量子コンピュータでできること

量子コンピュータの正体や価値については既にご紹介しましたが、具体的にはどのような事が可能になるのでしょうか。
集めた情報から最適解を探す
まずは既に述べたように、膨大な情報量から最適解を見つけ出す事ができます。それによって、古典コンピュータだと1万年はかかる暗号解読を、量子コンピュータを使ったら数分で解読できた話などもあります。この話自体は、元々量子コンピュータが得意とする分野であった故に起きた事とも言われていますが、いずれにしても一から順番にパターンを計算していく古典コンピュータにはできない芸当であると言えます。
限りないパターンから最適解を見つけ出す量子コンピュータが実用化されれば、膨大な時間と労力のかかる新薬の開発速度が上がります。更に、宇宙空間を凄まじい速度で飛んでいるデブリ(宇宙ゴミ)一つ一つの軌道を把握し、そこから安全な宇宙ステーションの開発も可能になると言われています。
排熱や消費エネルギーの心配を減らす
現在完成している量子コンピュータ「D-Wave」は、演算に使っている量子が隔離環境を必要とするために、絶対0度に近い温度の内部高真空環境を作り出しています。そして、それを維持するには25kW以下の電力が必要になるとか。75kWもの電力を必要とし大量の熱を生み出すスーパーコンピュータに比べて、消費電力や排熱の関係から量子コンピュータの方が優秀なのです。
AIなどを活用した社会ではより一層消費電力が増える事が予想され、2025年には電力消費全体のうち10%を占めるとも言われています。DXを推進することによる弊害とも言えそうですが、量子コンピュータはエネルギー節約の観点からも大きなメリットを持ちます。
現段階では量子の安定化が課題
様々な強みを持つ量子コンピュータですが、同時に課題があるのも事実。そのうちの一つに、量子を安定させたままビット数を増やす事が課題と言われています。
先ほど紹介した「D-Wave」は、最適化問題に特化した量子コンピュータであり、用途が限定され万能型ではありません。また、ゲート型と呼ばれるタイプの量子コンピュータはまだビット数が少なく、現在開発されている性能は古典コンピュータと変わらないとも言われています。
元々量子状態を保つ事が難しく、更にビット数を増やす必要もあるため、万能型が実用化されるには10年以上の年月が必要であると言われています。