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AIコーディングの費用削減、LegalOnがCodexで65%減らした方法と手順

タスクに合わせてAIモデルの大きさを選び、コーディング費用を抑えるイメージ

LegalOnはCodexの推定日次コストを65%削減、開発速度は維持

OpenAIは2026年10月、契約書レビューなどの法務AIを手がけるLegalOn Technologiesの導入事例「LegalOn halves Codex costs while maintaining development speed」を公開した。LegalOnは、AIコーディングエージェント「Codex」の使い方を見直し、GPT-5.5を使っていたときと比べて推定日次コストを約65%減らしながら、開発速度を保ったという(OpenAI)。見出しは「半減」だが、本文で示された主な数字は65%だ。

削減は一つの工夫によるものではない。OpenAIの記事によると、効いたのは次の三つの組み合わせだった。

  • モデルの使い分け:すべての作業に最上位モデルを使うのをやめ、作業の難しさに応じてGPT-6(Luna・Astra)とGPT-6.1 Solから選ぶ
  • Fastモードを既定で制限:必要なときだけ個別に申請して使う形に変更
  • 事業ごとの予算:部門・グループ・個人の単位で月の利用上限を設け、事業の成長段階に合わせて予算を変える

出発点は「まず思い切り使わせる」ことだった。LegalOnは当初、開発者にGPT-5.5のFastモードを無制限に使わせ、設計・実装・日常業務へと広げていった。しかし高性能モデルを上限なしで使い続ければ、年間予算を超えるのは避けられない。そこで見直しに入った(OpenAI)。なお、OpenAIの公式ドキュメントでは、対応モデルのFastモードは標準の2.5倍の速さで利用枠を消費すると説明されている。既定で制限するだけでも、費用への影響は大きい。

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モデルの使い分けとガイドライン:AID CoEが決め、各エンジニアが選ぶ

見直しを主導したのは、社内のAI駆動開発の推進組織「AID CoE(AI-powered Development CoE)」だ。AID CoEがモデルを試して利用状況を監視し、モデル選びのガイドラインを作った。マネージャーがその内容をチームに伝えることで、エンジニア一人ひとりが作業ごとに適したモデルを自分で選べるようにした(OpenAI)。

タスク複雑度によるモデル選択と管理体制低複雑度↓高複雑度GPT-6 Lunaコード実装要件が明確な実装GPT-6.1 Sol標準的な設計・文書作成GPT-6 Astraアーキテクチャ設計高度な判断が必要な局面AID CoE(AI駆動開発の推進組織)モデル選択ガイドライン策定・監視 / 部門・個人の月次利用上限を管理者設定
図:LegalOnのモデルの使い分け。作業の難しさに応じてGPT-6 Luna・GPT-6.1 Sol・GPT-6 Astraを選び、AID CoEがガイドラインと月の利用上限で全体を管理する(OpenAIの導入事例をもとに作成)。
  • GPT-6 Luna:要件がはっきりしたコードの実装
  • GPT-6.1 Sol:標準的な設計や文書作成
  • GPT-6 Astra:アーキテクチャ設計など、高度な判断が要る場面

基本は「軽いモデルから始め、難しくなったら上のモデルに移る」。高性能モデルを禁止するのではなく、使う場面を絞る考え方だ。あわせて管理画面で部門・個人ごとの月の利用上限を設定し、AID CoEが利用状況を見ながら、事業の必要に応じて上限を調整している。

予算の付け方も事業ごとに変えた。立ち上げ期の新規事業には多めの予算を渡してAIを積極的に使わせる一方、成熟した既存事業には最大で約20%のコスト効率改善を求めた(OpenAI)。この20%は既存事業に課した目標で、全体の約65%削減とは別の数字だ。Fastモードの制限で速度が落ちる懸念には、作業を並列で走らせるなどの工夫で対応したという。

コーディングAIの費用を抑える主な方法の比較

LegalOnの手法を、ほかのよく知られた方法と並べて整理する。

アプローチ 主な手段 効果の出やすい局面 主な限界・注意点
モデルの使い分け(LegalOnの手法) 作業の難しさ別に推奨モデルを決めるガイドライン 多様なタスクが並走する大規模開発チーム ガイドライン策定・維持にオーバーヘッドが発生。モデル更新のたびに再調整が必要
プロンプト最適化 トークン数の削減・few-shotの絞り込み・システムプロンプト圧縮 定型タスクが多く、APIコール頻度が高い場面 品質とのトレードオフが生じやすい。個別適用に工数がかかる
キャッシュ活用 同一プロンプト結果をキャッシュして再利用 繰り返しの多いドキュメント・テスト生成 動的なコード生成には適用困難。キャッシュ管理の複雑さが増す
利用量の上限管理のみ 部門・個人単位の月次上限を管理者が設定 意図せぬコスト膨張を防ぐ導入初期段階 上限値が適切でなければ開発速度を損なう。ガイドラインなしでは品質リスクが残る

LegalOnが組み合わせたのは、表の「モデルの使い分け」と「利用量の上限管理」に、Fastモードの既定制限を加えた形だ。ガイドラインだけでは守られない部分を上限で抑え、上限だけでは品質が落ちる部分をガイドラインで補う。65%という数字は、これらをまとめて実施した結果であり、どの施策がどれだけ効いたかの内訳は公開されていない点には注意したい。

日本企業がコーディングAIの費用管理で進める順番

LegalOnの事例から読み取れるのは、「まず使わせて実態を知り、そのうえでルールを作る」という順番だ。最初から厳しく絞ると、どの作業にどのモデルが必要かが見えないまま上限を決めることになる。

第1段階:利用状況を見える化する。開発者・チームごとに、どのモデルをどれだけ使っているか、Fastモードのような割高な使い方がどれだけあるかを把握する。

第2段階:作業の種類とモデルを対応させる。「要件が明確な実装」「標準的な設計・文書」「高度な判断」程度に作業を分け、それぞれの推奨モデルを決める。LegalOnでAID CoEが担った役割を、社内の技術リードや開発責任者が担う形になる。

第3段階:上限と例外の手順を決める。部門・個人の月の上限と、割高なモードを使うときの申請手順を決める。新規事業と既存事業で予算の考え方を変えるのも一案だ。上限は最初から厳しくせず、実績を見ながら調整するのが現実的だ。

注意点もある。モデルの顔ぶれは入れ替わりが速く、LegalOnが使い分けているGPT-6 Luna・GPT-6.1 Sol・GPT-6 Astraも現時点のラインナップにすぎない。ガイドラインをモデル名で書くと、更新のたびに作り直しになる。「要件が明確な実装には軽量モデル」のように、作業の種類で書いておくほうが長持ちする。

Codexの料金体系そのものはChatGPTのCodexの料金と使い方、他のコーディングAIとの違いはClaude CodeとCodexの比較で整理している。


参考文献

監修

河合 継(クリスタルメソッド株式会社 代表取締役)

AI・ディープラーニングに関する特許16件の発明者。過去、国立がん研究センターとの共同研究や、テレビ番組でのAI解説実績を持つAI研究者として、AIの研究開発を主導している。
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