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Linuxカーネルmlx5eにCVE-2026-99079——CVSS9.8、修正版へ更新を

Linux脆弱性CVE-2026-99079——重大度9.8・mlx5eのバッファ二重解放と修正版

CVE-2026-99079とは——mlx5eで何が起きたか

2026年10月23日、Linuxカーネルの採番機関(CNA)によりCVE-2026-99079が採番・公開された(最終更新:2026年10月24日)。対象はLinuxカーネルのネットワークドライバnet/mlx5eであり、CVSSスコアは9.8(CRITICAL)と評価されている(評価者:Linux、CVSS:3.1/AV:N/AC:L/PR:N/UI:N/S:U/C:H/I:H/A:H)。

この脆弱性の核心は、XSK(AF_XDPソケット向けのゼロコピーバッファ管理機構)におけるバッファの二重解放にある。ネットワーク認証不要・ユーザー操作不要・特権不要という攻撃条件の軽さがCVSSスコアを押し上げており、機密性・完全性・可用性のいずれへの影響も「高」と評価されている。

2026年11月1日時点のEPSS(悪用確率の統計的推定)は0.455%(パーセンタイル:0.395)であり、CISAのKEV(既知悪用脆弱性カタログ)への掲載は確認されていない。(出典:CVE-2026-99079 | cve.org)。

同じmlx5eドライバーにある別の欠陥は、mlx5eのCVE-2026-99078で解説しています。

関連記事Linuxカーネルlibiscsiに脆弱性CVE-2026-99154——修正版へ更新を

Linux脆弱性CVE-2026-99079の技術的背景——バッファ二重解放が起きる仕組み

AF_XDPソケットを使ったXDPリダイレクトが、RXリング(受信キュー)のフル状態により失敗すると、XSKコアはそのバッファを解放する。レガシーの巡回RQ(Receive Queue)のバッチ再充填処理において、mlx5eはWQE(Work Queue Entry)のXSKバッファを代替バッファの割り当て前に解放していた。

再充填が部分的にしか成功しない場合、代替が割り当てられなかったWQEは古いバッファポインタを保持したままになる。そのバッファは他のWQEに割り当てられる可能性があり、その後の再充填リトライで古いポインタ経由で使用中のバッファが解放される。結果として、同一のUMEMフレームが二重に公開(double-free)される状態が発生する。

特筆すべきは、この不具合が無音で発生する点だ。カーネル警告(WARNING)もスプラット(Oopsやpanic出力)も生成されないため、通常の監視では発覚しにくい。CVE公式記録に示された再現環境の計測では、64バイトのUDPトラフィックを12Mppsで送出するレガシー巡回RQ・ゼロコピーlibxsk環境において、修正前は4.094秒間で2,854,914パケット処理後に停止し、xdp_rx_ring_fullイベントが4,542回、所有権・二重公開エラーが64回発生した(出典:CVE-2026-99079 | cve.org)。

CVE-2026-99079 バッファ二重解放の発生フローXDPリダイレクト失敗RXリングがフルXSKコアがバッファを解放(代替割当の前)WQEが古いバッファポインタを保持したまま残存再充填リトライが古いポインタで解放 → 二重解放(Double Free)同一UMEMフレームが二重に公開警告なし・無音で処理が停止【修正】解放直後にWQEを解放済みとマーク代替バッファ割当時にフラグをクリア → 二重解放を防止
図:CVE-2026-99079における二重解放の発生フロー(青:正常処理の崩れ、赤:問題発生、緑:修正の適用点)。XDPリダイレクト失敗時に代替バッファ割当前に解放が走ることが問題の起点。

Linux脆弱性CVE-2026-99079の影響バージョンと修正版

CVE公式記録(cve.org)に基づく影響範囲と修正版は以下の通りだ。

バージョン系列 状態 備考
6.4以降(各系列の修正版より前) 影響あり(affected) 対象バージョン
6.4未満 影響なし(unaffected) 本脆弱性の対象外
6.6.160以降(6.6系) 修正済み(unaffected) 6.6.160〜6.6.*
6.12.113以降(6.12系) 修正済み(unaffected) 6.12.113〜6.12.*
6.18.57以降(6.18系) 修正済み(unaffected) 6.18.57〜6.18.*
7.2.11以降(7.2系) 修正済み(unaffected) 7.2.11〜7.2.*
7.3以降 修正済み(unaffected) 7.3で修正

上記はLinuxカーネル開発元(上流)のバージョン番号であり、Ubuntu・RHEL・Debian・SUSEなど各Linuxディストリビューションが配布するカーネルパッケージのバージョン番号とは対応しない。配布パッケージの修正状況は、各ディストリビューションのベンダーが発行するセキュリティ告知で判断する必要がある。

日本の企業・運用担当者が今取るべき行動

今やること(3点):

  1. 修正版への更新: 6.4以降で、上の表の修正版より前のカーネルを使用している場合は、使用しているディストリビューションのベンダーの告知に示された修正版パッケージへ更新する。
  2. 修正の内容: 本脆弱性は、ドライバ側での解放直後にWQEを解放済みとマークし、代替バッファ割り当て時にそのフラグをクリアすることで修正された。修正後の計測では、30秒間で356,904,225パケットを処理し、xdp_rx_ring_fullイベントが571,405回発生したが、所有権エラー・データエラーは発生しなかった(出典:cve.org)。
  3. 公式の回避策: CVE説明の範囲では、ベンダーが公式に示した回避策は確認されていない。

自社の機器が対象かどうかの判断や、すでに侵入されていないかの確認は、構成やログを見ないと判断できません。


参考文献

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河合 継(クリスタルメソッド株式会社 代表取締役)

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