第8回 クリアーなスマホ通話音を実現するAIの世界

人工知能(Artificial Intelligence)、すなわち「AI」。この革新の技術が取り沙汰されるようになってから、もう半世紀以上の年月が経とうとしています。そう遠くない未来において、AIが私たちの生活・社会・文化を多方面から支える存在、あるいはそれら自体となり得る、そのような世界の到来が見込まれているのです。現代と未来に欠かす事のできない、AIに関する多彩な諸相をお伝えするべく、私たちクリスタルメソッド株式会社が「全20回」に渡ってAI解説記事をお届けしています。第8回は、「クリアーなスマホ通話音を実現するAI」に関するお話を致しましょう。

ベイズのアプローチ

前回、前々回で、私たちは「深層学習(Deep Learning:ディープラーニング)」について触れました。深層学習の基本は、人間の脳構造を模倣した「ニューラルネットワーク」という考え方であり、「AI自らが、学習の積み重ねによって、より高度な判断を行う」という点に最大の特徴があります。もちろん、こちらはとても原始的な状態ではありますが、AIは自律的な成長能力(現実情報をより正確に、よりスピーディーに判断出来るようになる、という意味においての成長能力)を持っているという事になります。

これによって、特化型AI(弱いAI)は医療用画像処理を始め、工業用検査(外観検査・欠品検査等)、自動運転やカーナビ、ロボティックス等、製造業や生活のあらゆる側面での応用が行われています。人間のような、あらゆる活動を行える汎用AI(強いAI)はまだ登場していませんが、そうした前人未到の領域に関する研究も大いに進められている昨今です。

さて、そうした特化型AIの優れた機能性を示すものとして、「フィルタリングや分類」というものがあります。こちらの分野では、AIは人間以上の働きぶりを示します。例えば、皆さんがお使いになっている「Eメール」というオンラインサービスには、「スパムメール(迷惑メール)」の機能が必ず搭載されています。このフィルタリング機能は、メールに含まれているテキストから、それが通常のメールか、迷惑メールかを判断するのです。「迷惑メールであるらしい」という可能性が一定率以上なら、AIは自動的に別フォルダへの分類、または削除を行います。

この「迷惑メール自動分類」には、「ベイズのアプローチ(ベイズの定理:18世紀のイギリス牧師・数学者トーマス・ベイズによって見いだされ、その後にフランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスによって広められた数式)」と呼ばれる考え方がベースとなっています。この数式は、「事前にある判断を持っている状態で、新しい情報を獲得した際、その判断を修正する」というアプローチを、数字として証明したものとなります。例えば、「メールには『割引』というテキストが10回以上登場しているので迷惑メールである可能性が40%ほどある(事前の情報)が、個人名が繰り返し登場している(新しい情報)ので、迷惑メールである確率は20%程度になりそうだ(判断の修正)」という思考の流れが、このベイズのアプローチに相当します。

迷惑メールはまだシンプルなタイプの電子世界の話ですが、現実世界では更に複雑な因果関係が交じり合っていますから、そこでは「拡張したベイズの公式」が導入されています。「要因が複数ある場合の因果関係の分析」を行うに当たっては、「ベイジアンネットワーク」という計算が用いられます。このベイジアンネットワークは、状況変化に俊敏に対応する運営が可能となる為、音声認識、文字認識、データマイング等、幅広い応用対象があります。珍しい応用事例では、刑事捜査に用いられるプロファイリングやDNA鑑定も、徐々にこうしたベイジリアンネットワークの考え方が導入されたAI活用が始まっています。

クリアーなスマホ通話音を実現するAI

音声の世界では、「ノイズ」もまた、「迷惑メール」のように不必要なフィルタリング要素となります。例えば、私たちがスマートフォンで通話をする際、自分や相手の環境によっては雑踏・自動車・作業などの背景音により、相手の声がクリアーに聞こえないという事があると思います。介護、オフィス、製造、医療現場等、声が聞き取りにくい点は非常に大きなデメリットです。そこで、迷惑メールを自動分類するように、ノイズもまた「ノイズキャンセル」という方法で除去する、このような機能開発が進められています。AIはこの分野においても、特化的な機能性を発揮しているのです。

プロファイル搭載のプロセッサーを導入したイヤフォンや変換アダプターを介して、数千万種類に及ぶバックグラウンドノイズを瞬時にAIが異音判定し、それらを音源分離等によって低減させ、高調波状態(自分が聞きたい音のクリアーな状態)を保持する事が出来る、そのような製品が実用化され始めています。弊社クリスタルメソッド株式会社の開発を代表する「HAL3(ハルさん)」にも、このようなフィルタリング系のAI技術の導入を進めております。

製造業向けIoT活用カンファレンス 2020 秋

「革新」が「日常」に広がる世界。私たちは今、まさにAI技術との付き合い方を考え、来に向けて力強く歩む段階にあります。此度、2020年9月17日(木)、「製造業向けIoT活用カンファレンス 2020 秋」が東京会場(東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー・KITTE 4F)にて開催されます。AIの技術仕様から具体的な活用事例まで、より多くの「革新」を理解する大変意義のあるイベントとなっております。私たちクリスタルメソッド株式会社も、その分野の一翼を担う活動者として、同イベントへの参画を行わせて頂いております。AIの技術利用にご興味のある皆様は、ぜひとも積極的にご参加を下さいませ!

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■「製造業向けIoT活用カンファレンス 2020 秋」
公式サイト:https://f2ff.jp/event/iotc-2020-02
会期:【東京会場 (オンラインセミナーも予定) 】 2020年9月17日(木)
会場:【東京会場】JPタワーホール&カンファレンス(KITTE 4F)
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー・KITTE 4F
主催/運営:株式会社ナノオプト・メディア
参加料金:【東京会場】事前登録にて無料
後援団体:
持続可能なモノづくり・人づくり支援協会
日刊工業新聞社