第16回「製造業のAI活用を推進する中国の諸相とは?」

高齢化社会がもたらすもの

今、日本を含めて大半の世界先進国において、少子高齢化社会という言葉があらゆる時事問題で取り沙汰されています。少子高齢化によって引き起こされる労働力問題、福祉問題、経済問題等は、産業界、特に製造業にとってもビビットなダメージが加わる事象となります。アジア圏の中では、日本と共に中国も高齢化問題に大きなリスクを抱え、頭を悩ましています。

近年の経済政策の大転換から、世界第2位のGDPを獲得するまでに成長したモノづくり大国の中国は、世界最大の13億人という人口を有しています。その一方、中国では「一人っ子政策」が1979年から約35年に渡って実行されて来た為、特定の世代における若者の総数が少なく、驚くべき未曾有のスピードで高齢化社会が進行しています。このような経緯から、中国は将来的に重い環境問題・労働力問題・経済問題が生じると想定しています。それらの問題を解決する手段として、中国は「AIによるインダストリー4.0の実現」に大きな期待を寄せているのです。

IoT(モノがインターネットに繋がる事象)とAIが、工場のあらゆるQCD管理(「Quality:品質・仕様」「Cost:コスト・原価」「Delivery:数量・納期」)に適用される。工場同士のネットワークにより、材料・在庫・物流・エネルギー等の無駄が一切無くなり、循環可能な発展を可能とするSDGs社会が誕生する。それが、ドイツが先駆的に実践し続けている「インダストリー4.0」という国家的プロジェクトです。中国では、これに類する国家プロジェクトとして「中国製造2025」というプランが掲げられています。

中国製造2025

「中国製造2025」は、2025年までに、まずは工場のインターネット等のIT技術活用を完備するという内容になります。この技術の中にはAIテクノロジーも含まれています。この戦略の恩恵を特に受けるべきだと指定されている産業は10種類(十大重点産業)あります。それは「① 次世代情報通信技術」「② 先端デジタル制御工作機械とロボット」「③ 航空・宇宙設備」「④ 海洋建設機械・ハイテク船舶」「⑤ 先進軌道交通設備」「⑥ 省エネ・新エネルギー自動車」「⑦ 電力設備」「⑧ 農薬用機械設備」「⑨ 新材料」「⑩ バイオ医薬・高性能医療器械」です。

中国は「インダストリー4.0」のトップを走っているドイツとのビジネス連携を強めています。ドイツ側も大きな生産力・技術力を有している中国のモノづくり環境に対して意義を覚えており、2013年に中国提唱のもとでアジアインフラ投資銀行(AIIB)が発足した際、その参加を即座に表明しています。

かつて、アメリカのシリコンバレーが「世界中の規格・仕様を統一する事で、モノづくり企業や産業界がインターネット・AIで多角的に繋がる国際標準モデルを作るべきだ」という考えを示しました。現在のパソコンがWindowsMacOSに集約され、どのユーザーでも同じ環境下で情報交換・処理を行えるのと同様に、モノづくり社会でも国際標準モデルが確立されれば「スマート工場」の理想郷が生まれる事になります。世界中が確立されたAI・インターネット製造モデルのもとで製造を行なえば、必然的に「必要なモノ・コトを必要なだけ生み出す」というSDGs社会が実現する事になります。中国とドイツのパートナーシップは、この世界標準モデルの構築へ突き進む一手となっています。

日本がこうした世界の流れに参加しながら「インダストリー4.0」の実現を目指すのか、それとも独自開拓による進行に及ぶのかは、まだ不鮮明です。いずれにせよ、製造業に対するAIIoT活用は国際的には「周回遅れ」の状態ですので、和製AIの開発強化を目指さねばならない事は明らかです。

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