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AI問診(問診AI)とは?Web問診との違い・メリット/デメリットをわかりやすく解説【2026年版】

AI問診(問診AI)とは、AIが患者の症状や経緯を対話形式で聞き取り、診察の前に要点を整理して医師に届ける仕組みです。紙の問診票と違い、患者の回答に応じて次の質問を変えられるのが特徴で、診断の最終的な判断は医師が行います。

この記事の読み方:病院から案内された患者の方は「患者として受ける場合」へ、導入を検討する医療機関の担当者は「導入前チェック」と「主なサービスと導入事例」へ進めます。最初の「AI問診とは何か」は、どちらの方にも共通の入口です。

AI問診のイメージ:スマートフォンの画面で、AIが患者の症状を質問形式で聞き取る

「AI問診って、普通の問診票と何が違うの?」「病院から案内されたけれど、何を準備すればいい?」——この記事は、そうした疑問を持つ患者の方と、導入を検討する医療機関の担当者の両方に向けて書いています。AI問診の仕組み、紙の問診票・Web問診との違い、メリットと注意点、患者として受けるときの流れ、医療機関としての向き不向きと選び方を、厚生労働省の委託事業資料・病院の公開案内・サービス提供元の公式ページなど、確認できる資料だけをもとに解説します(2026年11月2日時点)。

目次

AI問診とは何か

AI問診とは、人工知能(AI)が患者の症状・経緯・生活背景を質問形式で聞き取り、医師が診察を始める前に、要点を整理した形で届ける仕組みです。紙の問診票が「あらかじめ決めた質問を全員に同じ順番で聞く」のに対し、AI問診は患者の答えに応じて次の質問を選び直すため、関係のない質問が減り、必要な情報を深く聞き取れます。

実際に使われているサービスの例として、Ubie株式会社の「ユビーAI問診」があります。公式の製品ページでは、患者ごとに最適な質問を自動生成し、回答をもとにカルテの下書きを即時に生成すると説明されています(ユビーAI問診 製品ページ、2026年11月2日確認)。患者向けの説明ページでは「医師を目の前にすると話しづらいこともタブレットで入力できる」「分からない・覚えていない質問はスキップできる」と案内されています(ユビーAI問診とは)。

病院の講演資料に見る、AI問診の実際

厚生労働省の委託事業「医療機関の勤務環境マネジメント改革支援推進事業」の研修資料(長野中央病院 副院長 小島英吾氏「AI問診導入の経験」、2020年11月、資料PDF)では、同院のAI問診を次のように説明しています。患者が最初に症状を入力すると、程度や頻度、発症時期に関する質問が次々と表示され、約20問に答えると問診が完了します。結果はAIが医療用語の文章に変換して電子カルテに出力し、同時にAIが鑑別した10疾患が表示されます。

つまりAI問診の中身は、「患者の言葉で聞き取る」「医療用語に整える」「参考になる病名や緊急度を添えて医師に渡す」の3段階です。診断そのものはAIではなく医師が行います。

なぜ医療現場で広がっているのか

背景にあるのは、医療従事者の長時間労働と、外来の待ち時間です。前述の長野中央病院の資料では、導入前は受付から問診までに20〜30分、問診の終了から診察の開始までにさらに約30分、合計で約1時間の待ち時間があり、紹介状のない内科初診の患者(1日約30人)の問診に専任の看護師を1人配置していました。同院がAI問診に期待したのは「患者の待ち時間の短縮」と「看護師の労働の削減」の2点です。待ち時間を減らし、看護師・医師が診察に集中できる体制をつくることが、AI問診が広がる動機になっています。医療現場の課題全体と各施設の取り組みは医療DXとは?課題と取り組み事例で解説しています。

医療現場が抱える課題や各施設の取り組みは、医療DXとは?課題と取り組み事例で解説しています。

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患者として受ける場合:AI問診の流れと知っておきたいこと

病院やクリニックから「AI問診にご協力ください」と案内されたときの一般的な流れです。ここでは、国立病院機構 甲府病院の公開ページ「AI問診システムのご案内」(同ページ、2026年10月13日確認)を例にします。細かい手順は医療機関やサービスによって異なります。

AI問診で聞かれること

質問の項目や数は、来院の目的や症状によって変わります。Ubieの患者向け説明ページ(ユビーAI問診とは、2026年11月2日確認)では、聞かれる内容として「基本情報」「来院目的や症状」「症状の詳細」「これまでの病歴や生活習慣」「AIによる詳細な追加質問」が挙げられ、分からない項目はスキップできると案内されています。こうのす共生病院の案内では、来院前に自宅などで答える事前Web問診の質問は20問前後で、AIが回答を分析して追加の質問が出ることがあります(同院の公開ページ、2026年11月2日確認)。

受けるときの流れ(5ステップ)

  1. 案内を開く:病院のホームページのリンク、または受付で案内されるQRコードから問診の画面を開きます。スマートフォンを持っていない場合は、来院時に院内で行える病院もあります。
  2. 基本的な情報を入れる:年齢や性別、いちばん困っている症状を入力します。
  3. 質問に答える:答えに応じて次の質問が変わります。「いつから」「どのあたりが」「どんなときにつらいか」などが続き、所要時間は約5〜15分です。分からない質問はスキップできるサービスもあります。
  4. 送信して受付番号を控える:送信後に受付番号が表示される仕組みでは、番号をメモするかスクリーンショットで保存します。甲府病院では、番号を控え忘れると問診のやり直しになると案内しています。
  5. 来院して受付で番号を伝える:受付で番号を伝えると、医師が問診のまとめを見たうえで診察します。聞かれなかったことや、うまく答えられなかったことは、診察で直接伝えてかまいません。
国立病院機構 甲府病院の公開ページ「AI問診システムのご案内」より:問診を送信したあとに受付番号(PH+数字)が表示される画面の例
問診を送信したあとに受付番号が表示される画面の例(出典:国立病院機構 甲府病院「AI問診システムのご案内」、2026年10月13日取得)

問診で伝えておくとよいこと

AI問診は答えに応じて質問が変わりますが、次の点は自分から思い出して入力しておくと、診察で聞き直される手間が減ります。これは医療機関の案内に共通して見られる一般的な整理で、実際に聞かれる項目は医療機関とサービスによって異なります。

  • 症状の始まりと経過:いつから、きっかけはあったか、良くなっているか悪くなっているか。
  • 症状が出る条件:動いたとき、食後、夜間など、つらくなる場面。
  • 今飲んでいる薬:処方薬・市販薬・サプリメント。お薬手帳があれば来院時に持参します。
  • 持病・過去の病気・アレルギー:薬や食べ物でアレルギーが出たことがあれば入力します。
  • うまく答えられなかった点:分からない質問は無理に埋めず、診察で直接伝えます。

受けるときに知っておきたいこと

  • AI問診は診察の予約ではない:甲府病院・赤羽東口病院とも「AI問診は診察の予約ではない」と明記しています(赤羽東口病院の案内)。受診の申し込みは別に必要です。
  • 来院の直前に行う:甲府病院では、来院の数時間前〜直前に行うよう案内し、時間が経ちすぎた場合は再回答を求めることがあるとしています。
  • AI問診は診断ではない:症状を聞き取って整理するためのもので、病名を決めるのは医師です。
  • わからない質問は、わかる範囲で答えればよい:あいまいな点は、診察のときに補足できます。
  • 操作が難しいときは受付に相談する:多くの医療機関は、紙の問診票やスタッフによる聞き取りも用意しています。
  • つらい症状・急な症状のときは問診を優先しない:強い胸の痛み、息苦しさ、意識がぼんやりする、といった場合は、問診の入力を続けずに、すぐ医療機関へ電話するか救急に相談してください。
  • 入力した内容は健康に関する個人情報:取り扱いは、医療機関やサービスの個人情報の方針で確認できます。

次に読む:AI医師とは何か?人間の医師は必要?

AI医師とは何か——現時点でAIにできることと人間の医師が必要な理由

問診票・Web問診・AI問診の違い

3つの形式は「誰が質問を決めるか」と「答えに応じて質問が変わるか」で分かれます。

紙の問診票

  • 質問を決める人:医療機関が事前に固定
  • 答えに応じた変化:なし(全員同じ)
  • 結果の形:医師が紙を目視
  • 患者の手間:多い(関係のない質問にも答える)

Web問診

  • 質問を決める人:医療機関が事前に固定
  • 答えに応じた変化:設定した条件分岐の範囲だけ
  • 結果の形:電子カルテに転記・連携
  • 患者の手間:中程度

AI問診

  • 質問を決める人:AIが患者ごとに選ぶ
  • 答えに応じた変化:答えに応じて次の質問が変わる
  • 結果の形:医療用語に整えたまとめ・参考病名・緊急度を医師に提示
  • 患者の手間:少ない(関係する質問だけ)

Web問診は「紙の問診票をスマートフォンの画面に置き換えた」もので、質問の内容は医療機関が事前に決めた固定のものです(条件分岐を設定できる製品もありますが、設計した範囲を超えません)。AI問診は患者の答えをもとに次の質問を選ぶため、問診の深さが患者ごとに変わります。

AI問診とWeb問診、どちらが向くか

両者は対立するものではなく、組み合わせて使う病院もあります。埼玉県のこうのす共生病院は、自宅や外出先で入力する「事前Web問診」と、来院後に総合受付で行う「AI問診」の両方を導入し、タブレットやスマートフォンの操作が苦手な方は職員が手伝うと案内しています(同院の公開ページ、2026年10月13日確認)。目安としては、問診の内容が定型で、記入の手間だけを減らしたいならWeb問診、症状の聞き取りそのものを深くして診察前の情報を増やしたいならAI問診が向きます。医療機関としての向き不向きは、後述の「導入前チェック」で整理しています。

AI問診の仕組み——入力から医師への提示まで

AI問診がどのように動くかを、処理の流れで整理します。

①患者が症状を入力
(スマホ・タブレット)
→
②AIが答えを解析
(自然言語処理)
→
③次の質問を選ぶ
(分岐・深掘り)
→
④まとめを生成
(医療用語への変換・参考病名)
→
⑤医師へ提示
(電子カルテへ出力)

患者の言葉を医療用語に整える

患者が「お腹がなんとなく重い」と入力したとき、AI問診はそれを「部位・性状・続いている期間・悪化する条件・ともなう症状」といった医療の切り口に分けて聞き直し、最後に医師が読む形の文章に整えます。前述の長野中央病院の資料でも「結果はAIにより医療用語の文章に変換され、電子カルテに出力される」と説明されています。ユビーAI問診の製品ページでも、カルテの下書きが即時に生成され、転記作業が不要になるとされています。

参考病名と緊急度の提示——診断ではなく「診察の出発点」

聞き取った内容をもとに、関連する可能性のある病名を参考として並べたり、緊急性の高い症状にしるしを付けたりする機能を持つシステムがあります(長野中央病院の資料では「AIが鑑別した10疾患が表示される」)。これらは医師が診察を始めるための参考情報で、病名を決めるのは医師です。医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めており(e-Gov法令検索)、AI問診が診断を代わりに行うことはありません。

AI問診の主なメリット(医療機関側・患者側)

医療機関側のメリット

  • 問診と待ち時間の短縮:長野中央病院の資料では、看護師が約10分かけていた問診がAI問診では約6分になり、受付から問診までの待ち時間(20〜30分)がなくなったと報告されています。
  • 看護師の配置の見直し:同資料では、初診の問診を担当する看護師の配置を3人から2人に減らせた一方、患者の入力を手伝う事務職員を1人増やす必要があったとしています。
  • 問診の質のばらつきが減る:同資料の医師・看護師の感想として「看護師によって問診の質が違ったが、最低限の事項が全患者で記載されている」「追加の問診が減り、1患者あたり1分ほど診察時間が短くなった」が挙げられています。
  • 転記作業が不要になる:電子カルテと連携できる製品では、問診の結果がそのままカルテの下書きになります(ユビーAI問診の製品ページ)。

患者側のメリット

  • 言い忘れ・伝え漏れが減る:Ubieの患者向け説明ページは、診察前に質問に答えておくことで言い忘れや伝え漏れが減り、医師を前にすると話しづらいことも入力しやすいと案内しています。
  • 自宅で落ち着いて入力できる:来院前にスマートフォンで済ませられる医療機関では、待合室で紙に記入する時間がなくなります。甲府病院の案内では所要時間は約5〜15分です。
  • 関係のない質問に答えなくてよい:答えに応じて質問が選ばれるため、固定の問診票より質問が絞られます。

AI問診のデメリット・注意点

AI問診の主なデメリットは、診断そのものはできず問診の補助にとどまること、デジタル操作に不慣れな患者が入力につまずきやすいこと、導入・電子カルテ連携にコストと手間がかかることの3点です。導入前にこの限界を理解しておくことが重要です。

診断の代替にはならない

AI問診が出す参考病名や緊急度は補助情報です。診断・治療の判断は医師が行い、前述のとおり医師法第17条の枠組みでも、診断を含む医業は医師にしかできません。長野中央病院の資料でも、AI問診のすぐそばに看護師がいて、胸の痛みなど見逃してはいけないサイン(red sign)のある患者や、一見して体調の悪そうな患者は看護師が直接対応する体制にしたと説明されています。AIに任せきりにせず、人が見守る設計が前提です。

入力できない患者への備えが要る

同資料では、受診者の80%がAI問診を使い、そのほとんどは自分で入力できた一方、高齢の方は家族が入力する場合があり、患者の入力を手伝う事務職員も必要だったとしています。導入前の懸念として「高齢の方や体調の悪い方がタブレットを操作できるのか」「『冷たい』といった苦情が増えないか」も挙げられていました。紙の問診票やスタッフの聞き取りを残し、操作が難しい人を取り残さない運用が必要です。

個人情報の取り扱い

問診の内容は健康に関する個人情報です。医療機関は厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(第7.0版、令和8年6月、厚生労働省のページ)に沿って管理する必要があり、クラウド型の製品を使う場合はデータの保存場所・アクセス制御・暗号化の仕様を導入前に確認します。

コストと連携の手間

初期費用や月額利用料に加え、電子カルテとの連携設定、院内の端末やWi-Fiの整備、スタッフへの説明が必要です。連携できない環境では、問診結果をカルテへ転記する手間が残ります。長野中央病院の資料でも導入前の懸念として「コストがかかるのではないか」が挙げられており、費用対効果は外来の患者数と、問診にかかっている人手・待ち時間から見積もります。

導入前チェック:自院にAI問診は向くか(目的・診療科・規模で判断する)

AI問診は「入れれば効率化する」ものではなく、解きたい課題と運用環境が噛み合ったときだけ効果が出るツールです。以下は、検討中の医療機関が「今、自院に導入すべきか」を切り分けるための判断材料です。

効果が出やすい医療機関

  • 外来数が多く、問診票の記入・一次トリアージが待合のボトルネックになっている(内科・小児科・救急など)
  • 電子カルテ運用が定着し、問診データをそのまま診療記録やオーダーに流し込みたい施設
  • 高齢者・外国人など紙問診票の記入負担が大きい患者層が多く、対話入力や多言語対応の恩恵が大きい施設

時期尚早・別手段が無難なケース

  • 外来数が少なく、スタッフが問診記入の代行に困っていない小規模クリニック(費用対効果が出にくい)
  • 電子カルテ未導入や外部連携APIが使えない環境。連携できないと二重入力が生じ、かえって負担増になりやすい
  • 丁寧な対話そのものが価値の診療(美容・一部の心療内科など)で、定型化が受診体験を損なうおそれがある場合

目的別・判断早見

最優先で解きたい課題 向くAI問診の型 導入前に確認する点
待ち時間短縮・記入代行 Web/タブレット選択式問診 電子カルテへの連携可否(未連携だと二重入力)
緊急度・重症度の一次判断 トリアージ/病名候補提示型 提示はあくまで参考で、医師確認を前提に運用できるか
受診体験の向上・記入が難しい患者への対応 対話型(バーチャルヒューマン・多言語) 対話入力が対象患者層のUX改善に実際つながるか
継続的な健康管理・再来促進 PHR連携型 院外データ取得の同意設計・運用体制

AI問診の「型」での使い分け(1行の目安)

  • Web選択式問診型:来院前のスマホや院内タブレットで選択式入力。記入代行と時短が主目的(例:患者向け症状チェック系のAI問診ユビー等)。
  • 対話型(バーチャルヒューマン)型:自然な会話で聞き取り、記入が難しい患者の負担軽減と受診体験を重視(対話設計は特許JP7676075B1に代表される領域)。
  • トリアージ/診断支援特化型:重症度や病名候補を提示して医師の意思決定を補助(診断の代替ではなく、あくまで参考情報)。
最優先で解きたい課題は?(目的軸) 待ち時間の短縮記入の代行 Web/タブレット選択式問診型 記入が難しい患者への対応・受診体験(入力主体軸) 対話型(バーチャルヒューマン) 緊急度・参考病名の一次判断 トリアージ/診断支援特化型 どの型でも最後に確認(連携深度軸):電子カルテ・PHRと連携できるか——連携できないと二重入力で負担が増える 診断の提示はどの型でも参考情報。病名を決めるのは医師
AI問診の「型」を選ぶ分岐の図(本文の3つの軸をそのまま図にしたもの)

迷ったら、この3つの軸で分岐する

  1. 目的軸:時短か/受診体験か/トリアージか。何を最優先に解くかで選ぶ型が変わります。
  2. 入力主体軸:患者が自力で入力できるか、対話・多言語などの代替入力が要るか。
  3. 連携深度軸:電子カルテ・PHRとどこまで繋ぐか。繋がないと二重入力で逆効果になり得ます。

AI問診の選び方——医療機関が確認すべきポイント

確認する項目 見る点 問い合わせで聞くこと
電子カルテ連携 自院のカルテと連携できるか。できないと転記が残る 連携方式と、連携にかかる費用・期間
端末・多言語 患者のスマホで来院前に回答できるか。院内タブレットだけか 対応端末、対応言語
セキュリティ・法令 厚生労働省ガイドライン対応、第三者認証 認証の取得状況、データの保存場所
患者サポート 操作に困る患者への補助の流れ 導入後の担当・支援の範囲
料金 公式に金額が無いことが多い 初期費用・月額・端末代・連携費用を分けた見積もり

電子カルテとの連携可否

既存の電子カルテと連携できるかどうかは、運用の効率に直結します。連携できないと、AI問診の結果を手作業でカルテに転記することになり、効率化の効果が半減します。ユビーAI問診の製品ページは「すべての電子カルテとの連携が可能」としていますが、自院のカルテで実際にどのように連携するか(ボタン操作・下書きの形式)は個別に確認します。

対応デバイス・多言語サポート

患者のスマートフォンで来院前に回答できるか、院内のタブレットだけか、また外国語に対応しているかは、患者層によって重要度が変わります。在留外国人が多い地域や、インバウンド対応が必要な医療機関では多言語サポートが優先度の高い要件になります。

セキュリティ・法令準拠

厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(第7.0版、令和8年6月)への準拠と、医療情報を扱うクラウドの第三者認証(ISMS、ISO 27001等)の取得状況を確認します。健康情報は最も機微性の高い個人情報の一つであり、慎重な事業者選定が求められます。

サービス提供元の公式な記載(ユビーAI問診の例)

ユビーAI問診の製品ページ(公式、2026年11月2日確認)には、サポートについて「導入後も病院専属の担当がついて細やかに支援します」、セキュリティについて「3省2ガイドラインに準拠したクラウドサーバー利用、ISMS認証を取得しています」と記載されています。導入の流れ・導入までの期間・対応デバイス・多言語対応は、このページには記載がありません。比較の際は、記載のない項目を問い合わせの質問リストに入れておきます。

患者サポート体制

高齢者や障がいを持つ患者が操作に困ったときのサポート設計(スタッフによる補助の流れ・音声入力・文字サイズの調整など)が整っているかを確認します。長野中央病院の例では、看護師のすぐそばで入力してもらい、事務職員が手伝う配置にしていました。デジタルデバイドへの配慮なしに導入すると、特定の患者層が取り残されるおそれがあります。

料金の確認

AI問診の料金は、主要サービスの公式ページには金額が掲載されていません(ユビーAI問診の製品ページは問い合わせ制、2026年10月19日確認)。「今日の問診票」(株式会社プレシジョン)の公式ページは料金体系を「基本料金+初期導入費用+iPad等機器代+オプション費用」の構成で示しており、基本料金は利用に必要な料金、初期導入費用はパソコンの設定や導入支援など初回導入にかかる費用、オプション費用は問診票のカスタマイズを希望する場合にかかることがある費用と説明されています(今日の問診票 料金体系、同日確認。金額の掲載なし)。他社の記事に出てくる「月額◯円」といった相場は時期やプランで変わるため、自院の条件で見積もりを取って確認してください。見積もりでは、初期費用・月額利用料・端末代・電子カルテ連携にかかる費用を分けて出してもらい、長野中央病院の例のように「問診に充てている看護師の時間」と「患者の待ち時間」がどれだけ減るかと比べて判断します。

AI問診を導入するまでの進め方(医療機関向け)

公式ページに導入の流れが書かれていないサービスもあるため、ここでは検討の順序の考え方を整理します。サービスごとの正式な手順や期間は、問い合わせて確認してください。

1課題を数字にする問診時間・待ち時間・転記2対象を決める診療科・代替手段3要件を書き出す連携・端末・言語・安全4デモと見積もり2〜3社を比べる5運用ルールを決める赤信号の症状・入力の手伝い6小さく始めて見直す導入前の数字と比べる
導入検討の順序(一般的な整理。サービスごとの正式な手順・期間は提供元に確認)
  1. 課題を数字にする:問診にかけている看護師・事務の時間、受付から診察までの待ち時間、転記の手間。長野中央病院の例のように、導入前の数字があると効果を比べられます。
  2. 対象を決める:全診療科か、初診の内科・小児科など一部か。入力できない患者への代替(紙・職員の聞き取り)も同時に決めます。
  3. 要件を書き出す:電子カルテとの連携、患者が使う端末、多言語、サポート体制、セキュリティ(ガイドライン対応・認証)。
  4. 2〜3社に問い合わせてデモと見積もりを取る:金額を公開していないサービスが多いため、初期費用・月額・端末代・連携費用を分けて出してもらいます。
  5. 運用ルールを決める:赤信号の症状(強い胸の痛みなど)が出た患者を看護師が直接対応する流れ、入力を手伝う担当、患者への案内文(QRコードの掲示、予約ではないことの明記)。
  6. 小さく始めて見直す:一部の診療科・時間帯で始め、待ち時間と問診時間を導入前の数字と比べて広げるかを決めます。

AI問診の主なサービスと導入事例

日本で医療機関向けに提供されているAI問診の代表例は、Ubie株式会社の「ユビーAI問診」と、株式会社プレシジョンの「今日の問診票」です。どちらも公式ページで確認できる内容だけを比べます(ユビーは2026年11月2日、プレシジョンは2026年10月19日確認)。

項目 ユビーAI問診(Ubie) 今日の問診票(プレシジョン)
公式の位置づけ 患者ごとに最適な質問を自動生成し、回答をもとにカルテの下書きを生成すると説明 症状に応じて質問が動的に変わる問診票。医学情報データベース「Current Decision Support(CDS)」を組み合わせ、問診結果から考えられる鑑別疾患を提示すると説明
導入実績の記載 導入医療機関「1,800以上」 「全国500以上の病院/医療機関で導入」「シェア70%以上の大学病院導入実績」
電子カルテ連携 「全電子カルテ連携が可能」 「全ての電子カルテと連携相談が可能」
料金 金額の掲載なし(問い合わせ制) 料金体系の構成のみ掲載(金額の掲載なし)
公式ページ 製品ページ 製品ページ

数字はいずれも各社が自社の公式ページで示している値で、第三者が検証したものではありません。選ぶときは、掲載の実績数よりも、自院の診療科・電子カルテ・患者層で運用できるかを、デモや見積もりで確かめます。

導入事例:国立病院機構 名古屋医療センター

国立病院機構 名古屋医療センターは、2021年10月から「今日の問診票」を導入しています。同院の医療情報管理部の報告(IT ヘルスケア 第17巻1号、2022年)によると、患者がiPadに表示される診療科別の質問を順にタップして答えると、症状の部分が自然言語処理されてカルテに入ります。85歳の方でも入力されているとされ、整形外科・循環器内科・総合内科で使われ、小児科・膠原病内科・入退院支援センターでは問診項目をカスタマイズ中と報告されています。既往歴・薬歴・アレルギー歴は、診療情報提供書やお薬手帳をスキャナで読み取って処理でき、医師は症状の聞き取りに専念できるという点も挙げられています。

厚生労働省委託事業の資料で紹介した長野中央病院の例と合わせると、AI問診の効果は「待ち時間・問診時間」「医師と看護師の負担」「入力が難しい患者への手当て」の3点で語られていることが分かります。製品が違っても、導入前にこの3点を自院の数字で見積もることが判断の軸になります。

プレシジョンの公式ページには、ほかにも呉羽総合病院(問診業務を効率化し、初診患者の院内滞在時間を半分以下に短縮と紹介)、沖永良部徳洲会病院、三重大学医学部附属病院などの事例が掲載されています。詳細は公式の事例紹介で確認できます。

AI問診の最新動向(2026年11月時点)

①主要サービスの普及状況

導入が進んでいるサービスの一例が「ユビーAI問診」(Ubie株式会社)です。公式の製品ページは導入医療機関数を「1,800以上」としています(ユビーAI問診 製品ページ、2026年10月13日確認)。2017年にサービス提供を始め、2021年5月の発表では全国47都道府県・400以上の医療機関でした(PR TIMES 2021年5月21日)。2022年10月には米国拠点を設立し、生活者向けの症状検索エンジン「ユビー」は20問前後の質問で症状に関連する参考病名を提示するとされています(JETRO ビジネス短信 2023年3月2日)。

②病院の公開案内に見る運用の広がり

病院が患者向けに公開している案内も増えています。赤羽東口病院(東京都北区)は2023年2月14日からAI問診の運用を始め、スマートフォン・タブレット・パソコンから事前に回答できるとしています。甲府病院は整形外科・内科・小児科で、初診の方や6か月以上受診歴のない方などを対象に来院前のAI問診を案内しています。「来院前にスマートフォンで済ませ、受付で番号を伝える」という流れが、患者側の標準的な体験になりつつあります。

③対話型(バーチャルヒューマン)とPHR連携の研究開発

文字の入力ではなく、AIアバターとの会話で問診を進める方式や、毎日の短い会話を記録して体調の変化を継続的に追う方式の研究開発も進んでいます。DeepAIの医療モジュールには、バーチャルヒューマンが患者と対話する問診、診療ガイドライン・添付文書・院内マニュアルを検索して答えるRAG知識検索、患者の記録を一元管理するPHRがあります。アバターによる対話型問診支援は特許(JP7676075B1、2025年5月登録)の対象で、国立がん研究センターとの共同研究(2025年6月、がん患者の症状モニタリング)も行われています。詳しくは医療AI・PHRシステム DeepAIをご覧ください。音声や表情から患者の状態を読み取る技術は発展途上で、診断を確定するものではなく、医師の判断を補助する参考情報という位置づけです。

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よくある質問(FAQ)

Q. AI問診とは何ですか?
患者の症状や経過をAIが質問形式で聞き取り、医師が診察前に確認できる形に整理する仕組みです。固定の問診票と異なり、答えに応じて次の質問が変わります。

Q. AI問診ではどんなことを聞かれますか?
基本情報、来院の目的や症状、症状の詳細、これまでの病歴や生活習慣、そして答えに応じたAIの追加質問が一般的です。質問の数や項目は症状によって変わり、分からない項目はスキップできるサービスがあります(ユビーAI問診の患者向け説明、2026年11月2日確認)。

Q. 医療機関がAI問診を導入するとき、何から始めればよいですか?
まず問診にかけている時間と待ち時間を数字にし、対象の診療科と、入力できない患者への代替を決めます。そのうえで電子カルテとの連携などの要件を書き出し、複数社のデモと見積もりを比べます。

Q. Web問診との違いは何ですか?
Web問診は医療機関が事前に決めた質問にスマートフォンなどで答えるもので、質問は固定です。AI問診は患者の答えに応じて次の質問を選び、医療用語に整えたまとめや参考病名を医師に提示します。

Q. AI問診は診断をしてくれますか?
いいえ。参考病名や緊急度が表示されても、診断を確定するのは医師です。医師法第17条により、診断を含む医業は医師にしかできません。

Q. 患者としてAI問診を受けるとき、何を準備すればよいですか?
特別な準備は不要です。病院の案内のリンクやQRコードから画面を開き、症状について5〜15分ほど質問に答えます。送信後に受付番号が表示される場合は控えておき、来院時に受付で伝えます。AI問診は診察の予約ではないため、受診の申し込みは別に行います。

Q. 高齢者やスマートフォンが苦手な人でも使えますか?
長野中央病院の資料(厚生労働省委託事業)では、受診者の80%がAI問診を使い、ほとんどが自分で入力できた一方、高齢の方は家族や事務職員の手助けが必要な場合があったとしています。多くの医療機関は紙の問診票やスタッフの聞き取りも残しています。

Q. AI問診の費用はいくらですか?
主要サービスの公式ページには金額の記載がなく、問い合わせ制です(2026年10月19日確認)。費用は「基本料金・初期導入費用・端末代・オプション費用」といった項目に分かれるのが一般的で、医療機関が見積もりで確認します。患者が受ける問診の費用は医療機関ごとに異なるため、案内のあった医療機関に確認してください。

まとめ

AI問診は、患者の答えに応じて質問を変えながら症状を聞き取り、医療用語に整えたまとめと参考病名を医師に届ける仕組みです。紙の問診票やWeb問診との違いは「質問を誰が決めるか」「答えに応じて質問が変わるか」にあります。

公的資料や病院の公開案内から分かる効果は、問診時間と待ち時間の短縮、問診の質のばらつきの解消、転記作業の削減です。一方で、診断はできないこと、入力できない患者への備えが要ること、電子カルテ連携とコストの検討が必要なことが注意点です。

患者として受けるときは、来院の直前に5〜15分で回答し、受付番号を控えて受付で伝えます。AI問診は診察の予約ではなく、急な症状のときは入力より先に医療機関へ連絡してください。

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監修

河合 継(クリスタルメソッド株式会社 代表取締役)

AI・ディープラーニングに関する特許16件の発明者。国立がん研究センターとの共同研究や、テレビ番組でのAI解説実績を持つAI研究者として、医療分野を含むAIの研究開発を主導している。なお本記事は医療情報の提供を目的としたものであり、診断・治療は必ず医師にご相談ください。
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