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量子コンピュータが実現するDXからQXの世界
さまざまな業界で推進されているDXは、カメラやセンサーによって集められた情報を、AIによって情報を精査し、5Gによる高速回線でリモートワークや遠隔操作などを可能とする、デジタル技術を活用した組織づくりのことを指します。レガシーシステムからデジタル技術を活用した市場に、競争力で負けないように業務の効率化をDXは目指すことになるのですが、実は既にDXの次の組織づくりとして、QXというものが考えられています。
今回はQXへ至るために重要な技術となる、量子コンピュータについてご紹介していきます。
量子コンピュータとは
量子コンピュータを活用したQXについてお話しする前に、まずは量子コンピュータとは何かについて、ご紹介していきます。
古典コンピュータと表現される現在の一般的なコンピュータは、最小単位であるビットが「0」もしくは「1」の状態を持っている二進数で計算が行われます。それに対して、量子コンピュータの最小単位である量子ビットは、「0」と「1」の両方の状態を持っています。この二つの状態を持つという特性から、同じように「物質」と「波動」の両方の状態をもつ量子に例えて、量子コンピュータと名付けられました。
量子コンピュータの特徴は、その圧倒的な処理速度にあります。古典コンピュータが登場してから現在に至るまで、その技術は格段に向上し、当初とは比べ物にならないほどの情報処理能力が手に入りました。しかし、同時に処理したい情報量や複雑さも増しているため、古典コンピュータではいずれ限界が来ると言われています。そこで量子コンピュータによる情報処理能力の高さが注目されており、その性能は古典コンピュータの1億倍にもなるとか。
この性能によって、新薬に使われる複数の素材の組み合わせを始めとした、数えきれないほどのパターンから瞬時に最適解を見つけ出す事が可能であると言われています。
量子コンピュータについてさらに詳しく知りたい方はこちらへ!
量子コンピュータとは?解説!
量子コンピュータでできること
量子コンピュータの正体や価値については既にご紹介しましたが、具体的にはどのような事が可能になるのでしょうか。
集めた情報から最適解を探す
まずは既に述べたように、膨大な情報量から最適解を見つけ出す事ができます。それによって、古典コンピュータだと1万年はかかる暗号解読を、量子コンピュータを使ったら数分で解読できた話などもあります。この話自体は、元々量子コンピュータが得意とする分野であった故に起きた事とも言われていますが、いずれにしても一から順番にパターンを計算していく古典コンピュータにはできない芸当であると言えます。
限りないパターンから最適解を見つけ出す量子コンピュータが実用化されれば、膨大な時間と労力のかかる新薬の開発速度が上がります。更に、宇宙空間を凄まじい速度で飛んでいるデブリ(宇宙ゴミ)一つ一つの軌道を把握し、そこから安全な宇宙ステーションの開発も可能になると言われています。
排熱や消費エネルギーの心配を減らす
現在完成している量子コンピュータ「D-Wave」は、演算に使っている量子が隔離環境を必要とするために、絶対0度に近い温度の内部高真空環境を作り出しています。そして、それを維持するには25kW以下の電力が必要になるとか。75kWもの電力を必要とし大量の熱を生み出すスーパーコンピュータに比べて、消費電力や排熱の関係から量子コンピュータの方が優秀なのです。
AIなどを活用した社会ではより一層消費電力が増える事が予想され、2025年には電力消費全体のうち10%を占めるとも言われています。DXを推進することによる弊害とも言えそうですが、量子コンピュータはエネルギー節約の観点からも大きなメリットを持ちます。
現段階では量子の安定化が課題
様々な強みを持つ量子コンピュータですが、同時に課題があるのも事実。そのうちの一つに、量子を安定させたままビット数を増やす事が課題と言われています。
先ほど紹介した「D-Wave」は、最適化問題に特化した量子コンピュータであり、用途が限定され万能型ではありません。また、ゲート型と呼ばれるタイプの量子コンピュータはまだビット数が少なく、現在開発されている性能は古典コンピュータと変わらないとも言われています。
元々量子状態を保つ事が難しく、更にビット数を増やす必要もあるため、万能型が実用化されるには10年以上の年月が必要であると言われています。
DXからQXへ
DX(デジタルトランスフォーメーション)では、既存のITシステムを利用したレガシーシステムから、デジタル技術を活用し新たな価値の創造を可能にする組織づくりを行うもの。それに対してQXとは、量子技術を中心とした新たな街づくりであり、数えきれないほどの車が渋滞を起こさないためのルートを計算したり、新素材による耐震性を計算したより一層高いビルが生まれたり、消費電力を抑えることにも繋がります。
これからも技術が進歩し、情報が複雑化することで、処理する情報量はより膨大になっていくと考えられます。現在の車両は地上を走っているため二次元的な情報も、空を飛ぶ車が登場すれば三次元的な情報になり、渋滞の予測だけでなく車両そのものが処理する情報も増えます。
現在推進されているDXは、情報を集めて処理し分析する事まではできますが、その情報から判断を行うには数えきれないほどの選択肢とパターンから計算する必要があるため、古典コンピュータでは処理が追いつきません。故に、最終的に人間が判断する必要があり、だからDXにはデジタル技術を活用できる人材が必要になるのです。しかし、量子コンピュータがあれば最適解を見つけ出す能力に秀でています。故に、この量子コンピュータを始めとした量子技術で、新たなアプリケーションや社会の仕組みを生み出す事が期待されています。
教育業界にDXを取り入れる事例
住友商事によるQXへの取り組み
住友商事では量子コンピュータの可能性を感じ、2018年に社内研究会を発足してから様々な取り組みが行われています。そのうちの一つに、物流センターである「ベルメゾンロジスコ」で人員を管理するために、量子コンピュータが取り入れられました。
ベルメゾンロジスコでは、環境によって売れる商品は変化するため、それによって必要な作業時間や人員の確保など、生産ラインの最適化が課題でした。そこで、作業を見える化する為に導入された、スマイルボードによって集めた情報を、組み合わせ問題を得意とする量子コンピュータがエンジンとなって、最適化を行いました。
また、他にも量子コンピュータ向けソフトウェアを開発するイスラエルの企業に出資をおこなったり、航空管制システムを構築するワンスカイシステムズ(OneSky Systems)、東北大学と共に量子コンピューターを用いた航路設計の実証実験を行っています。
まとめ
Googleを始めとした様々な企業が、現在では量子コンピュータの開発に力を入れています。現在推進されているDXですが、そこがゴールではなく技術は更に進歩していきます。そして進んだ技術の先に量子コンピュータの存在が必要になってきます。
現在の地球は食料問題やエネルギー問題・環境問題など様々な課題を抱えていますが、その解決に量子コンピュータが大きく貢献するかもしれません。
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