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オープンソースLLM 一覧・比較|主要モデルを徹底解説【2026年版】

オープンソースLLMとは何か:クローズドモデルとの本質的な違い

オープンソースLLMとは、モデルの重み(パラメータファイル)とアーキテクチャが公開されており、誰でもダウンロードして自前の環境で動かせる大規模言語モデルです。OpenAIのGPT-4oやAnthropicのClaudeのように「APIを通じてのみ使える」クローズドモデルとは根本的に異なります。

ただし「オープンソース」の定義にはモデルによって幅があります。完全にオープンなモデル(重み・データ・コードすべて公開)から、重みのみ公開されているモデル、商用利用に制限があるモデルまで実態はさまざまです。導入前にライセンスの精査は必須作業です。

比較項目 オープンソースLLM クローズドLLM(例:GPT-4o)
重みの入手 直接ダウンロード可能 非公開・APIのみ
実行環境 自社サーバー・ローカルPC・オンプレ 提供元クラウドのみ
データプライバシー 外部送信ゼロが実現可能 プロンプトがAPIに送信される
ランニングコスト インフラ費のみ(トークン課金なし) トークン消費量に比例
ファインチューニング 自由に実施可能 fine-tuning APIの範囲内に限定
カスタマイズ自由度 量子化・アーキテクチャ改変まで可能 プロンプト・パラメータ調整のみ
最新性・更新管理 自己管理が必要 プロバイダーが自動更新
商用利用 ライセンスによって異なる 利用規約に従う

特に機密データを扱う金融・医療・法律・官公庁分野、あるいは独自ドメインへの深いカスタマイズが必要な場面では、オープンソースLLMの採用メリットが際立ちます。

オープンソースLLM 主要モデル一覧(2025〜2026年版)

以下に、2025〜2026年時点で実用的に使われている主要なオープンソースLLMを網羅的に一覧化します。開発元・パラメータ規模・コンテキスト長・ライセンス・商用利用可否・主な特徴を整理しています。

モデル名 開発元 代表サイズ コンテキスト長 ライセンス 商用利用 主な特徴
Llama 3.x / Llama 4 Meta 8B / 70B / 405B / Scout等 128K tokens Llama Community License ○(MAU7億未満) 汎用性・エコシステムの広さで業界標準的存在
Mistral 7B / Mixtral 8x7B / 8x22B Mistral AI 7B〜141B(MoE) 32K〜64K tokens Apache 2.0(Mistral 7B・Mixtral) 小規模でも高性能、MoEによる効率的推論
Mistral Large 2 Mistral AI 123B 128K tokens Mistral Research License(MRL) △(競合制限あり) HumanEval92点、コード・多言語に強み
Gemma 3 Google DeepMind 1B / 4B / 12B / 27B 128K tokens Gemma Terms of Use 軽量・マルチモーダル対応、Google連携に強み
Qwen2.5 / Qwen3 Alibaba Cloud 0.5B〜72B(MoE版235B) 128K tokens Apache 2.0 日本語・中国語など多言語対応、コード・数学に特化版あり
DeepSeek-V3 / R1 DeepSeek AI 671B(MoE:実効37B) 128K tokens MIT準拠(R1)/ DeepSeek独自(V3) 推論特化(R1)、GPT-4o相当性能、コスト効率が高い
Phi-4 / Phi-4-mini Microsoft 3.8B / 14B 16K tokens MIT 小規模高性能、エッジデプロイ向け、教育データ活用
Command R / R+ Cohere 35B / 104B 128K tokens CC-BY-NC(非商用) △(非商用のみ) RAG特化・ツール使用・ビジネス文書に強み
Falcon 2 / Falcon 180B TII(UAE) 11B / 180B 4K tokens Apache 2.0(Falcon 2)/ Falcon License(180B) ○(条件付き) 完全商用可、多言語、大規模モデルの選択肢
OLMo 2 Allen Institute for AI(AI2) 7B / 13B 4K tokens Apache 2.0 データ・コード・重みすべて公開の完全学術オープンモデル
BLOOM / BLOOMZ BigScience 176B BigScience RAIL △(特定用途禁止) 46言語対応、研究向けの大規模多言語モデル
Yi-1.5 / Yi-34B 01.AI 6B / 9B / 34B 最大200K tokens Apache 2.0 英中バイリンガル高性能、長コンテキスト対応
InternLM 2.5 Shanghai AI Lab 7B / 20B 最大1M tokens InternLM独自(商用可) 数学・ツール使用・長文脈に優れた中国発モデル
EXAONE 3.5 LG AI Research 2.4B / 7.8B / 32B 32K tokens EXAONE AI Model License ○(条件付き) 日本語・韓国語・英語の3言語特化、ビジネス文書向け
Swallow(東工大系) 東京工業大学ほか 7B / 70B(Llamaベース) 128K tokens Llama Community License ○(条件付き) 日本語継続事前学習、国内企業・研究向け日本語特化版
Solar / Vicuna / Alpaca Upstage / UC Berkeley / Stanford 10.7B / 7〜13B Apache 2.0(Solar)/ 非商用(Vicuna・Alpaca) Solar:韓国語・日本語対応。Vicuna・Alpaca:初期研究向けFTモデル

注目モデルの詳細解説

Meta Llama シリーズ

Metaが開発するLlamaシリーズは、オープンソースLLMエコシステムの中心的存在です。2024年にリリースされたLlama 3以降、8BモデルでもGPT-3.5を超える性能を示し、2025〜2026年にかけてリリースされたLlama 4では、Scout(長コンテキスト特化)やMaverick(汎用高性能)など複数のバリアントが提供されています。

Llama系モデルはOllama・LM Studio・vLLM・Hugging Face Transformersなど主要な推論フレームワークすべてに対応しており、ファインチューニングの知見やツールが最も充実している点が強みです。ただしライセンスは独自規約で、月間アクティブユーザーが7億人を超える場合はMetaの事前承認が必要であり、大規模BtoCサービスへの組み込みでは規模拡大時の条件を事前に把握しておく必要があります。

Mistral AI / Mixtral シリーズ

フランスの新興企業Mistral AIが開発するモデル群は、Apache 2.0ライセンス(初期モデル群)での完全商用利用可能な点と、小規模でも高い性能比を誇る点で人気があります。

Mixtral 8x7BはMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用し、実際に動かす際のパラメータ数を13B相当に抑えながら、47Bクラスの性能を発揮します。Mixtral 8x22Bは英語・フランス語・イタリア語・ドイツ語・スペイン語での多言語性能に優れます(日本語はやや弱め)。一方、Mistral Large 2(123B)はHumanEvalで92点を記録しコード生成でも高い評価を得ていますが、ライセンスがMRL(Mistral Research License)に変更されており競合サービスへの組み込みに制限があります。

DeepSeek-V3 / R1

中国のDeepSeekが2024〜2025年にリリースしたモデルは、業界に大きな衝撃を与えました。DeepSeek-R1はMIT準拠ライセンスで公開された推論特化モデルで、数学・コーディング・論理推論においてOpenAI o1と同水準の性能を、はるかに低いコストで実現しています。

MoEアーキテクチャにより671Bのパラメータを持ちながら、推論時には一部のエキスパートのみが活性化されるため実効計算量(約37B相当)は大幅に削減されます。また、蒸留版(1.5B〜70B)も公開されており、小規模環境でも高い推論性能を享受できます。ただし学習データの詳細が不透明な部分があり、機密情報を扱う企業ではデータ処理ポリシーの整備が別途必要です。

Google Gemma 3

GoogleがGeminiの知見を活かして開発した軽量オープンモデルです。1B・4B・12B・27BのサイズラインナップとマルチモーダルはTeキスト+画像)への対応が特徴です。特に27BモデルはGPT-4oに匹敵するとされるベンチマークスコアを記録しており、A100 80GB×1枚で動かせる点がエンタープライズで評価されています。Google ColabやVertex AIとのシームレスな連携も強みですが、Gemma利用規約にはApache 2.0より制約が多い箇所があるため、サービス組み込みの際は規約全文の確認が必要です。

Alibaba Qwen シリーズ

AlibabaのQwenシリーズは、特に日本語・中国語・韓国語・アラビア語など多言語性能においてトップクラスを維持しています。コード生成特化の「Qwen2.5-Coder」や数学特化の「Qwen2.5-Math」など用途別サブモデルも充実しており、0.5Bという超軽量モデルから72Bまでのレンジがあり、エッジからクラウドまで幅広くカバーできます。Apache 2.0ライセンスで商用利用しやすい点も評価されていますが、中国企業製のため規制業種では社内ガバナンスポリシーの確認が必要なケースがあります。

Microsoft Phi シリーズ

Microsoftが「小さく賢く」を追求して開発するPhiシリーズは、合成データを主体とした高品質なトレーニングによって同サイズ帯では際立った推論・数学性能を発揮します。Phi-4(14B)はMITライセンスで制約が最も少ない部類に入り、シングルGPUでのデプロイが容易です。ただしコンテキスト長が16Kと短めのため、長文ドキュメント処理が主要タスクとなる場合は他のモデルとの比較検討が必要です。

ベンチマーク比較:数値で見る性能差

LLMの性能評価には複数のベンチマークが使われます。以下は2025年時点での代表的な公開スコアをまとめたものです。数値は各モデルの公式発表・論文・オープンベンチマークリーダーボードに基づく目安であり、測定条件によって変動します。

モデル MMLU
(知識・推論)
HumanEval
(コード)
MATH
(数学)
MT-Bench
(会話)
コンテキスト長
GPT-4o(参考:クローズド) 88.7 90.2 76.6 9.2 128K
DeepSeek-R1(671B) 90.8 92.6 97.3(推論モード) 128K
DeepSeek-V3 88.5 89.1 75.9 9.0 128K
Llama 3.1 405B 88.6 89.0 73.8 8.9 128K
Llama 3.3 70B 86.0 85.1 77.0 8.8 128K
Llama 3.1 70B 約83% 約80% 約93% 128K
Qwen 2.5 72B 86.1 86.7 83.1 8.8 128K
Mistral Large 2(123B) 84.0 92.0 76.4 8.6 128K
Phi-4(14B) 84.8 82.6 80.4 8.3 16K
Gemma 3 27B 83.2 77.2 68.0 8.4 128K
Mixtral 8x22B 77.8 75.2 41.8 8.1 64K
Mixtral 8x7B 約70% 約54% 32K
Llama 3.1 8B 約73% 約72% 約84% 128K
Mistral 7B v0.3 64.2 30.5 13.1 7.6 32K

数値から読み取れる重要なポイントは、DeepSeek-R1の数学スコアが突出して高い点(MATHで97.3)と、Qwen 2.5 72BがMATHベンチマークでLlamaシリーズを上回る点です。一方、日常会話・文章生成(MT-Bench)では大きな差がつきにくく、小型モデルでも十分な品質が出る場合があります。ベンチマークはあくまで参考値であり、最終的には自社の実データ・実タスクでの評価が最も重要です。

ライセンス形態の詳細比較

オープンソースLLMのライセンスは、商用利用可否や制限事項に直結するため、選定時に必ず確認が必要です。

ライセンス種別 代表的なモデル 商用利用 改変・再配布 主な制限・注意点
Apache 2.0 Mistral 7B・Mixtral各種・Qwen2.5・Falcon 2・Yi-1.5・OLMo 2 著作権表示・LICENSEファイルの同梱が必要。特許条項の明示あり
MIT DeepSeek-R1・Phi-4 著作権表示の維持のみ。最も制約が少ない部類
Llama Community License Llama 3.x / 4・Swallow等派生 ○(条件付き) ○(条件付き) MAU7億超は要Meta申請・「Llama」を製品名に使用不可
Gemma Terms of Use Gemma 2 / 3 Googleサービスとの競合用途に制限あり。規約全文確認が必要
Mistral Research License(MRL) Mistral Large 2 研究・非商用・個人利用は可。競合AIサービスへの組み込みは禁止
CC-BY-NC Command R / R+(基本版) ○(非商用) 非商用のみ。商用製品には使用不可・別途商用契約が必要
BigScience RAIL BLOOM 軍事・詐欺等の特定用途の使用を禁止
独自商用ライセンス DeepSeek-V3・InternLM・EXAONE ○(規約確認要) 各社規約に準拠。詳細は最新の公式ドキュメントを参照

完全に制約が少ない商用利用を求めるなら、Apache 2.0またはMITライセンスのモデルが最も扱いやすい選択肢です。また、モデルが「どこで学習したデータを使っているか」の確認も重要です。著作権保護コンテンツや個人データが混入していた場合のリスクは、ライセンスとは別に事業者が負うことになります。OLMo 2のようにデータセットも完全公開しているモデルは、この観点でリスクが最も低いといえます。

用途別・おすすめモデル選定ガイド

モデル選定は「最高スコアのモデルを選ぶ」ではなく、ライセンス・インフラ制約・言語要件・タスク特性・エコシステム成熟度の交点で決めることが重要です。主な用途と推奨モデルを以下に整理しました。

用途・シーン 第一候補 代替候補 選定理由
日本語チャットボット・社内QA・カスタマーサポート Qwen 2.5 72B Llama 3.1 70B(日本語FT版) アジア言語精度が高く128Kトークンで長い会話履歴にも対応
コード生成・開発支援 DeepSeek-V3 / Mistral Large 2 Qwen2.5-Coder 32B HumanEvalスコアが90前後。コード補完・バグ修正に実績あり
数学・論理推論・科学的推論 DeepSeek-R1 Qwen 2.5-Math 72B 思考連鎖モードで複雑な推論ステップを可視化できる
RAG(検索拡張生成)・長文書解析 Llama 3.1 70B Command R+・Gemma 3 27B 128Kトークン対応。LangChain等エコシステムが成熟
エッジ・モバイル・リソース制約環境 Phi-4-mini / Gemma 3 4B Qwen2.5 0.5B〜7B 軽量・高性能・MIT / 商用可。量子化でCPUのみでも動作可能
多言語対応グローバルサービス Mixtral 8x22B Qwen 2.5 72B 欧州主要5言語での高品質出力。Apache 2.0で商用利用しやすい
研究・完全再現性確保 OLMo 2 データ・コード・重みすべてApache 2.0で公開。再現性研究に最適
コスト最優先・低スペックGPUでの運用 Mistral 7B Gemma 3 4B 4〜8GB VRAMで動作。量子化版ならCPUのみのサーバーでも稼働
大規模推論・エンタープライズ本番 Llama 4 Maverick / DeepSeek-V3 Llama 3.1 405B 最高水準の性能、大規模展開での実績

VRAMによる実用的な選定基準

VRAM 8GB以下
Mistral 7B(Q4量子化)
Gemma 3 4B
Qwen 2.5 7B(Q4)
Phi-4-mini

VRAM 16〜24GB
Phi-4 14B
Gemma 3 12B
Mistral 7B(フル精度)
Llama 3.1 8B

VRAM 40〜80GB(A100×1)
Gemma 3 27B
Llama 3.1 70B(Q4)
Qwen 2.5 32B
Mixtral 8x7B

GPUクラスタ(A100×複数)
Llama 3.1 405B
DeepSeek-V3(フル)
Falcon 180B
Command R+ 104B

日本語対応オープンソースLLMの現状

日本語処理の品質は、日本市場での実用化において重要な評価軸です。2025〜2026年時点で日本語対応が優れるとされるオープンソースLLMを整理します。

モデル 日本語対応の特徴 主な用途
Qwen2.5 / Qwen3(72B) 日本語ベンチマーク上位、トークナイザーが日本語に最適化済み 汎用・チャット・翻訳・要約
EXAONE 3.5(LG AI Research) 日本語・韓国語・英語の3言語特化、7.8B軽量モデルも提供 ビジネス文書・カスタマーサポート
Swallow(東工大系) LlamaベースのJapanese継続事前学習モデル。日本語コーパスで追加学習 研究・国内企業利用
Llama 3.1 70B(日本語LoRA版) コミュニティによる日本語ファインチューニング版が複数存在 汎用・社内QA
DeepSeek-V3 / R1 中国語・英語主体だが日本語性能も高水準。推論タスクで特に有効 推論・コード生成

日本語に特化したファインチューニングを行う場合は、llm-jp(国立情報学研究所)が公開しているデータセットや評価基準(llm-jp-eval)の活用も有効です。国内ではcyberagent・NICT・LLM-jp・SakuraなどがLlama / Qwenをベースにした日本語強化版を公開しており、選択肢は急速に拡大しています。

デプロイ・推論フレームワークの選び方

オープンソースLLMを実際に動かすには、推論フレームワークの選定が実運用の品質を左右します。代表的な選択肢を整理します。

ツール / サービス 特徴 向いているシーン
Ollama 1コマンドでLLMをローカル起動。macOS / Linux / Windows対応 個人・開発用途・プロトタイプ
llama.cpp CPU推論対応。GGUF量子化形式で小メモリ動作。C++実装で高速 GPU非搭載サーバー・エッジデプロイ
vLLM PagedAttentionによる高スループット推論。OpenAI互換API提供 本番API提供・高並列アクセス
TGI(Text Generation Inference) Hugging Face製。Tensor Parallelismで多GPU分散推論 大型モデルの本番デプロイ
LM Studio GUIでモデル管理・テスト。Windows / Mac対応 非エンジニアの評価・デモ
Together AI / Replicate オープンソースモデルをAPIとして利用(クラウド) GPUを持たずAPIコストを抑えたい場合
AWS SageMaker / Azure ML マネージド環境でのファインチューニング・デプロイ エンタープライズ・既存クラウド資産活用

ファインチューニングと量子化:カスタマイズの基本

ファインチューニングの主な手法とツール

オープンソースLLMの大きな優位点は、自社データで追加学習できることです。代表的な手法を整理します。

  • フルファインチューニング:全パラメータを更新。最高品質が得られるが、GPUコストと時間が大きい。405B級では現実的でない場合が多い
  • LoRA(Low-Rank Adaptation):差分行列のみを学習。元の重みは変えずに済むため少ないVRAMで実施可能。Hugging Face PEFTライブラリで実装
  • QLoRA:LoRAをNF4量子化と組み合わせ。24GB VRAMでも65B〜70Bのファインチューニングが可能になる手法
  • DPO(Direct Preference Optimization):RLHFより簡便に人間の好みや企業ルールに沿ったアウトプットを学習させる手法

ファインチューニングを実施する際の代表的なツールとしては、UIベースで多様なモデルのSFT・LoRA・DPOに対応するLLaMA-Factory、設定ファイルベースの柔軟なフレームワークで大規模学習に対応するAxolotl、LoRAを高速化し同等VRAMで約2倍の速度を実現するUnsloth、Hugging Face公式のRLHF・DPO学習ライブラリであるTRLなどが広く使われています。

量子化:メモリと精度のトレードオフ

量子化とはモデルの重みをFP32/FP16から低ビット表現に変換してVRAM使用量を削減する技術です。llama.cpp形式(GGUF)のQ4_K_Mは性能劣化が数%程度に抑えられており、実用上最も普及しています。

量子化方式 ビット数 サイズ削減率(概算) 性能劣化
FP16(ベースライン) 16bit なし
INT8 / GPTQ 8bit 8bit 約50%削減 わずか(〜1%)
Q4_K_M(GGUF) 4bit(混合) 約75%削減 小(1〜3%)
Q3_K_S(GGUF) 3bit 約80%削減 中(3〜7%)
Q2_K(GGUF) 2bit 約85%削減 大(顕著な品質低下)

セキュリティ・プライバシー観点での導入判断

オープンソースLLMをオンプレミスやプライベートクラウドで動かす最大の動機の一つが、データを外部に送らないプライバシー保護です。医療・法務・金融・官公庁などの領域では個人情報保護法・GDPRへの準拠と情報漏洩リスクの排除が義務的要件となります。

ただし、自己管理には以下の点をリスクとして認識しておく必要があります。

  • 脆弱性管理:推論フレームワーク・コンテナ・OS全体のセキュリティパッチを自組織で適用しなければならない
  • プロンプトインジェクション:悪意あるプロンプトによる挙動操作のリスク。入力バリデーションと出力サニタイズが必要。Llama Guardなどの安全性評価モデルとの組み合わせが有効
  • モデル学習データの残留リスク:一部のモデルでは学習データから特定の個人情報が抽出されうることが研究で示されている
  • アクセス制御:APIエンドポイントへの認証・認可を適切に実装しないと、内部ネットワークからの無制限アクセスが発生し得る
  • ハルシネーション(幻覚):クローズド・オープン問わず現時点のLLM全般の課題。事実確認が必要な用途ではRAGやグラウンディング技術との組み合わせが不可欠。医療・法律・金融では生成テキストの人間によるレビューフローの設計が必要

オープンソースLLMの選定フロー

実際にモデルを選ぶ際の判断の流れを整理します。ベンチマークを参考にしつつも、最終的には自社の実データ・実タスクでの評価が最も重要です。汎用ベンチマークで高スコアのモデルが、特定の専門分野タスクで必ずしも最適とは限りません。

① 用途の明確化
チャット / コード
RAG / 数学推論
② ライセンス確認
商用可否・条件
データリスク
③ インフラ制約確認
GPU VRAM
CPU only / エッジ
④ ベンチマーク比較
タスク別スコア
言語対応確認
⑤ 実データで評価
候補2〜3モデル
を実タスクでテスト

2025年以降のオープンソースLLMのトレンド

オープンソースLLMの進化は2025年以降も加速しています。注目すべき方向性を整理します。

  • 小型化と高性能化の両立:Phi-4やGemma 3が示すように、10〜30B規模でも以前の70B相当の性能を出すモデルが増加しており、エッジデプロイの実用性が急上昇している
  • 推論型モデル(Reasoning Model)の普及:DeepSeek-R1がオープンソースで実現したことを契機に、思考連鎖(CoT)を内蔵したモデルが各社から登場。複雑タスクの精度が大幅向上
  • マルチモーダルの標準化:テキストだけでなく画像・音声・動画入力に対応するオープンモデルが増加。Llama 3.2(Vision)・Gemma 3等が先行
  • MoEアーキテクチャの主流化:DeepSeekとMixtralが実証したMoEの有効性により、大型モデルはMoE採用が当たり前になりつつある
  • 日本語特化モデルの充実:国内ではcyberagent・NICT・LLM-jp・Sakura等がLlama / Qwen等をベースにした日本語強化版を公開しており選択肢が拡大
  • 抽象化レイヤーの重要性:特定モデルへの依存を避け、vLLMやOllamaのような抽象化レイヤーを挟んでモデルを差し替えやすいアーキテクチャの設計が、長期的な運用コスト最小化の最善策となっている

まとめ:オープンソースLLM選びのポイント

オープンソースLLMは、2025〜2026年現在においてクローズドモデルに匹敵する性能水準に達しており、プライバシー保護・コスト最適化・カスタマイズ自由度という三つの観点から企業・研究者にとって有力な選択肢となっています。

モデル選定のポイントを改めて整理すると、以下の通りです。

  • 商用利用の自由度を最優先にするなら:Apache 2.0またはMITのモデル(Mistral 7B・Mixtral・Qwen2.5・Falcon 2・Phi-4・DeepSeek-R1など)
  • エコシステムの充実を重視するなら:Llamaシリーズ(コミュニティ・ツールが最大規模)
  • 推論・コード・数学に特化するなら:DeepSeek-R1またはQwen2.5シリーズ
  • 日本語対応を重視するなら:Qwen2.5 72B・EXAONE 3.5・Swallow
  • 軽量・エッジデプロイなら:Phi-4-mini・Gemma 3 4B・Qwen2.5 0.5〜7B
  • 完全再現性・学術用途なら:OLMo 2
  • 大規模エンタープライズ本番運用なら:Llama 4 Maverick・DeepSeek-V3

オープンソースLLMの分野は進化が非常に速く、3〜6ヶ月ごとに新モデルが既存の常識を塗り替えます。選定したモデルを固定するだけでなく、継続的に最新モデルのベンチマーク動向を追い、抽象化レイヤーを活用してモデルを差し替えやすい設計にしておくことが、長期的な競争力の維持につながります。

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監修

河合 継(クリスタルメソッド株式会社 代表取締役)

AI・ディープラーニングに関する特許16件の発明者。過去、国立がん研究センターとの共同研究や、テレビ番組でのAI解説実績を持つAI研究者として、AIの研究開発を主導している。
運営会社について編集方針

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