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第11回「AIが工場で熟練された異常検知の技を発揮する日へ」
製造業 写真 2D 異常検知
電気・ガス・通信網と言った分野を担う装置群は、私たちの文明生活を支える社会インフラとして24時間、正常に稼働し続けねばならない使命を負っています。その為には大量の資金と労力を投じて「保全」が行われなければなりません。AIはこの保全作業においても抜群の効力を発揮すると考えられますが、意外な事に現時点ではそれほど目立った活用事例がありません。機密性の高いビッグデータを気軽に取り扱えない事、安定性を優先して挑戦的に最新設備やシステムを導入できない事等が理由として挙げられています。
とは言え、慢性的な人手不足で先細りする未来が予見されている今、インフラ設備の保全にはAIの活用がどうしても必要になってくるでしょう。特に製造業が各工場に配置している製造装置やタービン等のインフラ設備は僅かな故障であっても生産ライン全体に影響が出る危険性がありますから、AIに予兆検知を支援して貰う必要があります。
製造業の機器故障に関する設備保存については、AIが登場する以前から研究が進んでいました。その方法としては、設備が故障した際に原因対策として実行される「事後保全」、設備が故障する前に計画的に行う「予防保全」という2種類が想定されていました。事後保全は再び同じ故障が起きる事を阻止する為に対策を作り、予防保全は故障のしやすい箇所や部品を定期的にメンテナンスします。これらの事後保全と予防保全は、これまである程度は機器による自動性にも支援を貰っていましたが、主に実際の人員が実行してきました。
AIの登場によって、この設備保全の方法に新たに加わったものが「予兆保全」です。この方法では全ての設備をインターネットに繋げるIoT技術を介し、各種センサーを通じて常に現場の設備情報を視覚化し、機械の状態を継続的に計測・監視します。これによって機械に少しでもエラーや不具合が見受けられる場合は、今後故障が起きる可能性が高いとして機械のメンテナンスや交換を行います。この方法では計測・監視の人的労力を軽減する事が出来ますから、より効率的で安定した工場運営が行える事になります。
一例として、タービンのような大型回転機器に注目してみましょう。
タービンは正常に稼働している時と、初期の不良状態が発生している時とで、回転数の振動が僅かに変化しています。これは私たちの身近にあるパソコンの事を思い浮かべても分かりやすいかもしれません。パソコンの冷却ファンは不良が発生すると回転数が弱まったり、異音が発生したりするようになります。そうしたタービンの僅かな振動数の差を学習材料としてAIに深層学習させれば、タービン故障をいち早く検知出来る体制を構築する事が出来るのです。
このようなAI・IoTを活用した予兆検知システムの原理は、生産ラインの現場にも適用する事が可能です。生産ラインで流れる製品に不良が発生していないかという点を常時センサーや写真解析によって計測・監視する事によって、自動的に異常検知を行う効率的な体制を実現するのです。インフラ設備でのAI活用はまだ黎明期と言えますが、こちらの生産ラインへの活用は世界のあらゆる現場に広がり始めています。
特に、製造業の現場で多く用いられているのが画像解析によって異常検知を行うAIシステムです。このようなAIによる画像解析の技術を「2Dセグメンテーション」と言います。従来、製品を目の前にして一瞬で不具合や不良を見分ける為には長年の経験と知識に裏付けされた「熟練の技」が必要でしたが、AIは予めその「熟練の技」を可視化したレシピを深層学習させておく事によって同じ水準の作業を常に実行出来ます。またビッグデータを適切に活用すれば更に精度を上げられますから、人手不足に悩む工場の品質管理に対して非常に効果的な支援を行えます。
それでもAIはその技術特性として汎用性に限りがありますので、人間ほど高度に五感情報を駆使した活動を行える訳ではありません。人間の目や手がまったく必要なくなるというディストピアな未来が訪れる事はしばらく無いでしょう。究極的に目指されている工場の完全無人化・自動化は技術革新を経た一歩先の未来の姿であって、目下、製造業が受けられるAIの恩恵は「最適化」となります。しかし、それもまた十分な恩恵です。
AIが熟練の目と手によって異常検知を行い、生産ラインを最適化する時代はもう到来をしています。この最適化は企業経営の安定化だけではなく、在庫管理や物流の効率化にも寄与し、SDGs課題解決にも繋がります。新時代に向けて、製造業全体がAI変革の波に乗らなければならない時が来ているのです。
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