第6回「熟練工並みの異常検知・異音検知AIの世界」

[人間の模倣]

製造業に長年携わる熟練工は、機器や製品の音を聞き分けて、「この音はおかしいのではないか?」「品質に問題があるのではないか?」「材料が不足しているのではないか?」「手順が間違っているのではないか?」といった技術的課題を即座に見出します。このような熟練工並みの仕事をAIが代替するには、AIが「より人間らしく判断する」能力が必要です。

さて、そのようにAIが「より人間らしく判断する」為には、何か必要なのでしょうか。こちらの話を展開するに当たりまして、本連載の第2回でも少々扱わせて頂いた「深層学習(Deep Learning)」を改めて持ち出し、復習を兼ねた補足をさせて頂こうと思います。

人工知能研究の勢いが加速した2000年代以降、人間がひとつひとつ、手作業で膨大なルールや知識を与えなくても、既存のデータを参照して正解を導き出すタイプの、統計・確率型の人工知能が一挙に発展をしました。そのような「自律的なAI」を誕生させるに当たって、初期の段階で用いられていた手法は、「機械学習(Machine Leaning)」です。「尻尾に着目して区別しなさい」とAIに指示を与えておきますと、まだ解析していない犬の画像が登場しても、そのAIは「これはコーギー」「これはゴールデンレトリバー」だと判断をしてくれます。これが、機械学習です。

この「機械学習」を更に発展させたものが、「深層学習(Deep Learning:ディープラーニング)」です。深層学習は、先ほど人がAIに与えていた指示を、AI自身によって自律的に設定する機能が適用されています。この場合、犬の画像を確認したAIは、「尻尾」だけではなく、「形状」「色彩」「サイズ」「動き」等の判断基準を自分なりに設定するようになります。現在、高度なAI技術には、必ずこの深層学習という方法が用いられています。

深層学習を可能としているのは、「ニューラルネットワーク」という考え方です。こちらは、私たちの脳の仕組みのひとつである神経細胞(ニューロン)の繋がりと、その繋がりによって行われている情報交流の流れを模倣するものとなります。例えば人間は、目から入って来た情報を、一時視覚野と呼ばれる脳内の「見ているものを理解する場所」へ送り、神経細胞を通って、最後には下部側頭葉皮質という場所に入り、そこで何を見ているかの認識に至ります。

すなわち、「ニューラルネットワーク」は、人間が脳の中で情報が神経を伝達していく仕組みをモデル化したものとなります。AIにリンゴの画像を見せ、それをリンゴであると判断させる為に、「色」「形」「模様」等、特徴として注目するべき情報に分解させ、それが「リンゴらしいかどうかを判断させる」という流れとなります。この方法を繰り返していきますと、やがてAIは「リンゴを判断するには色が重要なようだ」と独自の設定を行うようになります。私たちが学習する(神経細胞を繋ぐシナプスを太くする)のと同じように、AIもまたそうして設定を強め、自分なりの調整を続けるのです。

このような仕組みを持つ深層学習の登場により、AIは医療用画像処理を始め、工業用検査(外観検査・欠品検査等)、自動運転やカーナビ、ロボティックス等、製造業や生活のあらゆる側面での応用が行われています。将棋や囲碁のゲームAIがプロを打ち負かすほど強くなったのも、この自律調整を行う深層学習を搭載したAIの成せる業です。気象予測、バーチャルアシスタントの高度化にも貢献をしています。弊社でも工業用検査のAIの研究を行っております。詳しくはこちらからご覧ください。

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