blog
AIブログ
カスハラとパワハラの違いとは?定義・判断基準を比較表で解説|横浜市長の事例も
文:クリスタルメソッド編集部 監修:河合 継(代表取締役)
パワハラ(パワーハラスメント)とカスハラ(カスタマーハラスメント)は、どちらも従業員の就業環境を害するハラスメントで、根拠となる法律も同じ「労働施策総合推進法」です。いちばん大きな違いは「誰からの言動か」と「何を基準に判断するか」です。この記事では、厚生労働省の資料に沿って両者の定義・違い・企業が講じるべき措置を整理し、2026年に大きく報道された横浜市長の事例もあわせて確認します。
パワハラとカスハラの違い【結論】
パワハラは職場内の優越的な関係(上司・先輩など)を背景にした言動、カスハラは顧客・取引先・施設の利用者など「顧客等」からの言動です。判断基準も、パワハラは「業務上必要かつ相当な範囲を超えているか」、カスハラは「業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えているか」で異なります。
| 項目 | パワハラ | カスハラ |
|---|---|---|
| 言動の主体 | 職場内で優越的な関係にある者(上司・先輩・集団など) | 顧客等(顧客、取引の相手方、施設の利用者など) |
| 判断の基準 | 業務上必要かつ相当な範囲を超えているか | 業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えているか |
| 該当しないもの | 業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示・指導 | 社会通念上許容される範囲で行われた苦情(正当な申入れ) |
| 根拠となる法律 | 労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法) | 改正労働施策総合推進法(第33条、令和7年改正) |
| 事業主の措置義務 | 大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から | 2026年10月1日から |

関連記事カスハラの具体例と対応方法は? / カスハラ対策の義務化で企業は何をする? / カスハラロープレ練習のやり方は?
パワハラとは:法律上の定義と3つの要素
厚生労働省は、職場におけるパワーハラスメントを、職場において行われる次の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。
- 優越的な関係を背景とした言動であって
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
- 労働者の就業環境が害されるもの
「優越的な関係」は上司から部下に限らず、業務に必要な知識や経験を持つ同僚・部下や、集団による言動も含まれます。一方で、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラには該当しません。
パワハラの代表的な6類型
- 身体的な攻撃:殴る、蹴る、物を投げつける
- 精神的な攻撃:人格を否定する言葉を大声で浴びせる
- 人間関係からの切り離し:集団で無視する、仲間外しにする
- 過大な要求:遂行不可能な業績目標を強制する
- 過小な要求:能力とかけ離れた程度の低い仕事しか与えない
- 個の侵害:機微な個人情報を本人の了解なく暴露する
カスハラとは:2026年10月から義務化された定義と3つの要素
令和7年(2025年)に改正された労働施策総合推進法で、カスハラ対策が事業主の義務になり、2026年10月1日から施行されています。職場におけるカスタマーハラスメントとは、次の3つの要素をすべて満たすものです。電話やSNS等のインターネット上で行われるものも含まれます。
- 顧客等の言動であって
- その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより
- 労働者の就業環境が害されるもの
「顧客等」には、顧客(今後購入・利用する可能性がある人を含む)、取引の相手方、駅・病院・学校・公共施設などの利用者、その家族や施設の近隣住民など、事業に関係を有する人が幅広く含まれます。
カスハラの典型例:「内容」と「手段・態様」の2軸
社会通念上許容される範囲を超えるかは、言動の内容と手段・態様の両面から総合的に判断します。どちらか一方だけが範囲を超える場合でも該当し得ます。
| 言動の内容が範囲を超えるもの | 手段・態様が範囲を超えるもの |
|---|---|
| 要求に理由がない、商品・サービスと全く関係のない要求 | 身体的な攻撃(暴行、傷害など) |
| 契約等で想定しているサービスを著しく超える要求 | 精神的な攻撃(脅迫、中傷、侮辱、暴言、土下座の強要など) |
| 対応が著しく困難な、または不可能な要求 | 威圧的な言動(大声で威圧するなど) |
| 不当な損害賠償要求 | 継続的・執拗な言動、拘束的な言動(居座り、長時間の電話など) |
なお、顧客等からの苦情のすべてがカスハラになるわけではありません。社会通念上許容される範囲で行われた苦情は正当な申入れです。また、障害のある方が障害者差別解消法にもとづいて合理的配慮を求めること自体は、カスハラには当たりません。
企業が講じるべき措置の違い
パワハラもカスハラも、事業主には「方針の明確化と周知」「相談体制の整備」「事後の迅速かつ適切な対応」「プライバシー保護と不利益取扱いの禁止」といった共通の措置が義務づけられています。そのうえで、カスハラには外部の相手に向き合うためのカスハラ固有の措置があります。
- カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する方針を明確化して周知する
- カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容(管理監督者に指示を仰ぐ、可能な限り一人で対応させない、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する など)を労働者に周知する
- 特に悪質なカスハラへの対処方針を定め、実際に対処できる体制を整える
パワハラでは行為者が自社の従業員なので、懲戒など「行為者に対する措置」が中心になります。カスハラでは行為者が社外の人なので、懲戒の代わりに、現場の従業員が一人で抱え込まずに済む対応ルールと体制を前もって決めておくことが求められます。
横浜市長の事例:何がパワハラと認定されたか
2026年1月15日、横浜市の人事部長が会見を開き、市長によるパワーハラスメントが疑われる言動について、中立的な調査と結果の公表を求めました。第三者委員会は2026年7月30日に報告書を公表し、告発された言動をパワハラと認定しました。市長は同年9月7日に辞任しています(神奈川新聞 カナロコの報道による)。
報道された言動には、怒鳴る・書類を投げつける、「ポンコツ」などの人格を否定する発言、深夜・休日の常態的な業務連絡、人事権を背景にした言動などが含まれていました。これらは前述の6類型でいえば「精神的な攻撃」などに当たり得るもので、組織のトップという優越的な関係を背景にした言動である点が、カスハラではなくパワハラとして扱われる理由です。
この事例から企業が確認しておきたいのは、次の点です。
- 相談・通報の窓口を、行為者になり得る上位者の指揮系統から独立させておく
- 経営層・トップの言動も、ハラスメント防止方針の対象であると明記する
- 疑いが生じたら、利害関係のない第三者による調査と結果の公表を検討する
カスハラとパワハラを混同すると起きる問題
「お客様を怒らせるな」と従業員に我慢を強いたり、カスハラを受けた従業員に「あなたの対応が悪い」と責任を押し付けたりする対応は、カスハラ対策として労働者を保護する方針を求める改正法の趣旨に反します。上司がこうした圧力をかけ続ければ、その上司の言動自体が社内のパワハラとして問題になる可能性もあります。
顧客等からの言動はカスハラとして、社内の上下関係にもとづく言動はパワハラとして、それぞれのルートで相談・対処できるように窓口と手順を分けて整備しておくことが、両方を見落とさないための基本です。
次に読む:カスハラの具体例と対応方法は?
判断に迷いやすいケース
取引先の担当者から威圧的な言動を受けた場合
取引の相手方は「顧客等」に含まれるため、社会通念上許容される範囲を超えていればカスハラに当たり得ます。企業間の契約交渉の担当者も「顧客等」の例に挙げられています。
自社の従業員が取引先の従業員にカスハラをした場合
他社から事実確認や再発防止への協力を求められたときは、これに応じるよう努めることとされています(労働施策総合推進法第33条第3項)。
同僚や部下からの言動の場合
同じ社内の人からの言動は、カスハラではなくパワハラの枠組みで判断します。部下や同僚であっても、業務に必要な知識・経験を背景にしていたり集団で行われたりすれば、「優越的な関係」に当たる場合があります。
同じ質問を繰り返す長時間の電話が続く場合
問い合わせ自体は正当でも、同様の質問を執拗に繰り返す、長時間の電話で労働者を拘束するといった言動は、厚生労働省がカスハラの典型例として挙げる「継続的、執拗な言動」「拘束的な言動」に当たり得ます。判断では、言動の目的、経緯、頻度・継続性などを総合的に考慮します。1回の長い問い合わせだけで直ちに該当するとは限らないため、通話時間や回数の目安と、引き継ぎ・打ち切りの手順を事前に決めておくと現場が迷いません。
自社のミスが発端のクレームが激しくなった場合
厚生労働省の資料は、事業主や労働者側の不適切な対応が言動の原因や背景になっている場合もあることに留意するよう求めています。一方で、「言動の内容」と「手段・態様」は別々に見ます。謝罪や返金を求めること自体は正当でも、暴言や土下座の強要など手段・態様が社会通念上許容される範囲を超えれば、カスハラに当たり得ます。ミスへの対応と、行き過ぎた言動への対応は分けて考えるのがポイントです。
上司の厳しい指導がパワハラか迷う場合
業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラには当たりません。ただし、人格を否定する言葉を大声で浴びせるなど、指導の目的を超えた言動は6類型の「精神的な攻撃」に当たり得ます。「何を直すべきか」を具体的に伝えているか、言い方や頻度が必要な範囲にとどまっているかが分かれ目です。
セクハラも含めた3つのハラスメントの比較
職場で事業主に防止措置が義務づけられている代表的なハラスメントとして、パワハラ・カスハラと並んでセクハラ(セクシュアルハラスメント)があります。3つを並べると、違いは「何が問題になる言動か」と「誰が行為者になり得るか」に表れます。
| 項目 | パワハラ | カスハラ | セクハラ |
|---|---|---|---|
| 問題になる言動 | 優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動 | 業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えた顧客等の言動 | 労働者の意に反する性的な言動 |
| 主な行為者 | 上司・先輩、知識や経験を持つ同僚・部下、集団 | 顧客、取引の相手方、施設の利用者など | 事業主・上司・同僚に限らず、取引先、顧客、患者やその家族なども含む |
| 主な分類 | 6類型(身体的な攻撃、精神的な攻撃など) | 「言動の内容」と「手段・態様」の2軸 | 対価型(拒否により不利益を受ける)と環境型(就業環境が害される) |
| 根拠となる法律 | 労働施策総合推進法 | 労働施策総合推進法(第33条) | 男女雇用機会均等法(第11条) |
パワハラ・カスハラ・セクハラが同時に起きたときの扱い
実際の職場では、1つの出来事が複数のハラスメントにまたがることがあります。厚生労働省も、ハラスメントは複合的に生じることも想定されるとして、あらゆるハラスメントの相談に一元的に応じられる体制を整えることが望ましいとしています。
- 顧客から性的な言動を受けた:カスハラの典型例には「性的な要求」が含まれ、セクハラの行為者には顧客も含まれます。どちらにも当たり得るため、窓口では区分にこだわらず受け付け、事実確認と被害者への配慮を進めます。
- カスハラを受けた従業員を上司が責めた:顧客の言動はカスハラとして、上司の言動はパワハラとして、それぞれ対処が必要になる可能性があります。
- 相談者がどれに当たるか分からない:相談の時点で分類を求めず、受付窓口を1つにしておくと、相談をためらわせずに済みます。
特に悪質なカスハラへの対処の例
カスハラでは、特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定め、実行できる体制を整えることが義務づけられています。厚生労働省の資料では、対処の例として次のようなものが挙げられています(限定列挙ではありません)。
- 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動は、警察へ通報する
- 行為者に警告文を出す
- 法令の範囲内で、行為者への商品の販売やサービスの提供をしない
- 行為者の店舗・施設への出入りを禁止する
- 民事保全法にもとづく仮処分命令を申し立てる
「体制の整備」とは、たとえば人事、カスタマーサービス、法務などの関係部門がすばやく連携し、取るべき対処を判断できるように定めておくことを指します。
よくある質問
パワハラとカスハラは同じ法律ですか?
はい。どちらも労働施策総合推進法にもとづく措置義務です。カスハラについては、令和7年の改正で第33条が設けられ、2026年10月1日から施行されています。
正当なクレームもカスハラになりますか?
なりません。社会通念上許容される範囲で行われた苦情は正当な申入れで、カスハラには当たりません。要求の内容と、伝え方(手段・態様)の両方から判断します。
カスハラ対策では具体的に何を決めておけばよいですか?
厚生労働省の資料では、労働者を保護する方針の明確化と周知、あらかじめ定めた対処の内容の周知、相談窓口の設置、事実確認・被害者への配慮・再発防止、特に悪質なカスハラへの対処方針と体制の整備などが、事業主が講じなければならない措置として示されています。
出典:厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!カスタマーハラスメント対策の義務化」「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました」、あかるい職場応援団「パワーハラスメントとは」、神奈川新聞 カナロコ「横浜市長パワハラ問題」。
監修
河合 継(クリスタルメソッド株式会社 代表取締役)
AI・ディープラーニングに関する特許16件の発明者。過去、国立がん研究センターとの共同研究や、テレビ番組でのAI解説実績を持つAI研究者として、AIの研究開発を主導している。
運営会社について | 編集方針
カスハラ対策・クレーム対応研修のAI活用をご検討の方へ
クリスタルメソッドは、AIを相手にクレーム対応・カスタマーハラスメント対応のロールプレイングを繰り返せる仕組みを開発・提供しています。「従業員のカスハラ対応研修にAIロープレをどう活かせるか」「導入の進め方や費用を知りたい」といったご相談を承っています。
- 無料相談・お問い合わせ:ご相談はこちら
- クレーム対応AIロープレの無料体験:カスハラ対応AIロープレを体験する
- AIロープレ 導入ガイド(無料):無料ダウンロード
Read next
あわせて読みたい
-
カスハラとは?定義・判断基準・具体例・クレームとの違いと対応方法をわかりやすく解説
カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先などからの、社会通念上許容される範囲を超えた言動によって、働く人の就業環境が害されることです。2026年10...
-
カスハラ対策の義務化とは?2026年10月施行で企業が講じる措置10項目と進め方
カスハラ対策の義務化(カスハラ防止義務化)とは、改正労働施策総合推進法(第33条)により、2026年10月1日から、すべての事業主にカスタマーハラスメント(カス...
-
カスハラロープレ練習とは?やり方と効果を5ステップで完全解説
カスハラロープレ練習とは、怒っているお客さまや理不尽な要求をするお客さまの役を相手に、現場での対応を声に出して繰り返し練習する研修です。同僚や講師がお客さま役を...
