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第18回「製造業のサイバー・フィジカル・システムが目指すものとは?」
無人スマートカーの『感覚』
近年、ドイツが国家的に推進している「サイバー・フィジカル・システム」の概念は、「効率性」を追求出来るAIの恩恵を現実の形として体現するものです。そのサイバー・フィジカル・システムを導入している主な開発分野のひとつが「自動車」となります。
自動車製造業界においてのひとつのパラダイムシフトは、「自律的に走る自動運転車の実現」だと言えます。この分野での先駆者はアメリカやドイツといった「インダストリー4.0(IoTとAIを活用したスマート工場社会の構築プロジェクト)」に関わる国が主体でしたが、コロナ禍を経てここ1年では中国の台頭が目立ちます。
中国では2020年の段階から一部地域において無人タクシー・無人バスの一般公道の運用がなされています。また広州ではEhang社の無人航空機を使用した「無人遊覧飛行サービス」も展開されており、実際に一般客を乗せた有人飛行が実現しています。中国は「2030年までに国内自動車市場に占める完全自動運転車の割合を10%にする」という戦略を掲げており、このようなスマートカー市場の大々的なインフラ導入に極めて積極的な姿勢を示しています。
しかしここで、私たちには「無人のスマートカーが現実の何を認識しているのか=どのような『感覚』を持って動いているのか」という疑問が生まれます。人間が感覚的に認識している現実情報(フィジカル)は、従来の方法では数値として視覚化(見える化)する事は出来ないはずです。しかし、無人のスマートカーは何らかの方法で現実情報(フィジカル)を電子情報(サイバー)に置き換え、その双方の完璧な一致と共に公道を事故なく走り抜けているのです。
このような「フィジカルとサイバーの橋渡し役」として機能している革新技術が、AIとIoTのテクノロジーが融合された「サイバー・フィジカル・システム」なのです。
現実の工場・生産活動を仮想世界へ
サイバー・フィジカル・システムは、先ほどの無人スマートカー同様に、製造業における現実の工場(生産活動)をサイバーな世界へそのまま変換する必要があります。ここではソフトウェアやAIを活用する事により、設計段階から製造シミュレーションを実行する事からシステムの構築が始まります。このシミュレーションを最適化させ、「現実(フィジカル)」と「仮想(サイバー)」の合一を果たし、効率的なマス・カスタマイズ生産の実現へ結び付けるのです。
こうした合一に必要な措置は、基幹・生産管理システムである「ERP(Enterprise Resource Planning)」、製造実行システムである「MES(Manufacturing Execution System)」、製品ライフサイクル管理システムである「PLM(Product Lifecycle Management)」、さらには各種ロボテクスや製造機械に内蔵された制御システムなどを、AIと融合するネットワーク(主にはクラウドコンピューティング)で繋ぎ、一元管理を行う環境を整える必要があります。
このサイバー・フィジカル・システムの世界的先駆者であるドイツは、最終的な目標到達地点として「国全体がひとつの仮想工場になる」という状況を想定しています。巨大なモノづくり工場である「国家」の全ての生産事象が、デジタル化された情報通信ネットワークによりバリューチェーンを連結し、「国家規模の一切の無駄なきスマート工場社会」を実現しようとしているのです。このような構造は、引いては地球規模の視点、グローバルな水平連結にも転ずる事が出来とされています。
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