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社内向け生成AIガイドラインの作り方と運用ルール整備の手順

生成AIガイドラインとは、企業や自治体が生成AIを業務で安全に、かつ積極的に使うために定める社内ルールです。作り方の要点は、現場の利用実態を把握したうえで「使ってよいツール」「入力してはいけない情報」「生成物の確認と責任」を決め、既存規程と整合させてから経営層の承認と研修で定着させ、定期的に見直すことです。

この記事は、社内利用ルールを作る総務・情報システム部門の方に向けた内容です。必要な理由、策定手順、盛り込む条文、入力禁止情報、生成物の承認フロー、経営層の合意形成、既存規程(ISMS・就業規則)との整合、見直しの判断基準、参考にできるひな型と公的・自治体・企業の事例を、1ページで順に解説します。(2026年11月時点の情報です)

生成AIガイドラインとは:目的と必要な理由

生成AIガイドラインの目的は、法令違反や情報漏えいを防ぐことと、社員が迷わず生成AIを活用できる状態をつくることです。ルールが無い状態では、社員が個人アカウントで生成AIを使う「シャドーAI」が広がります。その結果、組織が把握しないまま機密情報が外部サービスに送信されたり、誤った生成物が社外に出たりするおそれがあります。

根拠となるリスクは大きく分けて次の5つです。上位の解説記事や公的資料でも、ほぼ共通して挙げられています。

リスク 起きること ガイドラインで決めること
法令違反(著作権法・個人情報保護法) 既存の著作物に似た生成物を使ってしまいます。個人情報を本人の想定外の形で外部サービスへ送信してしまいます。 入力禁止情報、生成物の権利確認、社外公開時の承認
情報漏えい・セキュリティ 入力した内容がサービス側に保存されたり、学習に使われたりする可能性があります。 利用を許可するツール、学習利用の設定、アカウント管理
ハルシネーション(誤情報) もっともらしい誤りを、資料や回答にそのまま使ってしまいます。 一次情報での事実確認、ダブルチェック
差別的表現・名誉毀損 偏った表現や、他者を傷つける内容を発信してしまいます。 禁止する出力・用途、公開前のレビュー
活用の停滞 可否の基準が無いため、社員が萎縮して使わなくなります。 使ってよい業務の具体例、相談窓口
ガイドラインが防ぐ5つのリスク
ガイドラインが防ぐ5つのリスク

著作権については、生成物が既存の著作物と似ていること(類似性)と、その著作物をもとにしていること(依拠性)がそろうと侵害になりうる点に注意が必要です。そのため「特定の作品名や作家名を指定して似せる指示を出さない」「公開前に類似チェックをする」といった具体的な行動ルールに落とし込みます。

ルールを整備して公開すること自体にも意味があります。「責任を持ってAIを使っている」という組織の姿勢を、取引先や市民に示せるためです。ガイドラインは禁止事項の一覧ではなく、「この範囲なら安心して使える」と示す活用の土台として設計します。

関連記事AIが判断する仕組みとは?学習からデータ・モデル・推論まで解説 / ニューラルネットワークとは?仕組みと種類(DNN・RNN)をわかりやすく解説

生成AIガイドラインの策定手順(5ステップ)

策定は「実態把握→方針とリスク評価→法務・情報セキュリティとの整合→経営層の承認と周知→定期見直し」の順で進めます。最初に実態を把握しないと、現場とかけ離れた厳しすぎるルールになり、結局守られなくなります。

生成AIガイドライン策定の流れ
生成AIガイドライン策定の流れ
ステップ やること 成果物
1. 利用実態の把握 全社アンケート、部門長ヒアリング、IT部門による利用ログの確認を行います。 利用ツールと業務の一覧、現場の要望・不安
2. 目的・基本方針とリスク評価 何のためのルールかを決め、業務ごとのリスクを評価し、適用範囲を決めます。 基本方針、適用範囲、業務別の可否表
3. 法務・情報セキュリティとの整合 著作権・個人情報の観点で確認し、既存規程と矛盾しないよう調整します。 ガイドライン原案、規程の対応表
4. 経営層の承認と周知 リスク許容度について合意を得て正式に承認し、説明会や研修で周知します。 承認済みガイドライン、研修資料
5. 定期的な見直し 相談内容やトラブル、技術・法制度の変化を集めて改訂します。 改訂履歴、FAQの追加

ステップ1:現場の利用実態をヒアリングする

棚卸しの方法として、「全社アンケート(匿名で利用実態を回答)、部門長ヒアリング、IT部門によるSaaS利用ログの確認」の3つが挙げられています(Alphakt)。アンケートは匿名にするのがポイントです。記名式にすると、無断で使っている人ほど回答しなくなり、シャドーAIの実態が見えなくなります。

また、アンケートでは「どのような業務で利用したいか」「どのような不安があるか」といった設問を用意し、現場の具体的なニーズや懸念を集めることが大切だとされています(TSクラウド:https://googleworkspace.tscloud.co.jp/gemini/gen-ai-guidelines)。設問の例は次のとおりです。

  • 現在使っている生成AIツール名と、使っているアカウントの種類(個人・会社契約)
  • 使っている業務(文書の下書き、要約、翻訳、コード作成、画像作成など)
  • 入力したことがある情報の種類(公開情報、社内資料、顧客情報など)
  • 今後使いたい業務と、使えずに困っていること
  • ルールが無いことで不安に感じている点

ステップ2:目的・基本方針を決め、リスクを評価する

目的は「安全な環境で生成AIの利用を進め、業務を効率化する」のように、禁止ではなく活用を軸に書きます。そのうえで、ヒアリングで出てきた業務ごとに「扱う情報の機密度」と「生成物が社外に出るかどうか」の2つの軸でリスクを評価します。全部門に一斉に適用するのか、特定の業務から段階的に広げるのかも、この段階で決めます。

ステップ3〜5:整合・承認・見直し

ステップ3と4は、策定担当者が最もつまずきやすい工程です。このあとの「経営層の合意形成と既存規程との整合」の章で、具体的な進め方を解説します。ステップ5は「見直しサイクルと改訂のトリガー」の章で扱います。

ガイドラインに盛り込む項目(条文構成のひな型)

ガイドラインの条文は「目的・範囲」「何を使うか」「何を入れないか」「出てきたものをどう扱うか」「運用と違反時の扱い」の5つのまとまりで構成すると、抜け漏れが起きにくくなります。各項目では、抽象的な注意だけで終わらせず、具体例を必ず添えます。

ガイドライン条文の構成
ガイドライン条文の構成
章 主な条項 書き方のポイント
1. 総則 目的、適用範囲・対象者、用語の定義 正社員だけでなく、派遣社員・業務委託先を含むかどうかを明記します。
2. 利用できるツール 許可ツールの一覧、申請手続き、アカウント管理 会社契約の環境に限定し、個人アカウントでの業務利用は禁止か申請制にします。
3. 対象業務 使ってよい業務、禁止する業務 「草案作成まではOK、最終版としてそのまま使うのはNG」のように境界を示します。
4. 入力のルール 入力禁止情報、匿名化の方法 情報区分を情報セキュリティ規程の区分名とそろえます。
5. 生成物のルール 事実確認、権利確認、表示、承認 社外に出す場合の承認者を役職名で決めます。
6. セキュリティ 通信の暗号化、データ保存・学習利用の設定、ログ ツール選定の条件として書き、ISMSの管理策と対応づけます。
7. 運用 相談窓口、トラブル時の対応、違反時の扱い、改訂 窓口の連絡先と、報告の期限の目安を書きます。

使ってよい業務と禁止業務は、表にしておくと現場が判断に迷いません。

区分 具体例 条件
使ってよい業務 メールや文書の下書き、議事メモの要約、アイデア出し、公開情報の翻訳、社内向けコードの補助 入力ルールを守り、出力は本人が確認します。
条件付きの業務 社外向け資料・広告文・Webコンテンツの作成、画像の生成 事実確認と権利確認を行い、上長の承認を得ます。
禁止する業務 人事評価・採否の最終判断、法的判断の確定、医療・安全に関わる判断の自動化 AIの出力を判断材料の一つにとどめ、決定は人が行います。

過度に禁止を増やすと、業務の効率が下がるうえに、隠れて使う人が増えます。禁止は「重大な損害につながるもの」に絞り、それ以外は条件付きで許可するのが現実的です。

入力禁止情報の具体例と判断基準

入力禁止情報は「個人情報」「顧客・取引先の情報」「社内の機密情報」「認証情報」の4種類を中心に定めます。一般的な方針は「機密性の高い情報は原則として入力禁止」とし、公開情報は入力可とする形です。

情報の区分 具体例 扱い
個人情報 氏名、住所、電話番号、メールアドレス、社員番号、顔写真、音声 原則入力禁止です。特定の個人を識別できないよう匿名化した場合のみ、許可ツールで入力できます。
顧客・取引先の情報 顧客の企業名と取引条件、見積額、契約書、問い合わせ内容 入力禁止です。
社内の機密情報 未発表の製品・決算情報、技術資料、ソースコード、人事情報 入力禁止です。社内に閉じた環境で許可されたものに限り、例外を設けます。
認証情報 ID、パスワード、APIキー、アクセストークン 例外なく入力禁止です。
公開情報 自社Webサイトの公開内容、プレスリリース、公開された統計 入力できます。

区分だけでなく、「プロンプトの中に、特定の顧客を推測できる固有名詞や、社内文書の構成がわかる表現を含めない」といった判断基準も書き添えます。こうすることで、区分表に載っていないケースでも現場が判断できるようになります。

AIツールへの入力可否チェックフロー
AIツールへの入力可否チェックフロー

生成物の確認・承認フローと責任の所在

生成物の責任はAIではなく、使った人と組織が負うことを明記します。そのうえで、用途に応じて「本人確認だけでよいもの」と「上長承認が必要なもの」を分けます。社外に出るものほど確認の段階を増やすのが基本です。

社外公開コンテンツの確認フロー
社外公開コンテンツの確認フロー
用途 確認する人と内容 承認
個人の作業補助(下書き・要約) 利用者本人が、元の資料と照らし合わせます。 不要です。
社内共有する資料 利用者本人が、数値や固有名詞を一次情報で確認します。 部門のルールに従います。
社外向け文書・Web・広告 本人の事実確認に加え、類似作品の有無と差別的表現の有無を確認します。 上長または広報・法務の承認が必要です。
画像・音声・人物表現 第三者の権利、肖像・声の利用許諾、AI生成である旨の表示を確認します。 広報・法務の承認が必要です。

事実確認のルールは、次のように行動で書くと守られやすくなります。

  • 数値・日付・固有名詞・法令名は、必ず参照元(一次情報)を開いて確認します。
  • AIが示した出典は実在するとは限らないため、URLを実際に開いて内容を確かめます。
  • 生成AIの回答を社外向けにそのまま使う場合は、その旨を明記します。
  • 確認した人の名前と日付を、承認記録やファイルのコメント欄に残します。

人物の容姿や声を扱う生成物には、個別のルールが必要です。たとえばDeepAIは、実在の人物の容姿・表情・声・振る舞いをデジタル空間で再現するバーチャルヒューマン/AIアバターのソリューションです。リップシンク、表情生成、音声合成、対話AIを組み合わせ、接客・研修・面接練習・広報などに使われます。こうした技術を使う場合は、「本人の同意を得た範囲の用途に限ること」「AIで生成した表現であることを示すこと」「同意の撤回にどう対応するか」をガイドラインに書いておくと、肖像や声に関するトラブルを防ぎやすくなります。研修用途で受講者の表情・感情・緊張度を発話タイムラインに沿って解析・可視化する機能を使う場合も、受講者への事前説明と、解析データの保存期間をルール化しておきます。

経営層の合意形成と既存規程(ISMS・就業規則)との整合

経営層の承認で大切なのは、「リスクはゼロにならない」ことを前提に、どこまでのリスクを受け入れるかを選んでもらうことです。既存規程との整合では、新しい規程を一から作るのではなく、既存の情報セキュリティ規程や就業規則を参照する形にすると、矛盾や二重管理を防げます。

経営層には「3つの選択肢」で判断を求める

メリットだけを説明すると、事故が起きたときに「聞いていない」となりがちです。逆にリスクだけを並べると「全面禁止」に傾きます。次のように選択肢と、選ばなかった場合の影響をセットで示すと、判断を得やすくなります。

選択肢 内容 残るリスク
全面禁止 業務での利用をすべて禁止します。 個人アカウントでの隠れた利用(シャドーAI)を把握できなくなります。
限定許可 会社契約のツールと、許可した業務に限って使えます。 ルールの周知と監査の運用負荷が生じます。
原則許可 禁止事項以外は自由に使えます。 誤った使い方の判断を個人に任せることになります。

あわせて、経営層に決めてもらう事項を事前に一覧にしておくと、会議が1回で終わりやすくなります。

  • 利用を許可するツールと、その契約・予算
  • 入力してよい情報区分の上限(例:社外秘の扱いをどうするか)
  • 社外公開する生成物の承認者
  • 違反時の扱い(就業規則の既存条項を適用するかどうか)
  • ガイドラインの所管部門と、見直しの頻度

既存規程との整合は「棚卸し→用語統一→参照」の順で進める

既存規程との整合手順
既存規程との整合手順
既存の規程 確認するポイント ガイドライン側の対応
情報セキュリティ規程・情報分類基準 「極秘・社外秘・社内限り・公開」など、区分の名称と定義 入力禁止情報の区分名を、既存の区分と完全に一致させます。
ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム) 適用範囲、資産台帳、リスクアセスメント、クラウドサービスの管理策 許可する生成AIサービスを外部クラウドサービスとして台帳に登録し、リスク評価の対象にします。
個人情報保護規程・プライバシーポリシー 個人情報の利用目的と、外部への提供・委託の扱い 個人情報の入力を禁止し、例外とする条件を規程と一致させます。
就業規則・懲戒規定 情報の持ち出しや機密保持違反に関する既存条項 違反時は既存の条項を適用すると明記します。新しい懲戒事由を設ける場合は、就業規則の変更手続きが必要です。
外部委託先の管理規程・契約 委託先が生成AIを使う場合の扱い 委託先にも同等のルールを求めるかどうかを決め、契約に反映します。

就業規則を変更する場合は、労働基準法に基づき、労働者の過半数代表者(または過半数労働組合)の意見を聴き、労働基準監督署へ届け出る必要があります。そのため、ガイドラインは「行動の指針」として位置づけ、違反時の処分は既存の就業規則を参照する構成にすると、早く運用を始められます。この方針は、人事・労務部門と早めに確認しておきます。

周知・研修、相談窓口、トラブル時と違反時の対応

ガイドラインは、配布しただけでは読まれずに形骸化します。説明会や研修で「なぜこのルールが必要か」を伝え、日常の中ですぐに確認できる場所に置き、迷ったときの相談窓口を用意して、初めて機能します。

  • 研修:誤情報や著作権侵害の起こり方を、身近な業務の例で示します。禁止事項だけでなく「こう使えば安全」という活用例をセットで伝えます。
  • 利用開始の条件:研修の受講をアカウント発行の条件にすると、全員が一度はルールに目を通すことになります。
  • 掲示:社内ポータルや、生成AIツールの起動画面の近くにリンクを置きます。Q&A形式やチェックリスト形式の要約版も用意します。
  • 相談窓口:所管部門の連絡先を明記します。寄せられた質問は、FAQとして追記していきます。
誤出力・トラブル時の初動フロー
誤出力・トラブル時の初動フロー
場面 最初にやること 担当
機密情報を誤って入力した 入力を止め、ツール名・日時・入力内容を窓口へすぐ報告します。履歴の削除や、学習利用の設定を確認します。 利用者、情報システム部門
誤った生成物を社外に出した 公開を停止し、訂正版を出すか、関係先へ連絡するかを判断します。 利用者、上長、広報
権利侵害の指摘を受けた 該当物の公開を停止し、生成時のプロンプトと確認記録を保全します。 法務
ルール違反が判明した 事実を確認し、就業規則の既存条項に沿って対応します。 所管部門、人事

違反時の対応は、厳罰で抑え込むことよりも、早く報告してもらうことを重視します。自分から報告した場合の扱いを明記しておくと、事故が隠されにくくなります。

見直しサイクルと改訂のトリガー

生成AIは機能や利用規約の変化が速いため、半年〜1年ごとの定期レビューに加えて、「何が起きたら臨時で改訂するか」を決めておきます。トリガーを事前に決めておかないと、改訂が担当者の気づき頼みになり、ルールが実態から離れていきます。

改訂のトリガー 確認すること 改訂する箇所
許可ツールの新機能(外部連携、ファイル読み込み、自動実行など) 入力される情報の範囲や、外部への送信先が変わるかどうか 許可ツールと機能の一覧、入力のルール
サービスの利用規約・データ取扱いの変更 学習利用、保存期間、データの保管地域 ツールの選定条件、設定手順
法令・政府ガイドラインの改定 個人情報・著作権・AI関連の制度変更 総則、生成物のルール
社内のトラブル・ヒヤリハット どの条項があいまいだったか 該当条項と具体例
相談窓口への同じ質問の増加 現場が判断に迷っている境界 業務別の可否表、FAQ
新しい部門・業務への展開 対象業務と、扱う情報の機密度 適用範囲、対象業務
改訂サイクル
改訂サイクル

改訂するたびに、改訂日・改訂箇所・理由を改訂履歴に残し、変更点だけをまとめた短い告知を出します。全文を配り直すより読まれやすく、何が変わったかが伝わりやすくなります。

参考にできるひな型と、政府・自治体・企業の事例

一から書くよりも、公的なひな型や公開事例をもとに、自社の業務と規程に合わせて修正するほうが早く、抜け漏れも減ります。ここでは、参照されることの多い資料と事例の要点を整理します。

ひな型・ガイドブック

  • 一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)「生成AIの利用ガイドライン」:企業が自社向けに編集して使えるひな型として公開されています。
  • デジタル庁「テキスト生成AI利活用におけるリスクへの対策ガイドブック(α版)」:テキスト生成AIのリスクと対策をまとめた資料です(リコー「中小企業応援サイト」の紹介による:https://www.ricoh.co.jp/magazines/smb/column/007289/)。

政府の事例

デジタル庁は2025年5月に「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」を示しました。行政機関が生成AIを調達・利活用する際のガバナンス体制、リスク管理、調達時に確認すべき事項などを整理しています。民間企業でも、「ツールを選ぶときに何を確認するか」を決める参考になります(デジタル庁:https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/44df7733-3df2-4e47-bf0b-85c0353c20c7/15f8d042/20250527_meeting_executive_guideline_draft_05.pdf)。

行政の生成AI調達・利活用ガイドライン(出典:デジタル庁)
行政の生成AI調達・利活用ガイドライン(出典:デジタル庁)

「AI事業者ガイドライン」は、AIの開発者・提供者・利用者という立場ごとに取り組みを整理し、リスクの大きさに応じて対策の強さを変える「リスクベース」の考え方をとっています。生成AIを使う企業は「利用者」にあたるため、自社ガイドラインの基本方針を書く際の拠り所になります(内閣府「AI事業者ガイドライン案(第1.0版)概要」:https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_senryaku/8kai/siryo2.pdf)。

AI事業者ガイドライン案(第1.0版)概要(出典:内閣府)
AI事業者ガイドライン案(第1.0版)概要(出典:内閣府)

自治体の事例:東京都「文章生成AI利活用ガイドライン」

東京都デジタルサービス局は、職員がリスクに対処しながら文章生成AIを活用し、行政サービスの質を高めることを目的に、職員向けの「文章生成AI利活用ガイドライン」を策定しています。前提は、安全性が確保された庁内の共通基盤で文章生成AIを使うことです。私物のアカウントや外部の無料サービスではなく、組織が管理する環境に利用を限定しています。そのうえで、職員が守るルールとして次の4点を定めています(リコー「中小企業応援サイト」の紹介による:https://www.ricoh.co.jp/magazines/smb/column/007289/)。

  1. 個人情報など、機密性の高い情報は入力しません。
  2. 著作権保護の観点から、既存の著作物に似た文章の生成につながる指示を入力しません。回答を配信・公開する場合は、既存の著作物に似ていないかを入念に確認します。
  3. 文章生成AIが生成した回答の根拠や裏付けを、必ず自ら確認します。
  4. 文章生成AIの回答を対外的にそのまま使う場合は、その旨を明記します。

東京都のガイドラインは、ルールだけでなく、アイデア出し・文章作成・ローコード作成などの使い方をプロンプト例つきで紹介しています。さらに、職員から募ったプロンプトを集めた活用事例集も公表しています。「守るルール」と「使い方の例」を同じ資料で示している点が、企業の担当者にとって最も参考になる部分です。利用環境の仕組みや利用申請・研修の条件など、最新の運用は東京都デジタルサービス局の公開資料で確認してください。

東京都の工夫 企業ガイドラインへの応用 反映する章
組織が管理する共通基盤に利用を限定 会社契約の環境だけを許可ツールにします。 利用できるツール
ルールを4項目に絞る 全員が覚えられる「最重要ルール」を冒頭に置きます。 総則
プロンプト例と事例集の公開 部門別の活用例を添付し、現場の要望で追加していきます。 対象業務、FAQ

教育機関・企業の事例

教育分野では、文部科学省が学校向けの生成AIのガイドラインを示しています。大学でも、学生向けに生成AIの利用時の注意点を公開する例があります。立命館大学の学び支援サイトでは、生成系AIの利用にあたっての考え方と注意点を学生向けに示しています(立命館大学:https://www.ritsumei.ac.jp/pathways-future/course/ai_guideline.html)。

生成系AI(人工知能)の利用にあたって(出典:立命館大学 学び支援サイト)
生成系AI(人工知能)の利用にあたって(出典:立命館大学 学び支援サイト)
企業 公開されている取り組み 参考になる点
富士通グループ 2024年に従業員向けの生成AI利活用ガイドラインを策定し、一般にも公開しています。リスクを「正確性」「公平性」「著作権侵害」「情報管理」「悪用」の5つの観点で解説し、NG事例と対処法を示しています。 リスクの観点ごとにNG事例を並べる構成
サイバーエージェント 2023年4月に生成AI利用ガイドラインを策定しました。6,200名を超える社員を対象にしたリスキリングや社内コンテスト、専門組織の設置で活用を進めています。 ガイドラインと人材育成をセットにする進め方
Adobe 自社の生成AI機能の利用者向けにガイドラインを公開し、差別的表現や他者に損害を与える目的での利用を禁止しています。 禁止する用途の書き方
NTTグループ AIリスクを共通的に定義・管理するためのAIガバナンス規程類を制定しています。 グループ全体で規程体系をそろえる方法

富士通とサイバーエージェントの内容は、リコー「中小企業応援サイト」の紹介(https://www.ricoh.co.jp/magazines/smb/column/007289/)に基づいています。各社の最新の内容は、それぞれの公式発表で確認してください。

まとめ

生成AIガイドラインは、リスクを抑えながら社員が迷わず生成AIを使えるようにするための社内ルールです。作り方のポイントは次のとおりです。

  • 匿名アンケート、部門長ヒアリング、利用ログの確認で、シャドーAIを含む利用実態を把握します。
  • 許可ツール、使ってよい業務と禁止業務、入力禁止情報(個人情報・顧客情報・機密情報・ID等)を、具体例つきで定めます。
  • 生成物は利用者と組織が責任を負うことを明記し、社外に出るものほど確認と承認の段階を増やします。
  • 経営層には、3つの選択肢とそれぞれに残るリスクを示し、リスク許容度について合意を得ます。
  • 情報区分名を既存規程とそろえ、ISMSの台帳に登録し、違反時は就業規則の既存条項を参照します。
  • 研修、相談窓口、トラブル時の初動フローで定着させ、改訂のトリガーを決めて継続的に見直します。

JDLAのひな型やデジタル庁・AI事業者ガイドライン、東京都の事例を土台にして、自社の業務と規程に合わせて調整すると、実際に守られるガイドラインを短い期間で作れます。

参考文献

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