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AI天気予報とは?仕組み・精度・主なモデルと従来の予報との違い【2026年】
文:クリスタルメソッド編集部 監修:河合 継(代表取締役)

結論:AI天気予報とは、過去の大量の気象データから「今の大気の状態から次にどうなるか」のパターンを機械学習で学び、予報を出す方法だ。スーパーコンピューターで物理法則を計算する従来の数値予報に比べて、桁違いに速く、少ない電力で計算できる。欧州中期予報センター(ECMWF)は2025年からAIモデルを正式運用しており、台風の進路など多くの指標で従来モデルを最大20%上回ったと発表している。一方で、台風の強さの予測や細かい地域の予報には課題が残っており、現時点では「従来の予報に置き換わる」のではなく「併用して精度を上げる」段階にある。
AI天気予報とは?従来の数値予報との違い
従来の天気予報の中心は「数値予報」だ。観測データから今の大気の状態を作り、流体力学や熱力学の方程式をスーパーコンピューターで解いて、数時間後・数日後の大気を計算する。精度は高いが、計算に大きな計算機資源と時間がかかる。
AI天気予報(AI気象モデル)は、方程式を解く代わりに、過去数十年分の気象の記録(再解析データなど)から「ある時点の大気が、次の時点でどう変わるか」を学習する。学習を終えたモデルは、予報を出すときの計算がずっと軽い。ECMWFによると、同センターのAIモデル「AIFS」は物理ベースのシステムより10倍以上速く予報を作り、予報1回あたりの消費電力はおよそ1,000分の1になる。
ただし、多くのAIモデルは「予報の出発点となる今の大気の状態」を、従来の物理ベースの仕組み(データ同化)で作ったデータに頼っている。ECMWFのアンサンブル版AIモデルも、初期値は物理ベースのデータ同化で作ると明記している。AIは数値予報を不要にするものではなく、その上に乗って速さと精度を足す存在と考えるとわかりやすい。機械学習そのものの仕組みは機械学習とはで解説している。
関連記事【入門】機械学習とは?種類やアルゴリズムをわかりやすく解説! / ディープラーニング(深層学習)とは何か?機械学習との違い等をわかりやすく解説します! / 生成AIの活用事例2026|業務別の導入例と効果
実用化されている主なAI気象モデル
2025〜2026年にかけて、AI気象モデルは研究段階から実際の運用に入った。主なものを、各機関の公式発表をもとに整理する。
| モデル(開発した組織) | 特徴 | 状況 |
|---|---|---|
| AIFS Single(ECMWF) | 1本の予報を出す版。格子間隔28km。風・気温から雪・雨の区別まで扱う | 2025年2月25日に正式運用。リアルタイム予報の一部は無料の公開データ(CC BY 4.0) |
| AIFS ENS(ECMWF) | 少しずつ条件を変えた51本の予報を同時に出す「アンサンブル」版。解像度は31km(物理ベース版は9km) | 2025年7月1日に正式運用 |
| WeatherNext 3(Google DeepMind・Google Research) | 静止気象衛星の画像をリアルタイムで取り込み、1時間ごとに新しい全球予報を出す。気温・湿度は5km、風速などは25km | 2026年9月3日発表。Google検索・Gemini・Googleマップ、Google Maps PlatformのWeather API、Google Cloudに組み込み |
| PBC(確率的バイアス補正)(Microsoftほか) | 新しい予報モデルではなく、既存モデルのクセ(系統的な誤差)を機械学習で補正する。2〜6週間先の予報が対象で、CPUだけで動く | 2026年10月14日にNature誌で論文公開、オープンソース化 |
Google「WeatherNext 3」:衛星データを直接学ぶ
Googleによると、これまでの多くのAI気象モデル(前の版のWeatherNext 2を含む)は数値予報の出力で学習しており、その数値予報には約6時間のデータの遅れがある。WeatherNext 3は静止気象衛星の1時間ごとの画像と、各地の気象観測所のデータを直接学習に使うことで、急に発達する雨雲や局地的な気温差を捉えやすくした。前の版は25km格子・6時間刻みだったので、空間の細かさはおよそ5倍になったとしている。風力発電向けに高さ100mの風速、太陽光発電向けに雲量と日射量の予報も加えた。
Microsoft「PBC」:既存モデルの誤差を直す
2週間より先になると、物理ベースでもAIでも予報の信頼性は落ちる。Microsoftの研究者らが発表したPBCは、予報モデルが持つ系統的な誤差(たとえば、温暖化が進む前の記録で学んだために実際より寒めに予報するクセ)を機械学習で見つけて補正する。The Vergeの報道によると、ECMWFの物理ベースモデルでは降水の目標の98%、気温の目標の92%で精度が上がり、ECMWFのAIモデルでは精度がおよそ2倍になった。スーパーコンピューターやGPUを持たない途上国の気象機関でも使える点を、研究者らは強みに挙げている。
AIで天気予報はどれくらい当たるようになったのか
各機関の発表をまとめると、改善の幅は次のとおりだ。いずれも各社・各機関自身の評価で、比べる相手や指標がそれぞれ違うため、数字どうしを直接比べることはできない。
- ECMWF AIFS Single:台風の進路など多くの指標で、最新の物理ベースモデルを最大20%上回る。
- ECMWF AIFS ENS:地上気温など多くの指標で、物理ベースのアンサンブルを最大20%上回る。
- Google WeatherNext 3:中期の全球予報の降水で、比較対象に対して確率予報の誤差指標(CRPS)が、NASAの衛星降水データ(IMERG)との比較で最大60%、雨量計との比較で10%改善(予報の初めの期間)。Googleは、第三者のBrightbandによる実況評価で最も精度の高い全球モデルだとしている。
日本の気象庁も、AI気象モデルは台風の進路予測で従来の数値予報モデルの精度を上回るようになってきたと説明している。
AI天気予報の苦手なこと・限界
- 台風の強さ:気象庁は、進路の予測ではAIが優れる一方、中心気圧などの強さの予測には課題が残るとしている。
- 細かさ:ECMWFのAIアンサンブルは31kmで、物理ベースの9kmより粗い。ECMWFは、細かい予報や海・陸を合わせた地球システムの計算には物理ベースのシステムが引き続き欠かせないとし、両者を組み合わせる方式も研究している。
- 出発点は従来の仕組み頼み:多くのAIモデルは、初期値を物理ベースのデータ同化で作る。WeatherNext 3のように観測を直接取り込む方式は、この依存を減らす試みだ。
- 判断の理由が見えにくい:気象庁は、AIは処理の過程がブラックボックスになり判断基準を説明しにくいこと、学習に膨大な計算機資源が要ることを課題に挙げている。
- 評価の多くは各社自身:精度の数字の多くは、モデルを作った各社・各機関自身の評価だ。ECMWFの機械学習の責任者も、新しいアイデアを実際の運用に移すことが最も難しい段階だとコメントしている(The Verge)。
日本の気象庁はAIをどう使っているか
気象庁は1970年代から、数値予報の結果を各地点の予報に翻訳する「数値予報ガイダンス」に機械学習を使ってきた。2019〜2023年には理化学研究所 革新知能統合研究センターと共同研究を行い、深層学習を観測・予測に使う知見を得ている。
今後の活用イメージとして気象庁が挙げているのは次の3つだ。
- AI気象モデルと従来モデルの併用などによる予報精度の向上
- 次期ひまわりの新しいセンサーが出す膨大なデータのAI処理
- AIを使った地震観測データの高度利用
あわせて、学習データとしての再解析データ・衛星データの活用、AI計算に適したスーパーコンピューターの整備、産学官の連携を進めるとしている。
企業はAI天気予報をどう使えるか
天気の影響を受ける業種ほど、AI予報の速さと細かさを活かしやすい。各機関が挙げている使い道は次のとおりだ。
- 再生可能エネルギー:ECMWFは地表の日射量や風車の高さの風速の予測に、Googleは高さ100mの風速と雲量・日射量の予報に触れ、発電量の見通しと需要の突き合わせに使えるとしている。
- エネルギー価格・保険・物流:ECMWFは、中期予報が意思決定に効く分野として、エネルギーの価格予測、保険、海運を挙げている。
- 農業・防災:Microsoftの研究者らは、2〜6週間先の予報が農家や緊急対応の計画に役立つとしている。
データの入手先としては、ECMWFがAIFSのリアルタイム予報の一部を無料の公開データ(CC BY 4.0ライセンス、出典の表示で商用利用も可)として出している。GoogleはWeatherNext 3の予報をGoogle Maps PlatformのWeather APIとGoogle Cloudで提供している。日本国内の業務で使う場合、警報・注意報など防災の公式情報は気象庁が出すものなので、AI予報は自社の計画づくりの参考として、気象庁の情報と組み合わせて使うのが基本になる。
よくある質問
AI天気予報は従来の予報より当たりますか?
多くの指標で上回ったという発表が続いている。ECMWFのAIFSは台風の進路などで最大20%、Googleは降水で大きな改善を報告している。ただし台風の強さの予測など、まだ従来の手法が強い分野もある。
AIで天気予報士はいらなくなりますか?
現時点では、各機関ともAIを従来の予報と「並べて」使う形をとっている。ECMWFはAIモデルを物理ベースのシステムと併走させ、気象庁も数値予報とAIの併用を掲げている。結果を読み解き、防災情報として伝える役割は残る。
AI天気予報は個人でも見られますか?
GoogleはWeatherNext 3をGoogle検索・Gemini・Googleマップの天気情報に組み込んでいる。ECMWFのAIFSのリアルタイム予報の一部も無料の公開データとして入手できる。
参考文献
- ECMWF「ECMWF’s AI forecasts become operational」2025年2月25日
- ECMWF「ECMWF’s ensemble AI forecasts become operational」2025年7月1日
- Google「Introducing WeatherNext 3」2026年9月3日
- The Verge「Microsoft has a new machine learning tool to improve weather forecasts」2026年10月14日
- ECMWF「Open data」
- 気象庁「気象庁におけるAIの活用」
監修
河合 継(クリスタルメソッド株式会社 代表取締役)
AI・ディープラーニングに関する特許16件の発明者。過去、国立がん研究センターとの共同研究や、テレビ番組でのAI解説実績を持つAI研究者として、AIの研究開発を主導している。
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