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第18回「微生物試験の高速化を促すAIの世界」

[コロナ禍により注目]

昨今の新型コロナウイルス蔓延の環境被害を受け、また一挙に注目を集めたAI分野があります。それが、微生物試験の高速化を支えるAI技術です。私たちの健康を脅かしている微生物がどのような形状を持つか、どのような特徴を持つか、何をすれば弱体化するか、ワクチンを生成するにはどのような構造が必要か、効果のありそうな治療薬の化学式はどのようなものか。こういった微生物試験全般の判断にも、深層学習によるAIが応用されているのです。従来よりも格段に速い研究展開が可能となっています。

感染症に関する研究だけではなく、元来は美容業界からも注目を浴びていたのが、微生物試験高速化のAIです。例えば、化粧品。化粧品は人に直接塗布するものですから、絶対的な安全性を確保しなければなりません。刺激や微生物汚染等を考慮し、人に安全な量や性質の防腐剤を配合した製品を開発する点が求められています。防腐剤に関する試験は、「チャレンジテスト(保存効力験)」と呼ばれます。このチャレンジテストでは、多彩な種類の細菌・酵母・カビ等を長期間かけて培養しながら、そちらを判定する必要があります。これまでは、非常にまとまった時間を掛けて行われていたテストですが、菌種同定・生育予測・カウント等、試験省略可否の予測をAIが代替して判断する事が出来るようになり、大規模な効率化に成功をしています。

[中国の成功事例]

微生物とAIに関する話題ですと、中国の事例を語らずにはいられません。複雑な想いが抱く方もおられると思いますが、コロナ禍蔓延後、中国政府は情報統制と一元統制によって一挙に感染症の抑え込みに成功しているのは事実だと思われます。その背景にあるのが、ここ十数年で実現した中国の膨大かつ極限的なAI管理体制です。

もともと、中国には全国民の戸籍・経歴・賞罰・思想・新庄・発言等の個人情報を行政が一元管理を行う「人事档案(レンスーダンアン)」という制度がありました。個人一代だけではなく、祖父母の代まで遡っての情報が集積されています。こちらの計画経済時代に生まれた制度が、近代に入り全国民の個人番号システムと紐付けされ、更に国民管理の重要度を増す事となりました。公安部のデータベースには、10億人以上の顔データと、4000万人のDNAサンプルがあると言われています。

これらのビッグデータをAIと連携させる事によって、政府は感染症の追跡やウイルスの動向を逐一把握。こちらの情報を踏まえ、ロックダウンと解除の行政判断を素早く繰り返す事により、現在の中国はほとんど以前と変わらない日常生活を取り戻しています。

この成功事例を私たちがどう捉えるかは、立場によって見解が異なるでしょう。確かに、莫大な人口を抱える都市においては、このようなAIの大活躍は歓迎するべき事かもしれません。しかし、それは自由やプライベート情報を差し出す事によって成立するディストピアな世界です。こちらを是とするか非とするかは、まだ人類は多くの議論を重ねなければならないように感じます。

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