第18回「製造業のサイバー・フィジカル・システムが目指すものとは?」

日本の製造業の未来に欠かす事のできないAIの諸相をお伝えするべく、「AIでコペルニクス的転回を迎えるモノづくり」と題し、これより全20回に渡ってAI解説記事をお届けしております。今回、第18回は「製造業のサイバー・フィジカル・システムが目指すものとは?」に関するお話です。

人工知能(Artificial Intelligence)、すなわち「AI」と呼ばれる技術の基本的な考えは、1947年、数学者アラン・チューリングによって提唱されました。それから半世紀以上の歳月を経て、私たちのデジタル世界は大きく変容し、近年はAI技術が驚異なスピードで進化を遂げ続けています。私ども「クリスタルメソッド株式会社」も、そうしたAI技術躍進の黎明期、2008年頃から活動を開始し、「DeepAICopy」「対話型AI HAL3(ハルさん)」「Winry」「多機能深層学習アプリケーション」「2D/3D検知システム」等、多様な実用製品をお届けしております。

究極的に言えば、私たち人類は「辛抱強さ=効率性」と「冷静さ=正確性」を人の代わりに担ってくれるロボットやプログラムを求めています。AIは、まさにその「効率性」と「正確性」を同時に実現する革新的手段であり、今後の日本社会、特に製造業を牽引する存在になると、私どもは確信をしております。ドイツが国家的に推進している「サイバー・フィジカル・システム」の概念は、そのようなAIの恩恵を現実の形として体現するものです。

無人スマートカーの『感覚』

自動車製造業界においてのひとつのパラダイムシフトは、「自律的に走る自動運転車の実現」だと言えます。この分野での先駆者はアメリカやドイツといった「インダストリー4.0(IoTとAIを活用したスマート工場社会の構築プロジェクト)」に関わる国が主体でしたが、コロナ禍を経てここ1年では中国の台頭が目立ちます。

中国では2020年の段階から一部地域において無人タクシー・無人バスの一般公道の運用がなされています。また広州ではEhang社の無人航空機を使用した「無人遊覧飛行サービス」も展開されており、実際に一般客を乗せた有人飛行が実現しています。中国は「2030年までに国内自動車市場に占める完全自動運転車の割合を10%にする」という戦略を掲げており、このようなスマートカー市場の大々的なインフラ導入に極めて積極的な姿勢を示しています。

しかしここで、私たちには「無人のスマートカーが現実の何を認識しているのか=どのような『感覚』を持って動いているのか」という疑問が生まれます。人間が感覚的に認識している現実情報(フィジカル)は、従来の方法では数値として視覚化(見える化)する事は出来ないはずです。しかし、無人のスマートカーは何らかの方法で現実情報(フィジカル)を電子情報(サイバー)に置き換え、その双方の完璧な一致と共に公道を事故なく走り抜けているのです。このような「フィジカルとサイバーの橋渡し役」として機能している革新技術が、AIとIoTのテクノロジーが融合された「サイバー・フィジカル・システム」なのです。

現実の工場・生産活動を仮想世界へ

サイバー・フィジカル・システムは、先ほどの無人スマートカー同様に、製造業における現実の工場(生産活動)をサイバーな世界へそのまま変換する必要があります。ここではソフトウェアやAIを活用する事により、設計段階から製造シミュレーションを実行する事からシステムの構築が始まります。このシミュレーションを最適化させ、「現実(フィジカル)」と「仮想(サイバー)」の合一を果たし、効率的なマス・カスタマイズ生産の実現へ結び付けるのです。

こうした合一に必要な措置は、基幹・生産管理システムである「ERP(Enterprise Resource Planning)」、製造実行システムである「MES(Manufacturing Execution System)」、製品ライフサイクル管理システムである「PLM(Product Lifecycle Management)」、さらには各種ロボテクスや製造機械に内蔵された制御システムなどを、AIと融合するネットワーク(主にはクラウドコンピューティング)で繋ぎ、一元管理を行う環境を整える必要があります。

このサイバー・フィジカル・システムの世界的先駆者であるドイツは、最終的な目標到達地点として「国全体がひとつの仮想工場になる」という状況を想定しています。巨大なモノづくり工場である「国家」の全ての生産事象が、デジタル化された情報通信ネットワークによりバリューチェーンを連結し、「国家規模の一切の無駄なきスマート工場社会」を実現しようとしているのです。このような構造は、引いては地球規模の視点、グローバルな水平連結にも転ずる事が出来とされています。

輝かしい製造業の未来へ向けて

私たちの全ての願いを叶えてくれる汎用AI(強いAI)の登場はまだ先の話になりそうですが、「深層学習(Deep Learning:ディープラーニング)」という人間の脳構造を模倣した「ニューラルネットワーク」の誕生により、着実に「AI自らが、学習の積み重ねによって、より高度な判断を行う」という技術が現実のものとなっています。医療分野を始め、自動運転・カーナビ・ノイズキャンセル・音声分離・ロボティックス・介護・ビジネスデータ・IoT・アシスタントAI(Amazon EchoやGoogle Home等)、生活のあらゆるシーンでの活用が広がっています。

その中でも製造業は、AIが強みとする「辛抱強さ=効率性」と「冷静さ=正確性」を存分に活かせる分野であり、そこに日本の輝かしい未来へと繋がる原動力が隠されています。既に私どもが実用化に成功している工業用検査(外観検査・欠品検査、異音判定等)のAIを含め、今後、ますますの技術革新への邁進を続けてまいります。私どもの製品にご関心がございましたら、どうぞ何なりとお問合せを頂ければと存じます。

以上、こちらが製造業AI解説特別連載「AIでコペルニクス的転回を迎えるモノづくり」、第18回「製造業のサイバー・フィジカル・システムが目指すものとは?」に関するお話でした。続く第19回は「製造業の事務系業務を支えるAI活用『RPA』とは?」について取り上げさせて頂きます。

第5回 AI・人工知能 EXPO【春】

--------------------------------------------------
■「第5回 AI・人工知能 EXPO【春】」
公式サイト:https://www.ai-expo-at.jp/
会期:2021年4月7日(水)~9日(金)10:00~18:00
会場:東京ビッグサイト青海展示棟(商談可能)
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
参加料金:事前登録にて無料
後援団体:
一般社団法人 人工知能学会
一般社団法人 日本ディープラーニング協会
同時開催:
第2回 ブロックチェーン EXPO【春】
第1回 量子コンピューティング EXPO【春】

■弊社概要
会社名:クリスタルメソッド株式会社
公式サイト:https://crystal-method.com/
住所:〒102-0073 東京都千代田区九段 4 丁目 1-14 TL ビル 5F
代表者:代表取締役 河合 継
研究者:20 名以上
主な取引先:大手自動車メーカー、金融システム構築
展望:対話 AI「HAL」に向けた「意識」の導入
--------------------------------------------------