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日本に量子コンピュータは存在する?開発する企業の事例

日本で量子コンピュータを開発する企業の事例

量子コンピュータとは、量子力学の原理を計算に応用したコンピュータです。2021年7月下旬、日本で初めて量子コンピュータの実機が稼働しました。現在、日本の企業では量子コンピュータの利用、研究、開発に取り組んでいます。この記事では量子コンピュータに携わる代表的な日本の企業について解説します。紹介する日本企業は、以下の4社です。

・富岳
・富士通
・東芝
・Nec

この日本企業に加えて海外での量子コンピュータを扱う企業の例としてIbmでの事例についても解説します。

日本での開発事例

光る文字
日本では様々な企業が量子コンピュータの研究開発に取り組んでいます。ここでは、その中でも代表的な企業の事例について解説していきます。

富岳での量子コンピュータ

富士通が理化学研究所と共同開発した、世界最高水準のスーパーコンピュータが「富岳」です。富岳自身は量子コンピュータではありませんが、量子コンピューターと組み合わせることによって高度な計算が可能となる、「量子古典ハイブリッドコンピューティング」の基盤技術に貢献しています。

量子古典ハイブリッドコンピューティングは理化学研究所の新事業です。高性能とされる量子コンピュータですが、だからこそ単独での運用が難しいとされ、富岳のような現行のコンピュータでサポートする必要がありました。またそれぞれが得意な分野の計算を担うことにより効率を高められるほか、量子コンピュータのような次世代機に関する知識を持っていなくても稼働できるメリットもあります。

富士通での量子コンピュータ

そんな富士通では、引き続き理化学研究所との共同研究を行い、2023年度に量子コンピュータを企業で実用化することを目標としています。2021年4月には、理研RQC-富士通連携センターを設立しました。現在の主な研究は、世界最速の量子シミュレータの開発です。ここでもスーパーコンピュータ富岳の一部、CPU「A64FX」が使われています。世界最大級となる、40量子ビットのシミュレータを開発するのが目標です。

またソフトウェアにも注目、2022年4月からは富士フィルムと提携し、「量子コンピュータアプリケーション」の研究をスタートさせました。富士通の量子コンピュータ技術は応用が利きやすいとされる量子ゲート方式を採用。量子デバイス、ソフトやアプリなど、コンピュータに関するすべての技術領域をカバーすることが可能です。一方ハード面では世界の研究機関とも協力しています。ソフトウェアの研究開発が中心となっており、ハードウェアは最終的な方式を模索しています。

量子コンピュータそのものではありませんが、量子の仕組みを参考に生まれた富士通の技術に、「デジタルアニーラ(Fujitsu Quantum-inspired Computing Digital Annealer)」があります。現行のコンピュータで解決が難しくなっている組合せ最適化問題に対して能力を発揮する技術です。カナダの1QBit社やトロント大学とのパートナーシップにより研究開発を進めています。

デジタルアニーラはアニーリング方式と呼ばれるタイプです。組合せ最適化問題にに対して、よりよい結果を探すための試行回数を爆発的に増やすことができ、迅速な処理を行います。演算がスピーディでありながら、複雑なプログラミングが不要など使い方もシンプルです。既に第4世代までが登場しており、物流や金融、デジタルマーケティングなど様々な分野の問題を最適化することが可能です。例えば物流に関しては、荷物のピッキングはもとより作業員の勤務スケジュール管理、配達員のルート検索などを各人に都合のよい解を短時間で見つけ出すことができます。

東芝での量子コンピュータ

東芝では2019年4月に、「シミュレーテッド分岐アルゴリズム(SBアルゴリズム)」を発表しています。東芝独自の量子コンピュータ理論で、富士通同様組合せ最適化に対応、社会における様々な分野での問題解決を行います。この理論を元に開発されたのが「シミュレーテッド分岐マシン」であり、このマシンをメインとした量子インスパイアード最適化ソリューション、「SQBM+」が2022年3月2日から提供されています。

SQBM+の中にはより短時間でより良い解答を探すタイプと、より高精度の解答を導くタイプ、2種類のアルゴリズムが含まれています。これをマシンが自動で使い分けることによって、速度精度に加えてマシンの利用範囲をも拡大することが可能です。速度においては、現行の解法であるシミュレーティドアニーリングのおよそ100倍を誇ります。ちなみにSQBM+利用にあたっては専用のハードウェアなどを必要とせず、物理的なソフトとしてだけでなくクラウド上でも提供されています。ほかにも拡張機能を選択したり、オンプレミス版のサービス利用も可能となりました。

東芝はさらに、「ダブルトランズモンカプラ」の考案も行っています。量子コンピュータをさらに高速に、より正確な解を導き出すためのサポートを行う可変結合器の新しいスタイルです。可変結合器は量子計算の際、2つの量子ビットを繋ぐためのデバイスとして使われますが、ダブルトランズモンカプラはこの結合を完全にオンオフと切り替えることが可能で、演算の実行及び停止を素早く高い精度で行えます。もともと2つの量子ビットは周波数が大きく異なるために、従来のデバイスでは高精度による完全オンオフが難しいとされていました。しかしダブルトランズモンカプラは、時間24ns・精度99.99%という結果を出すことに成功しています。

Necでの量子コンピュータ

Necでは1990年代から量子コンピュータの研究開発に取り組んでいました。富士通と同じくアニーリング方式を採用、やはり組合せ最適化問題の解決を課題としています。シミュレーテッドアニーリングマシンを開発し、問題への高速対応及び大規模処理のための研究が行われてきました。

Necも単独での研究開発だけでなく、様々な機関と連携しています。2020年から「量子コンピューティング推進室」という組織を設置し、同年2月にはSMBCグループ、日本総研との共同研究で量子アニーリングの実用性を検証しています。2023年までに、「全結合型量子アニーリングマシン」の実用化が目標です。将来的には、量子ソフトウェア開発及び業界への貢献も目指しています。

少し異なりますが、Necでは「Nec Vector Annealing サービス2.0」として、疑似量子アニーリングサービスの提供も始まっています。クラウド型のサービスで、従来の類似サービスに比べると高速、かつ大規模処理が可能です。従来比ではありますが、最大で30倍もの解決精度を誇っています。2.0版では2022年11月からスタンダードプランとプロフェッショナルプランの2種が提供、先んじて2022年9月にはオンプレミス型のソフトウェアライセンスも利用可能となっています。加えてオプションには、量子コンピュータの基礎から応用まで学習できるサービスも存在します。利用することで、専門職でなくとも学ぶ機会を得ることが可能です。

また東京工業大学、早稲田大学及び横浜国立大学との共同研究では、以前開発した超伝導パラメトロン素子の転用を発表しました。2022年3月には「最適化ソリューションプラットフォーム」を実現、世界初となる、多ビット化が容易な方式の基本形を開発しています。量子ビットの全結合をキープしながらも、問題解決にあたって規模を拡大することが可能です。

一方実際の現場でも、2020年3月から工場での導入が始まりました。量子コンピューティング技術を取り入れたことによって、作業時間の短縮はもちろん、スキルや経験を必要としていた業務も多くの人が実行できるようになったのが大きな変化です。製造業である工場では生産計画や計画立案のサポートが主な内容でしたが、この結果によって金融や物流を始め、ほかの業種であっても量子コンピュータを導入することで課題解決が可能となりました。特に経験不要の点は、辞職者がでやすい業界において人材不足の解決にも役立ちます。国内はもちろん、海外の生産工場での導入も期待されています。

海外での開発事例

プログラムコード
ここでは、海外の量子コンピュータを開発する企業で最も代表的なIbmでの事例を解説します。

Ibmでの量子コンピュータ

Ibmでは、「Ibm Quantum Computing」として、30台以上の量子コンピューターが稼働しています。クラウドにてオープンソースとして提供されている「Ibm Quantum Network」には、200以上の組織と45万人以上のユーザーが参加しており、実際の量子ハードウェアの提供を受けています。

またIbmは量子コンピュータのプロセッサに、鳥の名前を付けているのが特徴です。2020年開発の、127量子ビットプロセッサ「Eagle」を始め、2021年7月に日本国内に設置された「Falcon」プロセッサを搭載した「Ibm Quantum System One」。Oneは後に、2021年日経優秀製品・サービス賞の日経産業新聞賞を受賞しています。さらに2022年にはOneの3倍以上、433量子ビットを誇る「Osprey」搭載の 次世代機「Ibm Quantum System Two」を発表しました。2023年には更なる進化を遂げ、1000量子ビット以上の「Condor」が予定ているほか、2025年までには4000量子ビット以上となるプロセッサの開発を目標としています。

まとめ

ここまで日本での量子コンピュータの事例と海外の量子コンピュータの事例を解説しました。

量子コンピュータは利用されてる場合でも機能の一部のみの利用、もしくは開発途中なので今後の進展が楽しみです。量子コンピュータが完成すると今までの常識が変わります。

今後の発展を楽しみに待ちましょう。

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