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第1回「選別ではなく判断をする医療AIの世界」

人工知能(Artificial Intelligence)、すなわち「AI」。この革新の技術が取り沙汰されるようになってから、もう半世紀以上の年月が経とうとしています。それこそ、1920年代に初めてSF(サイエンス・フィクション)の世界に登場した「考えるロボット(カレル・チャペック著『R.U.R.』)」はあくまでファンタジー・夢の領域でしたが、その人類の夢は今や現実で確たる形となり、私たちの生活に浸透し始めているのです。そして、そう遠くない未来においては、AIが私たちの生活・社会・文化を多方面から支える存在、あるいはそれら自体となり得る、そのような世界の到来が見込まれています。

とは言え――AIは全知全能の神である「ゼウス」ではありません。AIはどれだけ優れているかではなく、私たちにとってどれだけ役立つのか、という点が重要なのです。今回、現代と未来に欠かす事のできない、このAIに関する多彩な諸相をお伝えするべく、私たちクリスタルメソッド株式会社が「全20回」に渡ってAI解説記事をお届けします。今回、第1回は「医療で活用されるAI」に関するお話を致しましょう。

トロッコ問題

ここに、哲学問題として非常に有名な「トロッコ問題」があります。この問題には様々なバリエーションがありますが、一般的には「暴走するトロッコの道が、先の方面で二つの道に分岐している。あなたにはその分岐を決定する力がある。そのそれぞれの分岐先には、別々の人間がいる。どちらかを犠牲にして、どちらを助けなければならない。あなたはどちらの道を選ぶのか」といった内容が提示されます。例えば、分岐Aには子供が三人、分岐Bには大人が二人いたとします。あなたは、どちらをトロッコの暴走から守るか、その選択をしなければなりません。あなたなら、どちらの道を選びますか?

この問題を自動運転のAIの倫理的思考と結びつけた実験があります。マサチューセッツ工科大学の「モラル・マシーン・プロジェクト」です。通行者の年齢・性別・種別(人または犬・猫など)など、条件を色々と交差させながら、約300万人が分岐選択の意思を確認しました。この統計の結果としては、「ドライバーが死亡したとしても、通行人を救う自動運転車を選ぶ」という傾向がもっとも高い事が判明しました。では、この人間的思考をそのまま自動運転AIに組み込み、それらに「運命の選別」を行うように組み込めば良い、という事になるのでしょうか。もちろん、答えは否。どんなにそれが合理的な選別を下せるAIであったとしても、運転者にとっては自分の安全を守る事を最優先にして欲しいはずです。

医療に適用されるAIにおいても、同様の問題が突き付けられます。仮に、医療AIがある患者を診断して、治療方法Aの成功率は70%、治療方法Bの成功率は90%だとしましょう。そして、Aは比較的緩やかに時間を掛けながら治療を進めるもので、Bは急激な外科治療と苦痛を伴いながら治療を進めるものとしましょう。その優秀な医療AIは、合理的に運命の選別を始めて、Bを選択するかもしれません。しかし、患者にとって、それは本当に幸せな事でしょうか。確率や合理性だけでは把握しきれない、人間の想いや信念というものが、そこに存在するのではないでしょうか。このように、人間が議論しなければならない倫理的問題が山積しています。これが、AIが「全知全能の神ゼウス」ではないという、ひとつの理由です。

まだ、私たちは私たちの運命を自分自身で選別しなければなりません。よって、現時点の私たちがAIに期待するのは「判断」です。より正確であり、よりスピーティーに行われる、判断。それが、現代の私たちが必要とする「正しいAI」「在るべきAI」の姿となります。

レントゲン画像AI医療応用

AIの機能性を大まかに分けますと、「音声認識」「画像認識」「機械学習」といったものがあります。これらの機能を複合的に用いる場合もあれば、単独で特化した形で用いる場合もあります。医療分野の行為には「予防」「診断」「治療」の3ステップがありますが、特に弊社のAIは放射線科、特に医療画像(レントゲン画像)から疾患診断を行う「診断」のステップ(=症状の判断)において、医療AI活用を用いております。医療技術の発達と高齢化社会の推進に伴い、複雑かつ増大し続けるレントゲン画像の診断業務を、AIが画像検査という形でサポートする応用事例です。

当然ながら、こちらのAI応用はあくまでも「より正確に、より迅速な判断」を行うものに留まります。放射線科医の読影を手助けし、作業負担の軽減に貢献を果たすものです。AIがどのような判断を下すにしても、最終的な運命の選択を行うのはお医者様と患者様、という事になります。もっとも、一般的な健康診断業務、例えば胸部レントゲン読影や心電図解析といった簡易的な診療においては、今後、AIの判断を全面的に取り入れる可能性が高いと言われています。健康診断の場合は、そちらのスクリーニングを経た後、個別受診で確定診断が行われますので、「AIの判断」が手作業と代替できる下地が整っているのです。この「レントゲン画像AI医療応用」のように、人手とコストを大きく軽減できる観点からも、AIは医療現場から大きな期待を寄せられている革新技術なのです。

このような画像検査は、医療分野だけではなく、工業用検査(外観検査・欠品検査等)、自動運転やカーナビ、ロボティックス等、製造業や生活のあらゆる側面での応用が行われています。実際に弊社でも外観検査や誤欠品検査を行っている事例がありますのでよかったらこちらからご覧ください。

外観検査・誤欠品

「革新」が「日常」に広がる世界。私たちは今、まさにAI技術との付き合い方を考え、来に向けて力強く歩む段階にあります。私たちクリスタルメソッド株式会社は、その分野の一翼を担う活動者として、意欲的に技術との向き合いを続けてまいります。

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