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オープンソースLLM 一覧・比較|主要モデルを徹底解説【2026年版】

オープンソースLLM 一覧|主要モデルの仕様・ライセンス・用途を徹底解説【2026年版】

オープンソースLLM 一覧を参照する前に:ライセンスとデータプライバシーの確認が先決

オープンソースLLMの定義・ライセンス・商用利用の基礎はオープンソースLLMとはで解説しています。

オープンソースLLMとは、モデルの重み(パラメータファイル)とアーキテクチャが公開されており、自社インフラ上でそのまま動かせる大規模言語モデルを指す。OpenAIのGPT-5.5やAnthropicのClaudeのようにAPIを通じてのみ利用するクローズドモデルとは、データの流通経路とコスト構造が根本的に異なる。

ただし「オープンソース」の定義には幅がある。重み・学習データ・コードのすべてを公開しているモデルもあれば、重みのみ公開で学習データは非開示のモデル、商用利用に人数制限や競合禁止条項を課すモデルまで実態はさまざまだ。ベンチマークスコアの比較は、ライセンス条件の精査を終えた後の作業となる。

「オープンウェイト」との概念的な違いやライセンス全般の論点については、機械学習の基礎と導入判断と合わせて参照されたい。本記事は各モデルのカタログ情報と実用判断に絞って構成する。

オープンソースLLM vs クローズドLLM:導入判断の比較
比較項目 オープンソースLLM クローズドLLM(例:GPT-5.5)
重みの入手 直接ダウンロード可能 非公開・APIのみ
実行環境 自社サーバー・ローカル・オンプレ 提供元クラウドのみ
データプライバシー 外部送信ゼロが実現可能 プロンプトがAPIに送信される
ランニングコスト インフラ費のみ(トークン課金なし) トークン消費量に比例
ファインチューニング 自由に実施可能 fine-tuning APIの範囲内に限定
カスタマイズ自由度 量子化・アーキテクチャ改変まで可能 プロンプト・パラメータ調整のみ
最新性・更新管理 自己管理が必要 プロバイダーが自動更新
商用利用 ライセンスによって異なる 利用規約に従う

機密データを扱う金融・医療・法律・官公庁、あるいは独自ドメインへの深いカスタマイズが必要な場面では、データを完全に自管理できるという特性が実務上の必須条件になりうる。

オープンソースLLM 一覧:主要モデルの仕様・ライセンス・用途(2025〜2026年版)

2025〜2026年時点で実用的に採用されている主要なオープンソースLLMを網羅的に一覧化する。JST科学技術振興機構の2026年3月報告によれば、Qwen 3.5がオープンソースLLMの最新ランキングで首位を記録しており、Alibabaシリーズの台頭が顕著となっている(spap.jst.go.jp)。また、産業技術総合研究所(AIST)は2024年10月、Llama 3.1をベースに日本語能力を強化した「Llama 3.1 Swallow」を東京科学大学と共同開発・公開したことを発表しており、国内向けの選択肢も広がっている(aist.go.jp)。

オープンソースLLM 主要モデル一覧(2025〜2026年版)
モデル名 開発元 代表サイズ コンテキスト長 ライセンス 商用利用 主な特徴
Llama 3.x / Llama 4 Meta 8B / 70B / 405B / Scout等 128K tokens Llama Community License ○(MAU7億未満) 汎用性・エコシステムの広さで業界標準的存在。Vision・ToolsバリアントやMoE版も充実
Mistral 7B / Mixtral 8x7B / 8x22B Mistral AI 7B〜141B(MoE) 32K〜64K tokens Apache 2.0(Mistral 7B・Mixtral) 小規模でも高い性能比。MoEによる効率的推論。欧州5言語対応に強み
Mistral Large 2 Mistral AI 123B 128K tokens Mistral Research License(MRL) △(競合制限あり) コード・多言語に強み。ライセンスに競合禁止条項あり。商用組み込みは要確認
Gemma 3 Google DeepMind 1B / 4B / 12B / 27B 128K tokens Gemma Terms of Use ○(規約確認要) 軽量・マルチモーダル(テキスト+画像)対応。Google Vertex AIとの連携に強み
Qwen2.5 / Qwen3 Alibaba Cloud 0.5B〜72B(MoE版235B) 128K tokens Apache 2.0 日本語・中国語など多言語性能でトップクラス。コード・数学特化サブモデルあり。JSTランキング首位(2026年3月)
DeepSeek-V3 / R1 DeepSeek AI 671B(MoE:実効約37B) 128K tokens MIT準拠(R1)/ DeepSeek独自(V3) 推論特化(R1)。MoEによる高コスト効率。蒸留版(1.5B〜70B)も公開
Phi-4 / Phi-4-mini Microsoft 3.8B / 14B 16K tokens MIT 合成データ主体の高品質学習。エッジデプロイ向け。MITで制約が最小
Command R / R+ Cohere 35B / 104B 128K tokens CC-BY-NC(基本版) △(非商用のみ) RAG特化・ツール使用・ビジネス文書に強み。商用利用は別途契約が必要
Falcon 2 / Falcon 180B TII(UAE) 11B / 180B 4K tokens Apache 2.0(Falcon 2)/ Falcon License(180B) ○(条件付き) Falcon 2はApache 2.0で完全商用可。多言語対応
OLMo 2 Allen Institute for AI(AI2) 7B / 13B 4K tokens Apache 2.0 データ・コード・重みすべて公開の完全学術オープンモデル。再現性研究に最適
BLOOM / BLOOMZ BigScience 176B BigScience RAIL △(特定用途禁止) 46言語対応の大規模多言語モデル。研究用途向け
Yi-1.5 / Yi-34B 01.AI 6B / 9B / 34B 最大200K tokens Apache 2.0 英中バイリンガル高性能。長コンテキスト対応に強み
InternLM 2.5 Shanghai AI Lab 7B / 20B 最大1M tokens InternLM独自(商用可) ○(規約確認要) 数学・ツール使用・超長文脈に優れた中国発モデル
EXAONE 3.5 LG AI Research 2.4B / 7.8B / 32B 32K tokens EXAONE AI Model License ○(条件付き) 日本語・韓国語・英語の3言語特化。ビジネス文書用途に強み
Llama 3.1 Swallow 産業技術総合研究所・東京科学大学ほか 8B / 70B(Llamaベース) 128K tokens Llama Community License ○(条件付き) 国内研究機関による日本語継続事前学習モデル。AISTが2024年10月に公式発表
Vicuna / Alpaca UC Berkeley / Stanford 7B〜13B 非商用 × 初期の研究向けファインチューニングモデル。現在は主に歴史的参照用

注目モデル各論:提供元・パラメータ規模・ライセンス・実用上の留意点

Meta Llama シリーズ

Metaが開発するLlamaシリーズは、オープンソースLLMエコシステムの中心的存在であり続けている。Llama 3以降、8BモデルでもGPT-3.5を超える性能水準を示し、2025〜2026年にかけてリリースされたLlama 4では長コンテキスト特化のScoutや汎用高性能のMaverickなど複数バリアントが提供されている。

Ollama・LM Studio・vLLM・Hugging Face Transformersなど主要推論フレームワークのほぼすべてがLlamaをファーストクラスでサポートしており、ファインチューニングの知見とコミュニティツールが最も充実している。一方でライセンスは独自規約であり、月間アクティブユーザーが7億人を超える場合はMetaへの事前申請が必要となる。大規模BtoCサービスへの組み込みでは、将来の規模拡大時の条件を導入前に把握しておく必要がある。

国内での日本語対応については後述するSwallowが有力な派生モデルとなる。

Mistral AI / Mixtral シリーズ

フランス発のMistral AIは、Apache 2.0ライセンスでの完全商用利用が可能な初期モデル群と、小規模でも高い性能比で評価を高めた。Mixtral 8x7BはMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用し、推論時の実効パラメータ数を13B相当に抑えながら47Bクラスの性能を発揮する設計だ。Mixtral 8x22Bは英語・フランス語・イタリア語・ドイツ語・スペイン語での多言語性能に優れるが、日本語はやや弱い。

Mistral Large 2(123B)はコード生成で高い評価を得ているものの、ライセンスがMRL(Mistral Research License)に変更されており、競合AIサービスへの組み込みには制限がある。Apache 2.0を前提とした商用利用であれば、初期モデル群(Mistral 7B / Mixtral系)を選ぶのが明快だ。

DeepSeek-V3 / R1

DeepSeekが2024〜2025年にリリースした一連のモデルは、コストとパフォーマンスのバランスにおいて業界に強いインパクトを与えた。DeepSeek-R1はMIT準拠ライセンスで公開された推論特化モデルであり、数学・コーディング・論理推論において高い性能を発揮するとされる。MoEアーキテクチャにより671Bのパラメータを持ちながら、推論時には実効計算量が約37B相当に削減される。

蒸留版(1.5B〜70B)も公開されており、小規模環境でも推論性能を活用できる点が魅力だ。ただし学習データの詳細が不透明な部分があり、機密情報を扱う組織ではデータ処理ポリシーの整備を別途行う必要がある。中国企業製であることから、規制業種では社内ガバナンスポリシーとの照合も欠かせない。

Google Gemma 3

GoogleがGeminiシリーズの知見を活かして開発した軽量オープンモデルだ。1B・4B・12B・27Bのサイズラインナップと、テキスト+画像のマルチモーダル対応が特徴である。Google ColabやVertex AIとのシームレスな連携も強みとなるが、Gemma Terms of UseにはApache 2.0より制約が多い箇所があり、Googleサービスとの競合用途には制限が設けられている。サービス組み込みの際は規約全文の確認が必須だ。

マルチモーダルLLMの仕組みと活用の詳細については、マルチモーダルAIの基礎と活用を参照されたい。

Alibaba Qwen シリーズ

AlibabaのQwenシリーズは、特に日本語・中国語・韓国語・アラビア語など多言語性能においてトップクラスの評価を受けている。JST科学技術振興機構の2026年3月報告では、Qwen 3.5がオープンソースLLMのランキング首位を記録しており(spap.jst.go.jp)、その競争力は直近においても高い。

コード生成特化の「Qwen2.5-Coder」や数学特化の「Qwen2.5-Math」など用途別サブモデルが充実しており、0.5Bという超軽量モデルから72Bのフルスケールモデルまでエッジからクラウドまで幅広くカバーできる。Apache 2.0ライセンスで商用利用しやすい点も評価されるが、中国企業製であることから規制業種では社内ガバナンスポリシーとの確認が必要なケースがある。

Microsoft Phi シリーズ

「小さく賢く」を追求して開発されるPhiシリーズは、合成データを主体とした高品質なトレーニングによって同サイズ帯では際立った推論・数学性能を発揮する。Phi-4(14B)はMITライセンスで制約が最も少ない部類に入り、シングルGPUでのデプロイが容易だ。ただしコンテキスト長が16Kと短く、長文ドキュメント処理が主要タスクとなる場合は他のモデルとの比較検討が必要となる。

Llama 3.1 Swallow(日本語特化)

産業技術総合研究所(AIST)と東京科学大学が共同で開発・公開した日本語継続事前学習モデルだ。Llama 3.1(8B / 70B)をベースに日本語コーパスで追加学習を行っており、公共機関発のモデルとして信頼性と透明性の観点から国内企業・研究機関での採用を検討しやすい位置づけにある。AISTの公式プレスリリースに詳細が記載されている(aist.go.jp)。

自然言語処理の基礎的な仕組みについてはBERTとNLPの基礎ガイドも参照されたい。テキスト解析への応用はテキストマイニング実践ガイドで詳述している。

ライセンス形態の比較一覧:商用利用可否と主な注意点

ライセンスの確認はモデル選定の最初のフィルタとなる。主要なライセンス形態と代表モデルを以下に整理した。制約が最も少ない商用利用を求めるなら、Apache 2.0またはMITライセンスのモデルが最も扱いやすい。また、モデルの学習データに著作権保護コンテンツや個人データが混入していた場合のリスクは、ライセンス条件とは別に事業者が負うことになる。OLMo 2のようにデータセットも完全公開しているモデルは、この観点でリスクが最も低い。

オープンソースLLM ライセンス比較一覧
ライセンス種別 代表的なモデル 商用利用 改変・再配布 主な制限・注意点
Apache 2.0 Mistral 7B・Mixtral各種・Qwen2.5・Falcon 2・Yi-1.5・OLMo 2 著作権表示・LICENSEファイルの同梱が必要。特許条項の明示あり
MIT DeepSeek-R1・Phi-4 著作権表示の維持のみ。制約が最も少ない
Llama Community License Llama 3.x / 4・Swallow等派生 ○(条件付き) ○(条件付き) MAU7億超は要Meta申請。製品名に「Llama」を使用不可
Gemma Terms of Use Gemma 2 / 3 ○(規約確認要) Googleサービスとの競合用途に制限あり。規約全文確認が必要
Mistral Research License(MRL) Mistral Large 2 研究・非商用・個人利用は可。競合AIサービスへの組み込みは禁止
CC-BY-NC Command R / R+(基本版) × ○(非商用) 非商用のみ。商用製品への使用は別途商用契約が必要
BigScience RAIL BLOOM 軍事・詐欺等の特定用途の使用を禁止
独自商用ライセンス DeepSeek-V3・InternLM・EXAONE ○(規約確認要) 各社規約に準拠。最新公式ドキュメントを必ず参照

日本語対応オープンソースLLM 一覧:国内導入で重視すべき評価軸

日本語処理の品質は、国内市場での実用化において独立した評価軸となる。2025〜2026年時点で日本語対応が優れるとされるオープンソースLLMを整理する。

日本語対応オープンソースLLM 選定マップ:モデル規模軸と日本語特化度軸 日本語対応オープンソースLLM 選定マップ(モデル規模 vs 日本語特化度) 小規模・軽量 大規模・高性能 日本語特化度 EXAONE 7.8B Swallow 8B Swallow 70B Qwen2.5 72B DeepSeek V3/R1 日本語特化 多言語・高性能
図1:日本語対応オープンソースLLMの規模・特化度ポジションマップ(概念図)
日本語対応オープンソースLLM 一覧(2025〜2026年)
モデル 日本語対応の特徴 ライセンス 主な用途
Qwen2.5 / Qwen3(72B) 多言語ベンチマーク上位。トークナイザーが日本語に最適化済み。JSTランキングでQwen3.5が首位(2026年3月) Apache 2.0 汎用・チャット・翻訳・要約
Llama 3.1 Swallow(AIST・東京科学大学) Llama 3.1ベースの日本語継続事前学習モデル。AIST公式発表(2024年10月)。国内研究機関発で透明性が高い Llama Community License 国内研究・企業システム組み込み
EXAONE 3.5(LG AI Research) 日本語・韓国語・英語の3言語特化。2.4B〜32Bのラインナップで軽量モデルも提供 EXAONE AI Model License ビジネス文書・カスタマーサポート
DeepSeek-V3 / R1 中国語・英語主体だが日本語性能も高水準。推論タスクで特に有効 MIT(R1)/ 独自(V3) 推論・コード生成・技術文書
Gemma 3 27B Googleの高品質トークナイザー採用。日本語テキストの処理精度が比較的高い Gemma Terms of Use 汎用・マルチモーダル対応

日本語に特化したファインチューニングを行う場合、国立情報学研究所(NII)が主導するLLM-jpが公開するデータセットや評価基準(llm-jp-eval)の活用も有効だ。国内ではcyberagent・NICT・SakuraなどがQwen / Llamaをベースにした日本語強化版を公開しており、選択肢は急速に拡大している。

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用途別・インフラ制約別の選定基準と VRAM 目安

モデル選定は「最高スコアのモデルを選ぶ」作業ではない。ライセンス・インフラ制約・言語要件・タスク特性・エコシステム成熟度の交点で決める判断だ。汎用ベンチマークで高スコアのモデルが、特定の専門分野タスクで最適とは限らない点にも留意が必要である。

用途別・インフラ別 推奨オープンソースLLM(2026年版)
用途・シーン 第一候補 代替候補 選定理由
日本語チャットボット・社内QA Qwen 2.5 72B Llama 3.1 Swallow 70B 多言語精度が高く128Kトークンで長い会話履歴にも対応
コード生成・開発支援 DeepSeek-V3 Qwen2.5-Coder 32B コード補完・バグ修正で高い性能水準。Apache 2.0 / MIT対応
数学・論理推論・科学的推論 DeepSeek-R1 Qwen 2.5-Math 72B 思考連鎖モードで複雑な推論ステップを可視化できる
RAG(検索拡張生成)・長文書解析 Llama 3.1 70B Command R+ 128Kトークン対応。LangChain等エコシステムが成熟
エッジ・モバイル・低リソース環境 Phi-4-mini / Gemma 3 4B Qwen2.5 0.5B〜7B MIT / 商用可。量子化でCPUのみでも動作可能
多言語対応グローバルサービス Mixtral 8x22B Qwen 2.5 72B 欧州主要5言語での高品質出力。Apache 2.0で商用利用しやすい
研究・完全再現性確保 OLMo 2 データ・コード・重みすべてApache 2.0で公開
コスト最優先・低スペックGPU運用 Mistral 7B(Q4量子化) Gemma 3 4B 4〜8GB VRAMで動作。CPU単体サーバーでも稼働可能
大規模エンタープライズ本番運用 Llama 4 Maverick / DeepSeek-V3 Llama 3.1 405B 最高水準の性能と大規模展開実績

VRAM 容量別の実用的なモデル選定目安

VRAM容量別に選択できるオープンソースLLMの目安 VRAM別 デプロイ可能モデルの目安(量子化適用時は1〜2ランク下のVRAMで動作可能) VRAM 8GB以下 Mistral 7B(Q4量子化) Gemma 3 4B Phi-4-mini Qwen2.5 7B(Q4) VRAM 16〜24GB Phi-4 14B Gemma 3 12B Llama 3.1 8B(フル) Mistral 7B(フル精度) VRAM 40〜80GB(A100×1) Gemma 3 27B Llama 3.1 70B(Q4) Qwen 2.5 32B Mixtral 8x7B GPUクラスタ(A100×複数) Llama 3.1 405B DeepSeek-V3(フル) Falcon 180B Command R+ 104B
図2:VRAM容量別に選択できるオープンソースLLMの目安

ディープラーニングのアーキテクチャやモデルの技術的背景については、ディープラーニングの基礎と応用および強化学習の基礎も参照されたい。LLMのトレーニング手法の理解に役立つ。

ファインチューニング・量子化・セキュリティ:実運用の三つの論点

ファインチューニングの主な手法

オープンソースLLMの大きな優位点は、自社データで追加学習できることだ。代表的な手法を整理する。

  • フルファインチューニング:全パラメータを更新。最高品質が得られるが、GPUコストと時間が大きい。405B級では現実的でないケースが多い
  • LoRA(Low-Rank Adaptation):差分行列のみを学習。元の重みを変えずに済むため少ないVRAMで実施可能。Hugging Face PEFTライブラリで実装できる
  • QLoRA:LoRAをNF4量子化と組み合わせ。24GB VRAMでも65B〜70Bのファインチューニングが可能になる手法
  • DPO(Direct Preference Optimization):RLHFより簡便に、企業ルールや社内規範に沿ったアウトプットを学習させる手法

ファインチューニングの代表的なツールとしては、UIベースで多様なモデルのSFT・LoRA・DPOに対応するLLaMA-Factory、設定ファイルベースで大規模学習に対応するAxolotl、LoRAを高速化するUnsloth、Hugging Face公式のRLHF・DPO学習ライブラリであるTRLなどが広く採用されている。

量子化:メモリと精度のトレードオフ

量子化とはモデルの重みをFP32/FP16から低ビット表現に変換してVRAM使用量を削減する技術だ。llama.cpp形式(GGUF)のQ4_K_Mは性能劣化が数%程度に抑えられており、実用上最も普及している。

量子化方式の比較
量子化方式 ビット数 サイズ削減率(概算) 性能劣化
FP16(ベースライン) 16bit なし
INT8 / GPTQ 8bit 8bit 約50%削減 わずか(〜1%程度)
Q4_K_M(GGUF) 4bit(混合) 約75%削減 小(1〜3%程度)
Q3_K_S(GGUF) 3bit 約80%削減 中(3〜7%程度)
Q2_K(GGUF) 2bit 約85%削減 大(顕著な品質低下)

セキュリティ・プライバシーの導入上の留意点

オープンソースLLMをオンプレミスで運用する際、データを外部に送出しないプライバシー保護は大きな優位点となる。医療・法務・金融・官公庁などでは個人情報保護法・GDPRへの準拠と情報漏洩リスクの排除が義務的要件となる場合がある。ただし、自己管理には以下のリスクを認識しておく必要がある。

  • 脆弱性管理:推論フレームワーク・コンテナ・OS全体のセキュリティパッチを自組織で適用しなければならない
  • プロンプトインジェクション:悪意あるプロンプトによる挙動操作のリスク。入力バリデーションと出力サニタイズが必要。Llama Guardなどの安全性評価モデルとの組み合わせが有効とされる
  • アクセス制御:APIエンドポイントへの認証・認可を適切に実装しないと、内部ネットワークからの無制限アクセスが発生し得る
  • ハルシネーション(幻覚):クローズド・オープン問わず現行LLM全般の課題。事実確認が必要な用途ではRAGやグラウンディング技術との組み合わせが不可欠。医療・法律・金融では生成テキストの人間によるレビューフロー設計が必要だ

出力品質管理の数理的なアプローチについてはスパースモデリングも参考になる。また、GANをはじめとする生成モデルの全体像についてはGANの基礎と応用を参照されたい。

2025〜2026年のオープンソースLLMトレンドと長期運用設計

オープンソースLLMの進化は加速が続いており、意思決定者が把握すべきトレンドと運用設計の方針を整理する。

小型化と高性能化の両立。Phi-4やGemma 3が示すように、10〜30B規模でも以前の70B相当の性能を出すモデルが増加している。エッジデプロイの実用性が急上昇しており、GPU調達コストの圧縮につながりやすくなっている。

推論型モデル(Reasoning Model)の普及。DeepSeek-R1がオープンソースで推論特化性能を実現したことを契機に、思考連鎖(CoT)を内蔵したモデルが各社から登場している。複雑な業務フロー自動化タスクでの精度向上が期待できる。

MoEアーキテクチャの主流化。DeepSeekとMixtralが実証したMoEの有効性により、大型モデルはMoE採用が広がりつつある。同じパラメータ数でも推論コストを大幅に削減できる点が実運用上の強みとなる。

マルチモーダルの標準化。テキストだけでなく画像・音声・動画入力に対応するオープンモデルが増加している。Llama 3.2(Vision)・Gemma 3等が先行している。

抽象化レイヤー設計の重要性。3〜6ヶ月ごとに新モデルが従来の常識を塗り替えるこの分野では、特定モデルへの依存を避け、vLLMやOllamaのような抽象化レイヤーを挟んでモデルを差し替えやすいアーキテクチャを設計しておくことが長期的な運用コスト最小化の最善策となる。

なお、弊社クリスタルメソッド株式会社が開発するDeepAIは、実在の人物の容姿・表情・声・振る舞いをデジタル空間で再現するバーチャルヒューマン/AIアバターソリューションであり、リップシンク・表情生成・音声合成・対話AIを組み合わせた接客・研修・面接練習・広報用途で活用されている。対話AI部分にオープンソースLLMを組み合わせることで、プライバシー要件の厳しい用途への対応を検討している企業には、本記事のモデル選定指針が具体的な判断材料となりうる。

まとめ:オープンソースLLM 一覧から最適モデルを選ぶための判断軸

本記事で整理したオープンソースLLM一覧の要点を、導入判断の軸として再提示する。最終的には自社の実データ・実タスクでの評価が最も重要であり、2〜3候補を絞り込んだ上で実データを使ったPoC(概念実証)を経て本格導入を判断することを強く勧める。

  • 商用利用の自由度を最優先にするなら:Apache 2.0(Mistral 7B・Mixtral・Qwen2.5・Falcon 2・OLMo 2)またはMIT(Phi-4・DeepSeek-R1)のモデルが最も扱いやすい
  • エコシステムとコミュニティの充実を重視するなら:Llamaシリーズ(ツール・知見が最大規模)
  • 推論・コード・数学に特化するなら:DeepSeek-R1またはQwen2.5シリーズ
  • 日本語対応を重視するなら:Qwen2.5 72B・Llama 3.1 Swallow(AIST)・EXAONE 3.5
  • 軽量・エッジデプロイなら:Phi-4-mini・Gemma 3 4B・Qwen2.5 0.5〜7B
  • 完全再現性・学術用途なら:OLMo 2
  • 大規模エンタープライズ本番運用なら:Llama 4 Maverick・DeepSeek-V4

参考文献

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