第20回「日本の製造業におけるAI活用分野の可能性と気概とは?」

日本の製造業の未来に欠かす事のできないAIの諸相をお伝えするべく、「AIでコペルニクス的転回を迎えるモノづくり」と題し、これより全20回に渡ってAI解説記事をお届けしてまいりました。今回、記事連載のラストとなります第20回は「日本の製造業におけるAI活用分野の可能性と気概とは?」に関するお話です。

人工知能(Artificial Intelligence)、すなわち「AI」と呼ばれる技術の基本的な考えは、1947年、数学者アラン・チューリングによって提唱されました。それから半世紀以上の歳月を経て、私たちのデジタル世界は大きく変容し、近年はAI技術が驚異なスピードで進化を遂げ続けています。私ども「クリスタルメソッド株式会社」も、そうしたAI技術躍進の黎明期、2008年頃から活動を開始し、「DeepAICopy」「対話型AI HAL3(ハルさん)」「Winry」「多機能深層学習アプリケーション」「2D/3D検知システム」等、多様な実用製品をお届けしております。

究極的に言えば、私たち人類は「辛抱強さ=効率性」と「冷静さ=正確性」を人の代わりに担ってくれるロボットやプログラムを求めています。AIは、まさにその「効率性」と「正確性」を同時に実現する革新的手段であり、今後の日本社会、特に製造業を牽引する存在になると、私どもは確信をしております。そしてまた、一見するとモノづくり大国トップの座を譲り渡したように思える日本ですが、AI活用分野の未来においては堅実な実力発揮の可能性がある事を、私どもは感じ取っています。

日本製造業のAIシェア奪取

IoTやAIの革新的テクノロジーを使って国家・地球規模の新しい未来を、具体的かつ実践的な形で真っ先に描いたのはドイツであると言えるでしょう。ドイツは製造業(工場)のあらゆるQCD管理(「Quality:品質・仕様」「Cost:コスト・原価」「Delivery:数量・納期」)が、サイバー・フィジカル・システム(現実と仮想の情報を一致させるシステム)によって結びついた時、そこに「一切の無駄が生じない極限の製造ビジネススタイル」が生まれると考えています。この国家的プロジェクトが「インダストリー4.0」であり、アメリカ、中国もこの流れに追随しながら革新モノづくり社会への道のりを歩んでいます。

日本でも、最も製造業が勃興した1980年代の「Made in Japan」時代において、国家プロジェクトとしてAI関連技術を開発しようという推進力が生まれました。同プロジェクト(第5世代コンピュータ国家プロジェクト)には当時570億円という予算を投じられ、大々的な展開がなされましたが、結果としては実益あるものを生み出す前にバブル崩壊等の影響で頓挫してしまいました。以後は、先のドイツ、アメリカ、そして中国の動きを見ながら、受動的に製造業へのAI活用の道を模索しているといった状態です。

しかしAI活用分野自体には受動的なスタイルであっても、実はAI活用に必要な技術力は未だに日本は世界トップクラスに君臨し続けています。AI活用に不可欠なセンサー技術は日本製造業の得意分野であり、産業用ロボット技術は世界シェア50%を超える数値を示しています。特定の分野では特異性のある突出した技術性を有する日本は、その技術をAI活用社会の樹立に十分な貢献、あるいは指導を果たせるのです。ドイツ・アメリカ・中国らが推進する「インダストリー4.0」の流れに乗るのか、それとも日本独自路線を打ち立てるのかは現時点では定かではありませんが、先見性のある適切な戦略さえあれば、日本が何らかの形でAI世界の立役者になれる事は間違いありません。

日本製造業のAI活用へ向けて

逆に言えば、徐々に世界基準のAIプラットフォームが出来つつある中において、今こそ日本の製造業界・政府はAI戦略の方針を定め、強い発展・参加・挑戦の気概を持ち、『和製AIまたはそれに関連するテクノロジー』を集中して開発しなければなりません。これが行われなければ、日本の基盤産業である製造業は未来のメインストリームから外れてしまうでしょう。

モノづくり大国としての存在を示した日本は、独自の発想や視点を現実の形にしながら、安全・安心の品質を維持する、非常に高度な「Quality:品質・仕様」「Cost:コスト・原価」「Delivery:数量・納期」の管理(QCD管理)を体現して来ました。こうした製造業(工場)を支えて来たのは、「匠」とも評される「熟練の技・知見・経験」です。AIはこうした「匠の技」を継承し、特化した分野という条件であるのなら、その匠という師を超えた働きぶりを示します。日本がこのような「匠の継承」という視点からAI活用を推進する事も、世界の流れで存在を示す一手となるでしょう。

その他、「IoT」「ビッグデータ処理」「RPA」「金属3Dプリンター」「協働ロボット」等、AI活用を巡るシーンは多様です。省人化・省力化、そして「必要なモノ・コトを必要なだけ生み出す」というSDGs社会の実現へ向けて、日本製造業が行うべき事は山積しています。強烈な戦略の推進力が国家規模で生まれる近い未来を、AI開発領域に携わる私どもとしても強く望まずにはいられません。日本製造業のAI活用史の局面は、今、ピンチとチャンスの双方の岸に足を置いている状態なのです。どちらの岸に上がる事が出来るかは、数年内のAI戦略の是非に掛かっています。

輝かしい製造業の未来へ向けて

以上、こちらが製造業AI解説特別連載「AIでコペルニクス的転回を迎えるモノづくり」、第20回「日本の製造業におけるAI活用分野の可能性と気概とは?」に関するお話でした。

私たちの全ての願いを叶えてくれる汎用AI(強いAI)の登場はまだ先の話になりそうですが、「深層学習(Deep Learning:ディープラーニング)」という人間の脳構造を模倣した「ニューラルネットワーク」の誕生により、着実に「AI自らが、学習の積み重ねによって、より高度な判断を行う」という技術が現実のものとなっています。医療分野を始め、自動運転・カーナビ・ノイズキャンセル・音声分離・ロボティックス・介護・ビジネスデータ・IoT・アシスタントAI(Amazon EchoやGoogle Home等)、生活のあらゆるシーンでの活用が広がっています。

その中でも製造業は、AIが強みとする「辛抱強さ=効率性」と「冷静さ=正確性」を存分に活かせる分野であり、そこに日本の輝かしい未来へと繋がる原動力が隠されています。既に私どもが実用化に成功している工業用検査(外観検査・欠品検査、異音判定等)のAIを含め、今後、ますますの技術革新への邁進を続けてまいります。

私どもの製品にご関心がございましたら、どうぞ何なりとお問合せを頂ければ下さいませ。皆様と共に歩む製造業の未来を、心より楽しみにしております。