第16回「製造業のAI活用を推進する中国の諸相とは?」

日本の製造業の未来に欠かす事のできないAIの諸相をお伝えするべく、「AIでコペルニクス的転回を迎えるモノづくり」と題し、これより全20回に渡ってAI解説記事をお届けしております。今回、第16回は「製造業のAI活用を推進する中国の諸相とは?」に関するお話です。

人工知能(Artificial Intelligence)、すなわち「AI」と呼ばれる技術の基本的な考えは、1947年、数学者アラン・チューリングによって提唱されました。それから半世紀以上の歳月を経て、私たちのデジタル世界は大きく変容し、近年はAI技術が驚異なスピードで進化を遂げ続けています。私ども「クリスタルメソッド株式会社」も、そうしたAI技術躍進の黎明期、2008年頃から活動を開始し、「DeepAICopy」「対話型AI HAL3(ハルさん)」「Winry」「多機能深層学習アプリケーション」「2D/3D検知システム」等、多様な実用製品をお届けしております。

究極的に言えば、私たち人類は「辛抱強さ=効率性」と「冷静さ=正確性」を人の代わりに担ってくれるロボットやプログラムを求めています。AIは、まさにその「効率性」と「正確性」を同時に実現する革新的手段であり、今後の日本社会、特に製造業を牽引する存在になると、私どもは確信をしております。そして、それは日本社会だけではなく、アジア各国、特に中国が大きな注目を注いでいます。中国が日本以上に、ある数値の危機的状況を迎えているからです。

高齢化社会がもたらすもの

今、日本を含めて大半の世界先進国において、少子高齢化社会という言葉があらゆる時事問題で取り沙汰されています。少子高齢化によって引き起こされる労働力問題、福祉問題、経済問題等は、産業界、特に製造業にとってもビビットなダメージが加わる事象となります。アジア圏の中では、日本と共に中国も高齢化問題に大きなリスクを抱え、頭を悩ましています。

近年の経済政策の大転換から、世界第2位のGDPを獲得するまでに成長したモノづくり大国の中国は、世界最大の13億人という人口を有しています。その一方、中国では「一人っ子政策」が1979年から約35年に渡って実行されて来た為、特定の世代における若者の総数が少なく、驚くべき未曾有のスピードで高齢化社会が進行しています。このような経緯から、中国は将来的に重い環境問題・労働力問題・経済問題が生じると想定しています。それらの問題を解決する手段として、中国は「AIによるインダストリー4.0の実現」に大きな期待を寄せているのです。

IoT(モノがインターネットに繋がる事象)とAIが、工場のあらゆるQCD管理(「Quality:品質・仕様」「Cost:コスト・原価」「Delivery:数量・納期」)に適用される。工場同士のネットワークにより、材料・在庫・物流・エネルギー等の無駄が一切無くなり、循環可能な発展を可能とするSDGs社会が誕生する。それが、ドイツが先駆的に実践し続けている「インダストリー4.0」という国家的プロジェクトです。中国では、これに類する国家プロジェクトとして「中国製造2025」というプランが掲げられています。

中国製造2025

「中国製造2025」は、2025年までに、まずは工場のインターネット等のIT技術活用を完備するという内容になります。この技術の中にはAIテクノロジーも含まれています。この戦略の恩恵を特に受けるべきだと指定されている産業は10種類(十大重点産業)あります。それは「① 次世代情報通信技術」「② 先端デジタル制御工作機械とロボット」「③ 航空・宇宙設備」「④ 海洋建設機械・ハイテク船舶」「⑤ 先進軌道交通設備」「⑥ 省エネ・新エネルギー自動車」「⑦ 電力設備」「⑧ 農薬用機械設備」「⑨ 新材料」「⑩ バイオ医薬・高性能医療器械」です。

中国は「インダストリー4.0」のトップを走っているドイツとのビジネス連携を強めています。ドイツ側も大きな生産力・技術力を有している中国のモノづくり環境に対して意義を覚えており、2013年に中国提唱のもとでアジアインフラ投資銀行(AIIB)が発足した際、その参加を即座に表明しています。

かつて、アメリカのシリコンバレーが「世界中の規格・仕様を統一する事で、モノづくり企業や産業界がインターネット・AIで多角的に繋がる国際標準モデルを作るべきだ」という考えを示しました。現在のパソコンがWindows、MacのOSに集約され、どのユーザーでも同じ環境下で情報交換・処理を行えるのと同様に、モノづくり社会でも国際標準モデルが確立されれば「スマート工場」の理想郷が生まれる事になります。世界中が確立されたAI・インターネット製造モデルのもとで製造を行なえば、必然的に「必要なモノ・コトを必要なだけ生み出す」というSDGs社会が実現する事になります。中国とドイツのパートナーシップは、この世界標準モデルの構築へ突き進む一手となっています。

日本がこうした世界の流れに参加しながら「インダストリー4.0」の実現を目指すのか、それとも独自開拓による進行に及ぶのかは、まだ不鮮明です。いずれにせよ、製造業に対するAI・IoT活用は国際的には「周回遅れ」の状態ですので、和製AIの開発強化を目指さねばならない事は明らかです。

輝かしい製造業の未来へ向けて

私たちの全ての願いを叶えてくれる汎用AI(強いAI)の登場はまだ先の話になりそうですが、「深層学習(Deep Learning:ディープラーニング)」という人間の脳構造を模倣した「ニューラルネットワーク」の誕生により、着実に「AI自らが、学習の積み重ねによって、より高度な判断を行う」という技術が現実のものとなっています。医療分野を始め、自動運転・カーナビ・ノイズキャンセル・音声分離・ロボティックス・介護・ビジネスデータ・IoT・アシスタントAI(Amazon EchoやGoogle Home等)、生活のあらゆるシーンでの活用が広がっています。

その中でも製造業は、AIが強みとする「辛抱強さ=効率性」と「冷静さ=正確性」を存分に活かせる分野であり、そこに日本の輝かしい未来へと繋がる原動力が隠されています。既に私どもが実用化に成功している工業用検査(外観検査・欠品検査、異音判定等)のAIを含め、今後、ますますの技術革新への邁進を続けてまいります。私どもの製品にご関心がございましたら、どうぞ何なりとお問合せを頂ければと存じます。

以上、こちらが製造業AI解説特別連載「AIでコペルニクス的転回を迎えるモノづくり」、第16回「製造業のAI活用を推進するアジア各国の諸相とは?」に関するお話でした。続く第17回は「製造業の機器緒元にAI活用を行うビッグメリットとは?」について取り上げさせて頂きます。