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ブルートフォース攻撃とは?手口の種類・国内事例と、対策の優先順位【2026年】

ブルートフォース攻撃 対策の完全ガイド|AIで防ぐ仕組みと優先順位

目次

結論:ブルートフォース攻撃対策は「多要素認証」から始める

ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)とは、ID・パスワードの組み合わせを機械的に大量に試し、ログインを破る攻撃手法の総称である。辞書攻撃、パスワードスプレー、リスト型攻撃(クレデンシャルスタッフィング)はいずれもその変種であり、国内サービスへの被害は2025〜2026年も継続している。

対策の優先順位は明確だ(立場別の最初の一手は本文の早見表にまとめた)。第一に多要素認証(MFA)の全アカウントへの適用、第二にパスワードの使い回し防止と漏えい済みパスワードの拒否、第三に試行回数制限と補助策、そして第四以降でリスクに基づくAI検知を導入する。AIによる行動分析は強力な補完手段だが、MFAの代替にはならない。

IPAの相談窓口への「SNS等の不正ログイン」に関する相談件数は、2025年7月に144件と過去最多を記録した(出典:Impress Watch「IPAが不正ログインへ注意喚起」2025年8月29日付 https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/2042722.html)。対策を先送りにできる状況ではない。


多要素認証を入れていても突破される手口は、MFA疲労・AiTMの手口とAIで防ぐ方法で解説しています。

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ブルートフォース攻撃とは何か:仕組みと手口の種類

ブルートフォース攻撃は、認証システムの「何度でも試行できる」という弱点を突く。攻撃者は自動化ツールを使い、短時間に数十万〜数百万件の認証試行を送り込む。IPAはアカウント乗っ取り(不正ログイン)の基本的な手口として、総当たり攻撃・辞書攻撃・リスト型攻撃・フィッシングを挙げている(出典:Impress Watch 2025年8月29日付、IPAの注意喚起は同年8月28日)。

攻撃が成立する根本的な理由は、利用者がパスワードを使い回していること、そしてサービス側が試行回数を十分に制限していないことの組み合わせにある。どちらか一方の問題を解消するだけでは不十分であり、両面からの対策が必要になる。

ブルートフォース攻撃の典型的な流れ①攻撃者漏えい済みID・PWリストを入手・整備②自動ツールで大量試行数十万件/短時間複数IP経由で分散③ログイン成功アカウント乗っ取り(成功率:少数だが確実)④被害発生個人情報窃取ポイント不正利用攻撃が成立する2つの前提条件①利用者のパスワード使い回し ②サービス側の試行回数制限の不備
攻撃者は認証システムに大量の試行を自動送信し、成功したアカウントを乗っ取ってポイント不正利用・個人情報窃取などに転用する。攻撃が成立するのは利用者の使い回しとサービス側の制限不備が重なるときである。

手口の種類と特徴

手口名 概要 検知の難しさと対策のポイント
総当たり攻撃(ブルートフォース) 考えられる全組み合わせを機械的に試す 試行回数が膨大なため試行数の監視で検知しやすい。長いパスワードが有効な抑止力になる
辞書攻撃 よく使われる語句・単語リストを順に試す 全組み合わせより効率的。弱いパスワードや辞書に載る語句に有効。漏えい済みリストとの照合で防げる
リスト型攻撃(クレデンシャルスタッフィング) 他サービスから漏えいしたID・PWの組を別サービスに投入する。OWASPはブルートフォースの一種と位置づける(出典:OWASP「Credential stuffing」) パスワードを「推測」しないため成功率が相対的に高い。パスワード使い回しがある限り成立する。MFAが主たる対策
パスワードスプレー 少数アカウントへの試行を分散し、失敗回数を意図的に抑える ロックアウトや失敗回数ベースの検知を回避するよう設計されている。Microsoftは住宅用プロキシ経由で実行されIPアドレス指標が信頼しにくいと報告(出典:Microsoft Security Blog 2024年1月25日)。行動パターン分析が補完手段になる

このほか、よく使われるパスワードを1つ決めてIDの側を次々に変える「リバースブルートフォース攻撃」や、盗み出したパスワードのハッシュ値を攻撃者の手元のコンピューターで解析する「オフライン攻撃」もある。オフライン攻撃はログインの試行回数の制限では止められないため、パスワードの保存方式(ソルト付きで計算に時間のかかるハッシュ)と、漏えいが分かった時点でのパスワード変更が対策になる。

ハイブリッド攻撃:辞書の単語に、数字や記号を足して試す

ハイブリッド攻撃は、辞書の単語と、数字や記号の並び方の型(マスク)を組み合わせて試す手口だ。人が「単語に数字を足してパスワードにする」作り方をそのまま模している。password-cracking用のツールhashcatの説明では、辞書に「password」と「hello」を入れ、4桁の数字のマスクを組み合わせると、password0000からpassword9999、hello0000からhello9999までが候補になる。このため、単語に数字を足しただけのパスワードは、桁数が長く見えても弱い。

レインボーテーブルと、ソルト・遅いハッシュ

レインボーテーブルは、パスワードの候補とそのハッシュ値の対応を事前に計算して持っておき、盗んだハッシュ値からパスワードを逆引きする手口だ。サービス側は、パスワードごとに異なる値(ソルト)を加えて保存することで、事前計算した表が使えなくなる。OWASPは「パスワードごとに固有のソルトを加え、レインボーテーブルのような事前計算の表を使えなくする」ことを求め、保存方式にはArgon2id(メモリ19MiB以上、反復2回、並列度1以上)を挙げている(OWASP「Password Storage Cheat Sheet」)。

リモートデスクトップ(RDP)への攻撃

外部からログインできるリモートデスクトップも、総当たりの標的になる。警察白書(令和7年版)によると、令和6年のランサムウェア被害企業・団体へのアンケート(有効回答100件)で、侵入の経路はVPN機器が55件(55.0%)、リモートデスクトップサービスが31件(31.0%)だった。テレワークに使う機器の脆弱性や、強度の弱い認証用のパスワードを利用した侵入が大半とされている(警察庁、警察白書令和7年版)。リモートデスクトップも、本記事の優先度1〜3(多要素認証、使い回し防止、試行回数制限)の対象に含める。インターネットから直接ログインできる状態は、必要な場合に限る(本記事の整理)。

試行の向きで見る、ブルートフォース系の攻撃総当たり・辞書攻撃1つのIDに、多数のパスワード候補を次々に試すリバースブルートフォース・パスワードスプレー少数のパスワードを、多数のIDに試す。失敗回数を抑えられるリスト型攻撃他サービスから漏れたIDとパスワードの組を、そのまま投入するオフライン攻撃(ハイブリッド・レインボーテーブル含む)盗んだハッシュ値を手元で解析する。ログインの回数制限が効かない
図:攻撃が「何を、どの向きで試すか」で見分ける。向きによって効く対策が違う(OWASP、Microsoft、hashcatの説明を基に整理)。

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パスワードを長くすると、どれだけ時間が稼げるか:桁数×文字種の目安

総当たり攻撃では、試す候補が多いほど時間がかかる。候補の数は「文字種の数の、桁数乗」で決まる。文字種を増やすより、桁数を増やす方が、候補は急に増える。

組み合わせ数の増え方(10の何乗か。長さが棒の長さ)8桁 数字のみ10の8乗(1億通り)8文字 英数字+記号約6.1×10の15乗12文字 英数字+記号約4.8×10の23乗15文字 英数字+記号約4.0×10の29乗
図:組み合わせ数の増え方(文字種の数の桁数乗で計算。記号は半角の記号32種を含む94種として計算)。棒は10の何乗かを表すため、15文字は8文字の約65兆倍になる。
表:パスワードの組み合わせ数(文字種の数の桁数乗で計算。記号は半角の記号32種を含む94種として計算)
桁数 数字のみ(10種) 小文字のみ(26種) 大文字+小文字(52種) 英数字(62種) 英数字+記号(94種)
6文字 100万 約3.1×108 約2.0×1010 約5.7×1010 約6.9×1011
8文字 1億 約2.1×1011 約5.4×1013 約2.2×1014 約6.1×1015
10文字 100億 約1.4×1014 約1.5×1017 約8.4×1017 約5.4×1019
12文字 1兆 約9.5×1016 約3.9×1020 約3.2×1021 約4.8×1023
15文字 1,000兆 約1.7×1021 約5.5×1025 約7.7×1026 約4.0×1029

では、実際に解読するのにどれだけかかるのか。米国のセキュリティ企業Hive Systemsは、盗んだハッシュ値をGPUで総当たりで解析する場合の時間を、毎年「パスワードテーブル」として公表している。公表されている数値のうち、本文で確認できたものを、条件とあわせて示す。

表:パスワードの総当たり解析にかかる時間の目安(Hive Systemsの公表値。条件が異なるため、行どうしは単純に比べない)
パスワード 保存方式・機材 解読にかかる時間 出典
8桁の数字のみ bcrypt(コスト10)、RTX 5090を12基(2025年版) 約15分 heise online(Hive Systems 2025年版の報道)
8文字の小文字のみ 同上(2025年版)/RTX 5090の16基規模(2026年版) 約3週間(2025年版)/約2週間(2026年版) Hive Systems(2025年・2026年)
8文字の英数字+記号 bcrypt(コスト10) 2024年版225年、2025年版164年、2026年版132年 Hive Systems(2026年7月14日)
8文字の英数字+記号 MD5(高速なハッシュ)、RTX 4090(2024年版) 1時間以内 PC Watch(2024年5月2日)

この表から読み取れることは3つある。

  • 解析の時間は、年々短くなっている。8文字の英数字+記号は、Hive Systemsの表で2024年の225年が、2025年は164年、2026年は132年になった(Hive Systems 2026年版)。
  • サービス側の保存方式で、桁違いに変わる。同じ8文字でも、MD5のような高速なハッシュなら1時間以内、bcryptのような遅いハッシュなら年単位になる(PC Watch 2024年5月)。運営側は、遅いハッシュを使う。
  • 長さは、よく使われる値・漏えい済みの値には効かない。Hive Systemsは、過去に漏えいしたパスワード、辞書の単語、他サイトとの使い回しは、長さや複雑さに関係なく瞬時に解読されうるとしている(PC Watch 2024年5月の報道)。

この表は、盗んだハッシュ値を手元で解析する「オフライン攻撃」で、多要素認証も試行回数の制限も無い前提の値だ(Hive Systems 2026年版)。ログイン画面を相手にする攻撃では、試行回数の制限や多要素認証が効くため、ここまでの速度では試せない。結論として、パスワードは長くしつつ、使い回さず、漏えい済みの値を拒否し、多要素認証を重ねる。

ブルートフォース攻撃の国内被害事例(2025〜2026年)

ブルートフォース攻撃は抽象的な脅威ではなく、2025〜2026年にかけて国内主要サービスで被害が相次いでいる(2026年10月時点)。各事例から共通する構造的問題を読み取ることが、対策設計の起点となる。

不正ログインの被害は増え続けている。国家公安委員会・総務省・経済産業省の公表(2026年3月12日)によると、2025年の不正アクセス行為の認知件数は7,190件で、前年より約34%増えた。

不正アクセス行為の認知件数2021年1,516件2022年2,200件2023年6,312件2024年5,358件2025年7,190件
図:国内の不正アクセス行為の認知件数(国家公安委員会・総務大臣・経済産業大臣の公表、2026年3月12日)。2025年は前年より約34%増えた。
表:不正アクセスの後に行われたこと(2025年の認知件数、上位)
不正アクセス後の行為 件数
インターネットバンキングでの不正送金など 4,747件
証券会社のネット取引での不正な取引など 1,484件
ネットショッピングでの不正な購入 228件
メールの盗み見などによる情報の不正な入手 114件
知人になりすました情報の発信 72件

被害は「お金」「情報」「なりすまし」の3つに分かれる。同じ公表では、IDとパスワードを盗まれた手口のうち「パスワードの設定や管理の甘さにつけ込まれた」が84件、「フィッシングサイトから入手された」が77件だった(2025年に検挙した事件)。

お金以外の被害:改ざん・不正プログラムの埋め込み・踏み台

不正ログインの被害は、送金や購入だけではない。同じ公表では、2025年の不正アクセス後の行為として「ウェブサイトの改ざん・消去」が13件、「暗号資産交換業者等での不正送信」が21件あった。IPAに届出のあった2025年のコンピュータ不正アクセス109件を見ると、侵入後の不正行為として「ファイル/データ窃取、改ざん等」が65件、「不正プログラムの埋め込み」が34件、「他サイト侵入のための踏み台」が10件だった。権限を取得した侵入行為61件のうち、パスワード推測(パスワードリスト攻撃等)が31件で最も多かった(国家公安委員会・総務大臣・経済産業大臣、2026年3月12日。IPAの届出件数は未遂を含み、1件の届出が複数の項目に該当する場合がある)。

女の転職type(2026年5月公表)

株式会社キャリアデザインセンターが運営するスマートフォンアプリに対し、2026年5月26〜28日にリスト型攻撃が実行された。試行件数は1,141,828件、不正ログインが確認されたのは38,442件(ユニークユーザー18,253名)。公表された数値から計算すると、成功率は約3.4%に当たる。他サービスから流出したとみられるID・パスワードのリストが使われたと推測され、同社内からの漏えいは確認されていないとしている。

対応として外部アクセスの遮断、全会員の強制ログアウト、不正ログインが確認された会員のパスワード初期化と再設定案内、個人情報保護委員会への報告が行われた。初動の流れは、後述する「優先度6:被害発生時の対応」の実例として参照価値が高い。(出典:ロケットボーイズ https://rocket-boys.co.jp/?p=34400)

PinT(2025年8月公表)

東京電力エナジーパートナーの関連会社PinTが運営する顧客向け「マイページ」に、複数IPアドレスからのリスト型攻撃が行われた。2025年8月14〜16日にログイン試行の急増を検知し、遡り調査で2025年4月1日〜8月16日に不正ログインを確認。ポイントの不正利用は444件にのぼった。検知から遡り調査に至るまでの期間が4か月以上に及んだ点は、定常的な監視体制の重要性を示している。(出典:ScanNetSecurity 2025年9月10日 https://scan.netsecurity.ne.jp/article/2025/09/10/53593.html)

毎日新聞デジタル(2025年7月〜9月公表)

株式会社毎日新聞社が運営する毎日新聞デジタルのログイン識別システムに対し、2025年7月8日以降に大量の不審アクセスが発生。7月10日午前に検知し、7月11日に第一報、同年9月11日に調査結果を公表した。パスワードリスト攻撃(リスト型攻撃)と確認されており、個人情報ページの閲覧形跡は確認されていないとしている。(出典:ScanNetSecurity 2025年9月25日 https://scan.netsecurity.ne.jp/article/2025/09/25/53675.html)

Microsoft(海外・パスワードスプレーの事例)

Microsoftは2024年1月12日、自社の企業システムへの攻撃を検知した。攻撃者(ロシア国家支援グループMidnight Blizzard)は、MFAが有効でない旧式の非本番テストアカウントをパスワードスプレーで侵害した。試行回数を意図的に少なくすることでロックアウトや検知を回避し、多数の住宅用プロキシIPアドレスを経由してIPアドレスに基づく侵害指標を信頼しにくい状況を作り出した。その後、旧テスト用OAuthアプリの高い権限を悪用し、Exchange Onlineの企業メールにアクセスした。この事例が示すのは、AI検知以前に「MFA未設定の旧アカウント」という見落としが入口になるという構造的問題である。(出典:Microsoft Security Blog 2024年1月25日 https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2024/01/25/midnight-blizzard-guidance-for-responders-on-nation-state-attack/)

間接の被害:サービスの廃止・補償・信用

不正ログインの被害は、不正に使われた金額だけでは測れない。2019年にセブン&アイ・ホールディングスのスマートフォン決済「7pay」は、サービス開始の翌日から不正利用が見つかった。同社は、2019年7月31日17時の時点で、被害は808人・3,861万5,473円と公表し、原因は「リスト型アカウントハッキングの可能性が高い」とした。また、二要素認証などの追加認証の検討が十分でなかったことも認めた。同社は2019年8月1日、サービスを同年9月30日24時で廃止すると発表した。被害は全額を補償する方針も示された(Impress Watch、2019年8月1日)。

この事例が示すように、不正ログインは、被害額の補償に加えて、事故の調査・利用者への通知・再発防止の費用、サービスそのものの存続、利用者の信用に及ぶ。ログインを破られないための対策は、被害額の大きさでなく、事業の継続を守る投資と考えるべきだ。

AIハッキングと情報漏洩の最新被害動向については、AIハッキングと情報漏洩の被害一覧も参照されたい。


立場別の対策早見表:運営側・社内管理者・利用者

「ブルートフォース攻撃 対策」と言っても、会員サイトなどを運営する側、社内システムを管理する側、ログインする利用者側で、最初にやることが違う。本記事の根拠(NIST SP 800-63B、IPA、Microsoft、OWASP)から、立場ごとの最初の一手を表にまとめた。

立場別の最初の一手と、詳しい説明の場所
立場 最初にやること 根拠
会員サイトなどを運営する側 連続失敗の制限(1アカウント100回以下)とCAPTCHA・待ち時間の併用、漏えい済みパスワードの拒否、多要素認証またはパスキーの提供 NIST SP 800-63B
社内システムを管理する側 非本番のテスト用も含む全アカウントへの多要素認証、使われていないアカウントとアプリの棚卸し Microsoftの事例
ログインする利用者(従業員・個人) 長く複雑なパスワードを作り、使い回さない。多要素認証を設定する IPA

どの立場でも共通するのは、リスト型攻撃(他サービスから漏れたID・パスワードの投入)は、パスワードが強くても使い回しがあれば成立するという点だ。このため、パスワードの強さだけでなく、使い回しの防止と多要素認証を組み合わせる。次の章で優先順位を示す。

ブルートフォース攻撃の対策:導入の優先順位

導入の優先順位1多要素認証を全アカウントにテスト用・旧アカウントも含める2使い回し防止と漏えい照合一律の定期変更は求めない3試行回数の制限と補助策CAPTCHA・待ち時間を組み合わせる4アカウントとアプリの棚卸し使わないIDと連携アプリを消す5リスクに基づく検知異常なときに追加認証6被害時の初動を決める強制ログアウトと初期化
図:ブルートフォース攻撃への対策の優先順位。

次の順番で進めると、効果の大きい対策から手当てできる。各推奨の根拠を出典とともに示す。

優先度1:多要素認証(MFA)の全アカウントへの適用

IPAはパスキーを含む多要素認証の設定を日頃の対策に挙げ、OWASPはクレデンシャルスタッフィングの主たる対策として多要素認証を位置づけている。Microsoftの事例では、MFA未設定の旧アカウントが侵害の入口となった。重要な点は「全アカウントへの適用」であり、本番環境だけでなく非本番テストアカウントも含める必要がある。一部のアカウントにMFAが適用されていなければ、そこが最も脆弱な経路になる。

優先度2:パスワードの使い回し防止と漏えい済みパスワードの拒否

IPAは「長く複雑なパスワードを作り、使い回さない」ことを推奨する。NIST SP 800-63Bは、新規パスワードを過去の漏えいリスト(breach corpus)と照合し一致すれば拒否して理由を示すこと、侵害の証拠があるときはパスワード変更を強制すること(SHALL)を求めている。注目すべき点として、NISTは侵害の証拠なしに一律の定期変更を要求しないこと(SHOULD NOT)も示しており、旧来の「90日ごとの定期変更ポリシー」の見直しも検討に値する。定期変更の強制は、利用者が「Password1」→「Password2」のような予測しやすい変更をする傾向を生む可能性がある。

優先度3:試行回数制限と補助策

NIST SP 800-63Bは1アカウントあたりの連続失敗を100回以下に制限することを求め、CAPTCHA・待ち時間の増加・リスクに基づく手法で補うよう示している。ロックアウトのみに頼ると、正規ユーザーの締め出しと、試行を分散したパスワードスプレーへの無力化という二重の問題が生じる。試行回数制限は「閾値を設ける」だけでなく、閾値の前後で動作する補助策とセットで設計する。

優先度4:アカウントとアプリの棚卸し

Microsoftは不要な権限の監査・削除、旧テストアカウントへのMFA適用を推奨している。使われていないアカウントやOAuthアプリが残存していると、AI検知の監視対象外となった侵害経路になる。棚卸しの対象は、人のアカウントだけでなくシステムアカウント・APIキー・連携アプリも含める。

優先度5:リスクに基づく検知の導入

上記1〜4が整った上で、行動パターン(場所・端末・速度・試行の分散)の異常をリスクとして評価し、追加認証やパスワードリセットに連動させる仕組みを導入する。Microsoftはこの考え方をMicrosoft Entra ID Protectionとして提供している。基盤となるMFAや試行回数制限が機能していない状態でリスク検知のみを導入しても、根本的な対策にはならない。

優先度6:被害発生時の初動

女の転職typeの対応を参考にすると、外部アクセスの遮断、全会員の強制ログアウト、不正ログインが確認されたアカウントのパスワード初期化と再設定案内、個人情報保護委員会への報告が初動として実施された。IPAは利用者側の対応として、パスワードの速やかな変更、登録情報の確認、多要素認証の設定を挙げている。被害発生時の手順を事前にインシデント対応フローとして文書化しておくことで、実際に攻撃が起きた際の判断遅延を防ぐことができる。


パスワードの長さと、ログイン制限の設計:NISTとOWASPの基準

ブルートフォース攻撃への備えとして「パスワードを何文字にするか」「ロックアウトをどう設計するか」はよく問われる。公的な基準で確認できる範囲を整理する。

運営側のログイン防御:5つの層(NIST SP 800-63B-4・OWASP)1. パスワードの基準単独利用は15文字以上。文字種の組み合わせは強制せず、貼り付け・パスワードマネージャーを許可2. ブロックリストとの照合よく使われる値・漏えい済みの値は、一部分でなく全体を照合して拒否3. 試行回数の制限連続失敗100回以下で停止。ただしロックアウトは悪用・遅い攻撃に弱い4. CAPTCHA・待ち時間・IP制限自動化を鈍らせる補助策。プロキシ経由の分散には弱い5. 多要素認証・パスキー上の層が破られても、パスワードだけではログインできない状態にする
図:ログインを守る5つの層。上の層だけに頼らず、重ねて設計する。
パスワード基準(NIST SP 800-63B-4)
項目 基準
最低文字数 パスワードだけでログインさせる場合は15文字以上。多要素認証の一部として使う場合は8文字以上まで短くしてよい
文字種の強制 大文字・数字・記号を混ぜるといった、その他の構成ルールを課してはならない
使い回し・漏えい対策 よく使われる値・漏えい済みの値のブロックリストと照合する。一部分や単語ではなく、パスワード全体を照合する
パスワードマネージャー パスワードマネージャーと自動入力の利用を許可する。貼り付けも許可することが望ましい
試行回数の制限 連続した失敗は100回以下に制限する(それ以下の上限も設定してよい)

ロックアウトなどの補助策には、それぞれ弱点がある。OWASPは次の点を挙げている(OWASP「Blocking Brute Force Attacks」)。

補助策の弱点(OWASP)
補助策 弱点
アカウントのロックアウト 攻撃者が何百ものアカウントを意図的にロックさせ、サービスを使えなくできる。1時間に数回だけ試す遅い攻撃や、1つのパスワードを多数のIDに試す攻撃には効かない
IPアドレスでの遮断 ISPや大企業のプロキシサーバーを遮断し、多数の正規ユーザーを巻き込むおそれがある。プロキシの一覧を使って多数のIPに分散されると、遮断されにくい
CAPTCHA 問題の難しさではなく、コンピューターが正解する確率が問題になる
待ち時間(遅延) 数秒の待ちでも総当たりを大きく遅らせられるが、同時に多数のリクエストを送る攻撃には効きにくい

OWASPは、ブルートフォース攻撃を完全に止めるのは難しいため、防御を重ねる必要があるとしている。辞書の単語を少し変えた程度のパスワードから試されるため、ありふれた語に基づくパスワードは避ける。本記事の優先度1〜3(多要素認証、使い回し防止、試行回数制限)と重ねて設計するのが現実的だ。

サーバー側の防御ツール:WAF・IDS/IPS・パスワード管理ツール

ブルートフォース攻撃への対策は、設定だけでなく、通信を見張るツールも使う。それぞれが何を担い、何ができないかを整理する。

防御ツールが働く場所:入口から利用者までIDS・IPS(ネットワーク)IDSは不正な通信を検知して管理者へ通知。IPSはそれに加えて自動で遮断するWAF(Webアプリケーションの前)ログインページなどWebアプリへの通信を、アプリの層で監視して防御する認証の仕組み(多要素認証・試行回数制限)パスワードが破られても、ここで止める。優先度1〜3パスワード管理ツール(利用者側)長く固有のパスワードを作り、使い回しをなくす
図:防御ツールが働く場所。上の2つはサーバーの前で通信を見張り、下の2つは認証と利用者の側を固める(総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」用語集の説明を基に整理)。
表:WAF・IDS・IPS・パスワード管理ツールの役割と限界
ツール 何をするか ブルートフォース対策としての位置づけ 限界
WAF(Webアプリケーションファイアウォール) Webアプリケーションに対する外部との通信を監視し、脆弱性への攻撃や情報の窃取などを防御する。ネットワークではなくアプリケーションの層で監視する(総務省 用語集) ログインページへの短時間の大量の通信を検知・制限できる製品がある。機能は製品により異なるため、ログイン試行への対応を確認する IPアドレスを多数に分散した攻撃は、IP単位の制限では止めにくい(OWASP、Microsoft)
IDS(侵入検知システム) 不正なアクセスを発見すると、電子メールやアラームなど事前に設定した方法で管理者に連絡する(総務省 用語集) ログインの失敗が急増したことに気づく手段になる 通知が主な役割で、通信そのものは止めない
IPS(侵入防止システム) IDSの機能に加えて、不正なパケットを自動的に遮断する(総務省 用語集) 明らかな総当たりの通信を自動で遮断する 遮断の設定が強すぎると、同じIPを使う正規の利用者を巻き込む(OWASPのIP遮断の弱点)
パスワード管理ツール(利用者側) 長く複雑で、サービスごとに異なるパスワードを作って保存し、入力を補助する。IPAは、使い回さないためにパスワードマネージャーの利用を検討するよう勧めている(IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026 個人編」) リスト型攻撃の前提である「使い回し」をなくす。運営側は、利用者が管理ツールと貼り付けを使えるようにする(NIST SP 800-63B-4) 管理ツールのマスターパスワードが破られると、保存した全部が危うい。マスターには多要素認証かパスキーをかける(本記事の整理)

順序としては、ツールの前に、多要素認証・使い回し防止・試行回数制限(優先度1〜3)を整える。ツールは、その上で攻撃に気づき、止めるまでの時間を縮めるために重ねる。

パスワードを使わない認証(パスキー)への移行

ブルートフォース攻撃とリスト型攻撃は、どちらも「パスワードがあること」を前提にした攻撃だ。パスキーは、端末の中の秘密鍵と、サービス側の公開鍵の組み合わせでログインする方式で、盗んで使い回せるパスワードがそもそも存在しない。サービス側にもパスワードを保存しないため、データベースが漏えいしても流出するパスワードがない。鍵は作成したサイトでしか使えないため、偽サイトに入力させて盗む手口も成り立たない(FIDO Alliance「Passkeys」)。

米国立標準技術研究所(NIST)の認証の指針 SP 800-63B(第4版、2025年)は、端末間で同期できるパスキーを、条件を満たせば多要素認証の水準(AAL2)を支えられる方式として位置づけた。FIDO Allianceが委託した調査(2024年)では、回答者の53%が少なくとも1つのアカウントでパスキーを有効にしていた。

導入は、管理者や重要なシステムのアカウントから始め、パスキーに対応していないサービスでは、長く使い回さないパスワードと多要素認証を続ける。

不正ログインに気づいたら:確認するログ

  • Googleアカウント:セキュリティ通知で、ログインした端末の種類・日時・場所を確かめる。心当たりがなければ通知から「アカウントを保護」に進む(Google アカウント ヘルプ)。
  • Google Workspace(管理者):ユーザーのログイベントで、ログインの成功と失敗を最長6か月分さかのぼって確認できる。不審なログインには警告が表示される(Google Workspace 管理者ヘルプ)。
  • AWS:CloudTrailのログで、誰の権限で(userIdentity)、どこから(sourceIPAddress)操作されたかをたどる(AWS Security Blog、2026年9月)。

AIで防ぐ方法:リスクに基づく検知の仕組みと、補助としての位置づけ

AIが働く3つの段階1試行の段階回数制限をCAPTCHAや待ち時間で補う2攻撃を見分ける段階場所・端末・速度の異常を評価3パスワード設定の段階漏えい済みのものを拒否する
図:ブルートフォース攻撃に対して、AIやリスク評価が働く3つの段階。

AIや機械学習がブルートフォース対策に貢献できるのは、主に「攻撃を見分ける段階」と「パスワード設定の段階」である。ただし、AIは基本対策(多要素認証・試行回数制限)を代替するものではなく、それらの上に積み重ねる補完層として機能する。

特に、パスワードスプレーのように試行を分散してIPアドレス単体では判別しにくい攻撃に対して、行動パターンの異常を評価するアプローチが有効な補完手段となる。Microsoftは住宅用プロキシ経由の攻撃を踏まえ、IPアドレスに依拠した検知の限界を明確に指摘しており、行動パターンに基づくリスク検知(Microsoft Entra ID Protection)の活用を推奨している。

適用段階 AIが担う機能 根拠・注記
試行の段階
大量・自動の認証試行
レート制限の補助。CAPTCHAや待ち時間の増加、リスクに基づく手法を組み合わせ、正規ユーザーの締め出しを最小化しながら制限を維持する NIST SP 800-63Bは連続失敗を1アカウントあたり100回以下に制限し、CAPTCHA・待ち時間・リスクに基づく手法で補う考え方を示している
攻撃の識別段階
IPで見分けにくい攻撃
ログインの行動パターン(アクセス元・使用端末・操作速度・試行の分散)の異常をリスクとして評価し、追加認証やパスワード変更を発動する Microsoftは住宅用プロキシ経由の攻撃でIPアドレス指標が信頼しにくいことを踏まえ、行動パターンに基づくリスク検知の活用を推奨(Microsoft Security Blog 同上)
パスワード設定の段階 新規パスワードをよく使われる値・漏えい済みパスワードのリストと照合し、一致すれば理由を示して変更を促す NIST SP 800-63Bは、過去の漏えい(breach corpus)との照合を検証側に求めている

リスクに基づく検知は、「スコアが高ければ追加認証を動的に発動する」という仕組みにより、ユーザー体験を過度に損なわずにセキュリティを強化できる点が利点である。ただし、その限界も直視する必要がある。

AIセキュリティ対策の全体像については、AIセキュリティ対策の解説が参考になる。


AIの限界と注意点:見落としが起きるケース

AIによるリスク検知を過信すると、むしろ対策の穴が生じる。確認されている限界を整理する。

IPアドレスによる判定の限界

Microsoftが報告したMidnight Blizzardの事例では、攻撃者は正規ユーザーと同じ住宅用プロキシのIPアドレス帯を経由して侵害を実行した。場所やIPアドレスだけに依拠する検知では、攻撃者が正規ユーザーと区別しにくいIPを使うと機能しない。IPアドレスは補助的な指標の一つとして位置づけ、単独の判断基準にしないことが重要である。

試行回数を意図的に抑えた攻撃

パスワードスプレーは、少数のアカウントへの試行回数を故意に少なくし、失敗回数に基づくロックアウトや閾値検知を回避するよう設計されている(Microsoft Security Blog 同上)。回数のしきい値だけに依存する検知は、この設計に対して有効に機能しない。行動パターン全体を評価するリスクベースの検知が必要になる理由がここにある。

棚卸しされていないアカウントが入口になる

MicrosoftへのMidnight Blizzard攻撃の侵害経路は、MFAが有効でない旧テストアカウントだった。AIによるリスク検知が機能していても、監視対象から外れた古いアカウントやOAuthアプリが存在する限り、それが攻撃経路になりうる。アカウントの定期棚卸しは、AI導入以前の前提条件である。

誤検知と正規ユーザーの締め出し

NISTは、ロックアウトを厳しくしすぎると正規ユーザーが締め出されることを踏まえ、CAPTCHA・待ち時間・リスクに基づく手法で補う考え方を示している。判定精度がどれほど高くても、誤検知が発生した際の運用フロー(正規ユーザーの復旧手順・問い合わせ対応)を事前に整備しておかなければ、運用コストがセキュリティ強化の効果を相殺する可能性がある。


ほかの侵入の手口と対策

ブルートフォース攻撃は、ほかの手口と組み合わせて使われることが多い。関係する手口の仕組みと対策は、それぞれの解説ページにまとめている。

関係するほかの侵入の手口
手口(詳しい解説へ) どんな攻撃か
サプライチェーン攻撃 委託先・取引先・OSS・クラウドなど、自社の外にあるつながりを経由して侵入する攻撃
VPNの脆弱性を狙う侵入 VPN機器など外部に公開している機器の、修正されていない弱点から入り込む攻撃
フィッシング 本物そっくりのメールやサイトでID・パスワードを入力させて盗む手口
多要素認証の突破 承認通知の連打・中継型の偽サイト・SIMの乗っ取りで、2段階目の確認をすり抜ける手口
ラテラルムーブメント 侵入した後、社内ネットワークを横に移動して管理者の権限や重要なデータへ近づく行為
内部不正 社員・退職者・委託先が、与えられた権限を悪用して情報を持ち出す行為
ビジネスメール詐欺(BEC) 取引先や経営者になりすましたメールで、偽の口座へ送金させる詐欺
DDoS攻撃 多数の機器から大量の通信を送りつけ、サイトやサービスを止める攻撃

手口全体の見取り図と、AIを使った対策の優先順位はAIセキュリティ対策の解説で扱っている。

よくある質問

Q. ブルートフォース攻撃とリスト型攻撃は何が違うのか?

OWASPによると、クレデンシャルスタッフィング(リスト型攻撃)はブルートフォースの一種である。ブルートフォースが複数のパスワードを「推測して試す」のに対し、クレデンシャルスタッフィングは他のサービスから漏えいした既知のID・パスワードの組み合わせを別サービスに投入する点が異なる。パスワードを推測する必要がないため、パスワードが強固であっても使い回しさえあれば攻撃が成立する。(出典:OWASP「Credential stuffing」 https://community.owasp.org/attacks/Credential_stuffing)

Q. アカウントロックをかければブルートフォース攻撃対策は十分か?

十分ではない。Microsoftが公表したパスワードスプレーは、試行回数を意図的に少なく抑えることで失敗回数に基づくロックアウトや検知を回避していた。NISTも連続失敗の制限に加え、CAPTCHA・待ち時間・リスクに基づく手法で補う考え方を示している。ロックアウト単独では、パスワードスプレーのような分散型攻撃には有効に機能しない。

Q. 多要素認証を入れれば十分か?

最も重要な対策の一つだが、全アカウントに適用されていることが前提条件となる。Microsoftの事例では、侵害の入口となったのはMFAが有効でない旧テストアカウントだった。MFAの導入と並行して、パスワードの使い回し防止・漏えい済みパスワードの拒否・古いアカウントの棚卸しを組み合わせる必要がある。

Q. 国内でリスト型攻撃の被害はあるか?

2025〜2026年に複数の事例がある。女の転職type(2026年5月公表、試行約114万件・不正ログイン38,442件)、PinT(2025年8月公表、ポイント不正利用444件)、毎日新聞デジタル(2025年7〜9月公表)が確認されている(2026年10月時点)。いずれも攻撃者が外部から入手したリストを使っており、サービス内からの漏えいとは異なる攻撃経路である。

Q. WAFやIPSを入れれば、ブルートフォース攻撃は防げるか?

防げない。WAFはWebアプリケーションへの通信を、IPSは不正なパケットを監視・遮断するが、IPアドレスを多数に分散した攻撃には、IP単位の遮断では対応しにくい(総務省 用語集、OWASP、Microsoft)。多要素認証・使い回し防止・試行回数制限を整えたうえで、ツールを重ねる。

Q. パスワード管理ツールは安全か?

IPAは、パスワードを長く複雑にして使い回さないことを勧め、パスワードマネージャーの利用を検討するよう呼びかけている(IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026 個人編」)。ただし、保存した全部をマスターパスワードで守る構造になる。マスターには長いパスワードと多要素認証かパスキーを設定する(本記事の整理)。

Q. AIで不正ログインをどう見分けるのか?

IPアドレスだけでは見分けにくい攻撃があるため、Microsoftは行動パターンに注目し、リスクに基づく検知で多要素認証やパスワード変更を発動させる考え方を示している。アクセス元・使用端末・操作速度・試行の分散といった行動の異常をリスクスコアとして評価し、スコアに応じて追加認証を動的に発動させる仕組みが、IP依存の限界を補う手段となる。ただし、この検知はMFAや試行回数制限といった基本対策が機能していることを前提とした補完的な層である。

Q. パスワードを長くすれば、ブルートフォース攻撃は防げるか?

総当たり攻撃には有効な抑止力になる。ただし、他サービスから漏えいした組を投入するリスト型攻撃は、パスワードの強さに関係なく使い回しがあれば成立する。盗んだハッシュ値を手元で解析するオフライン攻撃も、ログインの試行回数制限では止められない。長いパスワードは「使い回さない」「多要素認証を設定する」と組み合わせて初めて効果が出る(IPAの推奨、OWASP「Credential stuffing」)。

Q. 不正ログインされると、どんな被害につながるか?

国内の2025年の不正アクセス行為の認知件数では、不正アクセス後の行為として、インターネットバンキングでの不正送金などが4,747件、証券会社のネット取引での不正な取引などが1,484件、ネットショッピングでの不正な購入が228件と報告されている(国家公安委員会・総務大臣・経済産業大臣、2026年3月12日)。ほかにメールの盗み見などによる情報の不正な入手が114件、知人になりすました情報の発信が72件あった。


参考文献

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監修

河合 継(クリスタルメソッド株式会社 代表取締役)

AI・ディープラーニングに関する特許16件の発明者。過去、国立がん研究センターとの共同研究や、テレビ番組でのAI解説実績を持つAI研究者として、AIの研究開発を主導している。
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