方)は、AIに二つの希望を託しています。それは、「①AIによって何かを解明して欲しい」という希望、そして「②何かを実現して欲しい」という希望です。

①の「解明して欲しい」という希望は、純粋なAI研究者に見受けられる多くの傾向です。AIは深層学習によって自動的に、正確かつスピーディーに情報を判断する能力を持ちます。それによって、学術的な解読、身体構造の解析、社会の活動傾向などを一気に発展させたい、という想いを託しています。②の「実現して欲しい」という希望は、工学系のAI技術者に見受けられる多くの傾向です。自動運転、病気検知、製造の円滑化などの社会革新をもたらしたい、という想いを託しています。

この①②の希望を叶える為に必要なAI開発の方向性には、主に3点が存在します。「①人間の知能と同等のAIを創る」「人間の知能の一部を特化させたAIを創る」「人間の知能とは無関係なAIを創る」というものです。現代の国際的潮流としては、主に②の「人間の知能の一部を特化させたAIを創る」という方針が多く取られています。例えば、飛行機は鳥の飛行を模倣したものですが、鳥の総てを完全に模倣する必要はありません。「飛ぶ」という特化した機能を果たせれば、飛行機の目的が達せられるからです。このように、一部に特化させた機能性を発揮させる事により、AIは人間社会にとって大きな有用性をもたらすのです。

例えば、将棋や囲碁のゲームAIは、Google HomeやAmazon Echoのように、情報を調べて教えてくれたり、簡単な会話が出来たりと、そういった能力はありません。もちろん、私たちのように身体(ハードウェア)を使って動き回る事もできなければ、このように脳(ソフトウェア)を総動員して記事を執筆する事も出来ません。しかし、将棋や囲碁のゲームAIは「ゲームで勝利する事に特化された能力」が深層学習によって実現され、今では人間のプロを凌駕するほどに進化しています。

液晶ディスプレイ製造の異常検知

この記事は、スマートフォン、タブレット、パソコン等の電子媒体でお読み頂いているかと思います。まさに、そのような電子媒体の画面、液晶ディスプレイに使用される「フィルム生産の工程検査」の現場にも、このような「特化型のAI技術」が導入されています。ディスプレイに用いられる機能性材料の生産工程は、外観検査による品質確保が最重要課題です。しかし、高い生産性を実現するRoll to Roll方式という連続生産の方法では、連続不良が発生するリスクも高くなるのです。

ここで応用されるAIは、欠陥画像のビッグデータを集積し、深層学習による自律調整を行う事で、高精度かつリアルタイムにフィルムの欠陥・不良を分類する事が出来ます。製品品質の異常検知を、正確かつスピーディーに判断し、これを速やかに人間へ通知するのです。既存の生産システムとの統合により、24時間365時間の稼働を可能としています。このような応用事例は、「何かを実現して欲しいという希望によって、人間の知能の一部に特化したAIが開発され、工学分野に展開された」、顕著な一例だと言えます。

製造業向けIoT活用カンファレンス 2020 秋

「革新」が「日常」に広がる世界。私たちは今、まさにAI技術との付き合い方を考え、来に向けて力強く歩む段階にあります。此度、2020年9月17日(木)、「製造業向けIoT活用カンファレンス 2020 秋」が東京会場(東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー・KITTE 4F)にて開催されます。AIの技術仕様から具体的な活用事例まで、より多くの「革新」を理解する大変意義のあるイベントとなっております。私たちクリスタルメソッド株式会社も、その分野の一翼を担う活動者として、同イベントへの参画を行わせて頂いております。AIの技術利用にご興味のある皆様は、ぜひとも積極的にご参加を下さいませ!

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■「製造業向けIoT活用カンファレンス 2020 秋」
公式サイト:https://f2ff.jp/event/iotc-2020-02
会期:【東京会場 (オンラインセミナーも予定) 】 2020年9月17日(木)
会場:【東京会場】JPタワーホール&カンファレンス(KITTE 4F)
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー・KITTE 4F
主催/運営:株式会社ナノオプト・メディア
参加料金:【東京会場】事前登録にて無料
後援団体:
持続可能なモノづくり・人づくり支援協会
日刊工業新聞社