第12回「AIが立体空間を把握しながら製造業で活躍する日へ」

製造業 3Dデータ 点群 異常検知

AIは写真解析のような2Dセグメンテーション技術に特異な実力を発揮しますが、近年は更に立体物を視覚化して解析する3Dセグメンテーション技術も存在感を増しています。立体物を瞬時に計測出来る「LiDAR」のような高度センサー装置が低価格化して安定供給がなされるようになりましたので、これAIの目として用いる事であらゆる分野への活用が広がったのです。

例えば、土木・建築分野におけるAI3Dセグメンテーション技術活用が存在します。土木・建築分野は、これまでほとんどの作業を人力で行っていた世界でした。しかし近年は他の業界と同様に慢性的な人手不足に悩んでいますから、無人化・自動化の技術やシステムをどうしても導入しなければならなくなりました。その他にも、資材のコスト増や施工工程の複雑化などの問題も重く圧し掛かっており、少ない人数と少ない予算でより多くの仕事をこなさねばならない状況に直面していますから、ますます変革に迫られているのです。

AIが同分野において変革した具体的な作業のひとつは測量です。これまで建造物を建築する前には、専門家の測量技術や航空機による測量が実施されていました。しかし、現在はより効率的でコストを抑えられるドローン利用の測量が推し進められています。ドローンで空から地面の撮影をしますと、点群データ等の3D情報を瞬時に、かつ正確に手に入れる事が出来ます。測量時間も費用も安くなり、人的な負担も大きく軽減されます。更には、これまでは危険性が伴っていた為に測量が困難であった複雑な地形でも、問題なく測量が出来るようになったのです。

建設大手の清水建設によるRobo-Carrierも、AI3Dセグメンテーション技術を最大限に活用した顕著な一事例です。このRobo-Carrierはレーアーセンサーによって立体空間を把握する能力を持ち、障害物を自律的に避けながら資材を無人運搬する事が可能となっています。この他、鉄骨溶接ロボット、床材・天井ボード貼り等を行える多能工ロボット等にも立体を瞬時に計測出来る3Dセグメンテーション技術が導入されています。話によれば、これらの開発を通じて得られる恩恵は「7割近くの作業員の削減」であると言います。

3Dセグメンテーションによる恩恵は土木・建築業界だけではなく、製造業全体にも広がっています。生産ラインに流れる製品群の立体情報を瞬時に計測し、その3Dデータを品質管理の学習を行ったAIに通せば、容易かつスピーディーに異常検知を行えるようになります。しかも、深層学習が適切に行われた精度の高いAIであれば、熟練の技とも言える程の高水準の異常検知を遂行出来ます。土木・建築業界と同様に、極めて由々しき人手不足やコスト問題に頭を悩ましている製造業にとって、こうした労力や人員の削減に関する恩恵は非常に大きな意味を持つ事になります。

製造業のコスト面に大きく影響する物流業界でも、こうしたAIによる3Dセグメンテーション技術は大きな存在感を示します。これまで、物流業界は機械化・自動化が困難な分野であると言われていました。生産された製品を消費者や別工場へ届けるには、輸送・荷役・保管・情報管理・流通加工・ピッキング・梱包等、多彩で複雑な作業が不可欠です。こうした多彩な作業を担当するには膨大な人手が必要です。それぞれの役割を代替する自動機械を開発する事は難しかったのです。

例えば、ピッキング作業ひとつを取っても、その気難しさがよく分かります。ピッキングとは、形や大きさが異なる製品を、保管場所から正確に取り出す作業の事です。作業員が指示を確認しながら倉庫内で製品を探し、これを特定のベルトコンベアや配送車両に流すというのが従来の方法です。しかし、膨大な在庫の中から特定の製品を探し出す労力は非常に大きく、また長時間作業によるピッキングミスも多数生じてしまいます。これらの問題を解決するべく登場したのがAI3Dセグメンテーション搭載ピッキングロボットで、これが作業時間と人件費の大幅軽減に大きく貢献しています。

AIが立体空間を理解しながら製造業や土木・建築の世界に大きく貢献している日が、既に訪れています。立体の理解に漕ぎつけたAIの存在は、これからもあらゆる分野への活用が展開される事でしょう。