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カスハラ研修 奨励金40万円(東京都)|対象になる取組・申請要件・締切を整理

カスハラ研修 奨励金40万円|申請要件と取組の選び方を完全整理

カスハラ研修は奨励金40万円の対象になるか——結論と制度の全体像

東京都が実施する「カスタマーハラスメント防止対策推進事業 企業向け奨励金(令和8年度第2回)」は、従業員300人以下の中小企業・個人事業主に対し、40万円(定額)を支給する制度だ。実施主体は公益財団法人東京しごと財団。令和7年4月1日に施行された東京都カスタマー・ハラスメント防止条例を受け、都内事業者のカスハラ対策実装を支援するために設けられた。

研修を検討している企業がまず確かめたいのは、「自社で実施・予定しているカスハラ研修は、この奨励金の申請対象になるのか」という点だ。結論から述べる。外部講師を招いた自社主催の社内研修は、選択取組の「取組3イ」に該当し、要件を満たせば申請対象となる。カスハラ対策にAIシステムを活用する場合は「取組2」として申請する。一方、他社主催のセミナーや勉強会への参加は、要件から明示的に除外されている。

特設サイトには「今回の募集で当初予定の規模に達する見込みのため、本事業の募集は今回で終了する」と記載されている。第2回事前エントリーの受付は令和8年11月6日(金)17時が締切であり、次回募集は現時点で予定されていない。

本稿では募集要項の要件と申請フローを、経営・事業責任者の意思決定に直結する形で整理する。情報の一次出典は東京しごと財団の特設サイト(https://www.tokyo-cusharaboushi.jp/)および2026年6月11日付の東京都報道発表だ。

関連記事カスハラとは?定義・判断基準・具体例・クレームとの違いと対応方法をわかりやすく解説 / カスハラロープレ練習とは?やり方と効果を5ステップで完全解説

対象になる事業者の要件

募集要項は対象事業者の要件を15項目定めており、すべて令和8年11月6日時点で満たしている必要がある。研修やAIシステムの検討より先に、自社が対象かどうかを確かめておく。主な内容を分類して整理すると次のとおりだ。

分類 要件(募集要項から)
規模 常時雇用する従業員が300人以下の企業等、または個人事業主
所在地 都内で事業を営む。法人は都内に本店登記、または都内に支店の事業所がある
事業の実態 都内の事業所で、継続して1年以上、実質的に事業を行っている(個人事業主は開業届を提出済み)
税金 法人税・消費税などの滞納がない。11月6日時点で12か月分の納税が確認できない場合は対象外
法令 過去5年間に重大な法令違反がない。労働関係法令を守っている
経営の状況 民事再生・会社更生・破産の手続中や私的整理の手続中でない(再生計画等の認可後を除く)
業種・関係者 性風俗関連特殊営業などでない。代表者・役員・使用人等が暴力団員等に当たらない
団体の種類 東京都政策連携団体・事業協力団体・都が設立した法人ではない
受給歴 本奨励金(令和7年度事業を含む)を受給済み・受給予定でない。同一代表者の別法人も同一企業とみなす
その他 財団の理事長が適当でないと判断した場合は対象外

カスハラ研修 奨励金の申請構造——必須2取組+選択1取組

この奨励金は「必須取組2つ」と「選択取組1つ」の組み合わせによって成立する。どちらか一方だけでは申請できない。研修を実施しても、マニュアル整備と周知が伴っていなければ審査を通過しない。

必須取組(両方)① カスハラ対策マニュアルの作成・改定② 基本方針の社内・社外周知選択取組(いずれか1つ)取組1:録音・録画機器の整備取組2:AIシステム等の導入取組3:外部人材の活用ア:継続的な相談対応契約(6か月以上)イ:研修講師スポット契約 ← 研修はここ奨励金 40万円(定額)支給必須2取組 + 選択取組1つで申請
図:カスハラ研修奨励金の申請取組構造。カスハラ研修の外部講師契約は選択取組3イに該当する。必須2取組と組み合わせることが申請の前提条件となる。

必須取組①:カスハラ対策マニュアルの作成・改定

対象期間(令和7年4月1日〜令和8年11月6日)内に作成または改定したマニュアルが必要だ。審査で確認される要素は複数ある。作成・改定年月日と企業名が書面上で読み取れること、募集要項が定める必須項目をすべて章番号と見出しで構成していること、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例への言及があること、社内周知を実施した日が記録で確認できること——これらすべてを満たす必要がある。章立てのみで内容が薄いものは認められない(募集要項記載)。東京しごと財団が公開するひな形の活用も可能で、TOKYOはたらくネットの事業者マニュアル雛形も利用できる(FAQ記載)。

財団が配布する申請様式の「マニュアル必須項目対応表」(令和7年度第3回の様式)では、マニュアルの必須項目として次の7つが挙げられ、それぞれがマニュアルのどのページ・章に書かれているかを記入して提出する。

ア カスタマーハラスメント対策に関するマニュアル作成の目的
イ カスタマーハラスメントの定義
ウ カスタマーハラスメントに対する基本方針
エ 顧客対応の考え方
オ カスタマーハラスメントへの対応
カ 社内体制整備
キ 企業間取引での対応

必須取組②:基本方針の社内・社外周知

マニュアル内で策定した基本方針を、社内と社外の双方に周知する。社外周知の具体例として特設サイトが挙げているのは店頭掲示、自社ウェブサイト掲載、顧客先への通知だ。周知日が書面・記録で確認できることが条件となる。研修を実施しても、この社外周知が抜け落ちていれば必須要件を欠いたまま申請することになる。

カスハラ研修 奨励金の中心——取組3イ「研修講師スポット契約」の要件詳細

「外部人材の活用」に分類される取組3の「イ」が、カスハラ研修に最も直結する選択肢だ。要件は以下の通りだ。

  • 自社が主催する研修であること(他社主催のセミナーへの参加は対象外と明記)
  • 就業者を対象とした研修であること
  • 研修内容はケア・接遇・条例等に関するもの
  • 令和8年11月6日時点で研修を実施済みであること
  • 専門家とのスポット契約が締結されていること

専門家として募集要項が例示しているのは、弁護士、社会保険労務士、中小企業診断士、労働衛生コンサルタント、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントなどだ。社労士によるハラスメント法務の解説、産業カウンセラーによる従業員のメンタルケア研修、弁護士による条例対応の勉強会などが典型的な形となる。

見落としやすい点が「他社主催セミナーへの参加は対象外」というルールだ。業界団体や研修会社が主催する公開セミナーに従業員を参加させた場合、自社主催の研修には該当しない。費用を負担していても、主催者が自社でなければ要件を満たさない。

取組3には「ア:相談対応等の継続的な契約(6か月以上)」と「ウ:警備会社との法人契約(6か月以上)」も含まれるが、研修講師のスポット契約は6か月以上の継続契約を求めない点で手続き上の負担が軽い。ただし研修の実施日が令和8年11月6日を過ぎていると対象期間外となるため、日程管理は厳密に行う必要がある。

カスハラ研修にAIシステムを活用する場合——取組2の要件と確認事項

AIを活用したカスハラ対策システムを導入する場合は、選択取組の「取組2」として申請する。取組3の研修講師契約と取組2のAIシステムは別の選択肢であり、どちらか一方を選ぶ。両方を実施しても奨励金は40万円(定額)から変わらない。

取組2の要件は次の通りだ。対象期間内に新たに購入またはサービス契約(6か月以上)すること、領収書があること(請求書では不可)、運用ルールの様式(様式第1号)を整備すること、社内周知と周知日の記録があること、都内事業所への導入であること。そして審査上の重要な確認事項として、「AIが活用されていること」と「カスハラ対策に利用できること」の両方がパンフレットやホームページ等で確認できることが求められる。確認できない場合は、別途資料の提出が必要になる(募集要項記載)。

DeepAIのカスハラ対応AIロープレは、AIアバターが顧客役を演じ、声やテキストでの応対を「会話を評価」で傾聴と事実確認・要求の切り分け・できないことの明示・言動の抑制・記録と応援要請・打ち切り判断の6項目に採点するツールだ(体験デモ)。東京しごと財団に対し、DeepAIのAIカスハラ訓練が取組2「AIを活用したシステム等の導入」に当たることを2026年10月7日に確認済みだ(※自社サービス)。ただし、マニュアルの作成など必須の取組も満たす必要があり、受付件数を超えれば抽選になるため、受給を約束するものではない。

取組2を選ぶ場合、契約前に確認すべき実務上のポイントが3点ある。契約期間が6か月以上であること、契約締結時に領収書を取得できる形であること(請求書のみの契約形態では要件を満たさない)、サービス提供者の公式サイトにAI活用とカスハラ対策利用の両方が確認できる記載があること——これらを契約前に確かめてから発注する判断が現実的だ。

研修以外の選択の取組(取組1・取組3ア・ウ)

研修やAIシステムのほかに、次の取組でも選択の取組の条件を満たせる。どれを選んでも奨励金は40万円で変わらないため、自社のカスハラの起きやすい場面に合うものを選ぶ。いずれも都内の事業所が対象で、対策が進んだことを様式第1号に書く。

取組 内容 主な条件
取組1 録音・録画環境の整備 録音・録画を主とした機器本体を新たに購入、またはリース(6か月以上) 領収書(請求書は不可)・機能が分かるパンフレット等・運用ルール(盗聴や盗撮を疑われない対策を含む)・社外への周知
取組3ア 相談対応等の継続的な契約 カスハラ対策の相談体制づくりに専門家を活用(6か月以上) 運用ルール・社内への周知・契約書(押印)
取組3ウ 警備会社との法人契約 警備体制を強める継続的な契約(6か月以上)。法律上必要な許可・届出をしている業者 設備や施設だけが対象の契約、家庭向けサービスは対象外。運用ルール・社内への周知

申請スケジュールと実務上の注意点——今回が最終募集

第2回事前エントリーは令和8年10月23日(金)10時から令和8年11月6日(金)17時まで受け付けている。受付件数は5,000件で、先着順ではなく抽選となる。第1回(令和8年度)は2,500件を超えたため抽選が実施された経緯がある。特設サイトには「今回の募集で当初予定の規模に達する見込みのため、本事業の募集は今回で終了する」と明記されており、次回募集は現時点で予定されていない。

申請の流れ(8つの手順)

1 取組の実施11月6日までに完了 2 事前エントリー10/23 10時〜11/6 17時・GビズID 3 支給申請の案内11月24日以降に送付予定 4 支給申請Jグランツで申請 5 審査約3か月程度 6 決定通知支給または不支給 7 請求約1か月程度 8 振込原則15日または月末
図:申請の流れ。取組の実施とGビズIDの取得は事前エントリーより前に始める(出典:東京しごと財団 特設サイト「申請方法」)。

GビズIDプライムの取得

事前エントリーにはGビズIDプライムアカウントが必要で、取得の遅れによる期限の猶予はない。GビズIDの公式サイトによると、取得方法はオンライン申請と書類申請の2つがある。オンライン申請はGビズIDアプリとマイナンバーカード、マイナンバーカードを読み取れるスマートフォンを使い、法人代表者の審査は速やかに行われる。書類申請は審査に最大1か月かかるため、第2回の締切(11月6日)に間に合わない可能性が高い。法人のオンライン申請は、2026年10月22日(木)22時〜23日(金)2時と、10月26日(月)20時15分〜23時30分にシステムメンテナンスで使えない。すでにIDを持っている場合も、事業形態・法人名・本店所在地・代表者氏名が最新か確かめておく(財団の「よくある不備」資料)。

支給申請はJグランツで行い、審査期間は約3か月、決定後の請求・振込まで含めると交付まで一定の期間を要する。支給申請の案内は令和8年11月24日以降に送付予定で、抽選により複数回に分けて受け付ける。

支給申請で出す主な書類と、よくある不備

財団の「提出書類チェックシート」(法人用・令和7年度第3回の様式)に挙がっている主な書類は、支給申請書(様式第1号)、誓約書(様式第2号)、事業所一覧、会社案内、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、法人事業税と法人都民税の納税証明書、マニュアルと社内周知の記録、マニュアル必須項目対応表、基本方針と社内・社外周知の記録、そして選んだ取組の領収書・契約書・パンフレット・周知の記録だ。

よくある不備(財団資料) 防ぎ方
様式の日付がそろっていない 様式に書く日付は、Jグランツで申請する日に統一する(事前エントリー日ではない)
マイナンバーが見える書類 開業届や住民票のマイナンバーは黒塗りにする
登記簿謄本・住民票の期限切れ 3か月以内に発行されたものを出す
様式第1号をExcelやWordのまま出す 必要なシートをすべてPDFにして出す
マニュアルに作成年月日・企業名がない 作成・改定年月日と企業名を書く
周知の記録に日付がない 周知した日が分かる記録を残す
外部人材との契約書に押印がない 押印する。電子印鑑なら電子証明書も出す
請求書や納品書を出す 領収書を出す
様式第1号と領収書・契約書の記載が違う 金額・日付などを領収書や契約書と一致させる

事前エントリーは支給の確約ではなく、書類審査で要件不足と判断されれば交付されない点は意思決定の前提として明確にしておく必要がある。

申請要件の実務チェックリスト

確認項目 具体的な内容 よくある落とし穴
対象事業者 従業員300人以下・都内で事業を営む・1年以上継続 開業1年未満、都外本社で都内事業なし
マニュアル 必須項目・章番号・条例言及・作成日・周知日 章立てのみで内容が薄いものは無効
社外周知 店頭掲示・HP掲載・顧客先通知等で周知日を記録 社内周知のみで社外周知が抜ける
研修(取組3イ) 自社主催・就業者対象・11月6日時点で実施済み 他社主催セミナーへの参加は対象外
AIシステム(取組2) 6か月以上・領収書・AI活用とカスハラ対策利用をHP等で確認可 請求書のみ不可・証跡なしで審査落ち
GビズID プライムアカウントを事前に取得済み 取得遅れによる期限猶予なし
重複エントリー 同一代表者の別法人も同一企業とみなす グループ会社の二重申請は無効
納税要件 令和8年11月6日時点で12か月分の納税確認が必要 直近に滞納がある場合は対象外

経営判断として押さえるべき制度の限界と付帯効果

この奨励金は要件を満たした取組に対して交付の可能性があるものであり、申請・審査・交付の過程で受給できないケースがある。事前エントリーは支給の確約ではなく、書類審査で要件不足と判断されれば交付されない。研修だけ実施して満足するのではなく、マニュアル整備・社外周知・必要書類の記録保管を並行して進めることが審査通過の前提となる。

必須取組の書類整備には想定以上の社内工数がかかることがある。特にマニュアルの章構成と条例への言及、周知日の記録管理は、研修の実施日より前から着手していないと間に合わないケースがある。研修の実施を先に確定させ、その後でマニュアルを急いで作るという進め方はリスクが高い。

制度の注目すべき付帯効果がある。奨励金の交付決定を受けた中小企業は、東京都中小企業制度融資「社会課題解決融資(働き方改革支援)」の対象となり、信用保証料の2分の1の補助を受けられる。40万円の奨励金単体だけでなく、この融資優遇も含めた資金調達上のメリットとして検討の余地がある。

問い合わせ先は東京しごと財団 カスタマーハラスメント防止対策推進事業 企業向け奨励金事務局(電話:03-4446-4621、平日9:00〜17:00)だ。申請要件の個別確認は事前に電話で問い合わせるのが最も確実で、書類不備によるやり直しを防げる。

奨励金の必須取組であるマニュアルや基本方針は、2026年10月1日に施行された改正法で企業に義務づけられた措置とも重なる。企業が講じる措置の全体像はカスハラ対策の義務化と企業が講じる措置、マニュアルに書く定義や判断基準はカスハラとは(定義・判断基準・具体例)、研修の進め方はカスハラロープレ練習のやり方で解説している。

よくある質問

カスハラ研修だけで奨励金を申請できますか?

できない。マニュアルの作成・改定と基本方針の社内・社外への周知の2つが必須で、そのうえで選択の取組を1つ実施する。研修講師とのスポット契約は、選択の取組3「外部人材の活用」のイに当たる。

研修会社の公開セミナーに社員を参加させた場合は対象ですか?

対象外。取組3イは自社が主催する研修の講師とのスポット契約に限られ、他社主催のセミナーへの参加は対象外と募集要項に明記されている。

AIを使った研修ツールはどの取組になりますか?

カスハラ対策のためにAIを活用したシステム等を新たに購入または6か月以上サービス契約する場合は、取組2「AIを活用したシステム等の導入」として申請する。領収書(請求書は不可)や運用ルールの様式第1号、社内周知が必要になる。

事前エントリーは先着順ですか?

先着順ではない。第2回の受付件数は5,000件で、支給申請の受付は抽選により複数回に分けて行う。事前エントリーは支給を約束するものではない。

すでに奨励金を受け取った会社も申請できますか?

できない。本奨励金(令和7年度事業を含む)を受給済み・受給予定の事業者は対象外で、同一代表者の別法人も同一企業とみなされる。

参考文献

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監修

河合 継(クリスタルメソッド株式会社 代表取締役)

AI・ディープラーニングに関する特許16件の発明者。過去、国立がん研究センターとの共同研究や、テレビ番組でのAI解説実績を持つAI研究者として、AIの研究開発を主導している。
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