第10回「日本が目指す製造業とAI活用シナリオとは?」

Society5.0

1980年代、日本の製造業は世界を圧倒する輝かしい技術力とシェアを誇るまでに成長していました。その成長シナリオの中核を描いたのは、当時の通産省(通商産業省)でした。現在、そのような過去の成功事例を鑑みながら、経産省が打ち立てているのが「Society5.0」という新たな成長シナリオです。それは「AIテクノロジー、IoT、ロボット等の革新技術を詰め込んだ社会の誕生」という内容になっています。

Society5.0とは、「第5段階の社会」を意味しています。これまでの日本社会は第1段階の「狩猟社会」、第2段階の「農耕社会」、第3段階の「工業社会」、第4段階の「情報社会」を経て現在に至ります。この現在の「情報社会」に、AIを中心としたテクノロジー活用が十分に加わりますと、「Society5.0(第5段階の社会=AI社会)」に到達をします。より具体的な説明としては、「Society5.0は現実空間にあるセンサーとインターネットを通じて、ヒト・モノ・コトの全ての情報がAIを介してオンラインへの蓄積・分析・フィードバックが適切に行われる社会である」といった説明がなされています。

大げさな表現に聞こえるかもしれませんが、この戦略はあながち夢物語とは言い切れない可能性と潜在力があります。というよりも、むしろそれは「そうならなければならない」という話でもあるのです。日本の国家の基軸となっている農業・モノづくり・モビリティ・医療・エネルギー・行政といった各領域においては、少子高齢化による慢性的な人材不足や産業構造の疲弊により、もはやAIによる十分なサポートを受けなければ立ち行かない状況になりかけています。

製造業の課題とAIの力

日本の製造業が抱えている課題は、主に2点あると言えます。1点目は上述の通りの「慢性的な人手不足」です。続けて2点目は「モノではなくコト(サービスやソリューション)が求められる時代への適応遅延」です。モノづくり世界は多様・複雑化を極めており、グローバリズムによる国際競争力にも配慮しなければならない為、「コト」という視点不足を補填する手段が必要なのです。

AIが強みとする自律的・学習的な3機能(予測・分類・実行)は、そうした製造業の課題解決に大きな力を発揮します。例えば、ニーズに対応した柔軟性の高い生産計画・需要予測・在庫管理を行うに当たっては、「予測」の機能分野が役立ちます。また、工場現場においては、「省人化」「見える化」「熟練技の継承」「異常検知の自動化」等を行い、あらゆる生産問題を総合的に解決する手立てとなり得ます。その他、「倉庫管理」「異業種協調配送」といった物流面での効率化も図る事が出来るでしょう。

AIによって可視化されたデータ連携を基盤として、「サプライチェーンの洗練」「生産性・稼働率の工場」「革新的なモノ・コトの創出」へと至る「Society5.0」の理想像が製造業界に体現されれば、そこに日本の新たな力強い姿を見出す事が出来るはずです。実際、ドイツでは、既にそのような「スマート工場」を先駆的に実現しています。このドイツ製造業とスマート工場に関する事例は、次回に詳しくお伝えします。