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中国のAI半導体はどこまで進んだか:DeepSeek R1から1年9か月(2026年10月)
文:クリスタルメソッド編集部 監修:河合 継(代表取締役)

2025年のDeepSeek R1から2026年10月までに、中国のAI半導体は何が変わったか
この記事では、2025年1月のDeepSeek R1が示した論点が、2026年10月時点でどこまで進み、どこで止まっているかを、半導体・計算基盤(SMIC、Huawei、輸出規制)の軸で整理する。結論から言うと、SMICの先端プロセスの増産とHuaweiのAIチップ計画は進んでいるが、歩留まりやメモリ(HBM)といった制約は残っており、数値の多くは報道や分析会社の推計で、企業の公式開示ではない。
モデルの性能比較やAPI料金は別記事(米中AIギャップ)に譲り、ここでは「計算資源をどこで作り、誰が買えるのか」に絞る。
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2025年1月のDeepSeek R1が示したこと
CSISの分析によると、DeepSeekは2025年1月20日にR1モデルを公開した。この日は米国のトランプ大統領の2期目の就任日でもあった(出典:CSIS、2025年3月7日公開)。R1が投げかけた問いは、性能そのものよりも、輸出規制下でも中国が競争力のあるAIを作れるのかという点にあった。
同じCSISの分析は、2022年10月の規制には抜け穴があり、NvidiaのA800とH800は約1年間、中国に販売できる状態が続いたと指摘する。2023年10月の更新でこれらが対象に加わった。さらに、TSMCがHuaweiのAscend 910Bのロジックダイを200万個以上製造したと政府関係者が述べたとも記している。ただしこれは未検証の主張で、CSIS自身も「事実なら」という留保を付けている。
2026年10月時点の発展:製造と供給
SMICの先端プロセスと生産能力
SemiAnalysisは2025年9月の分析で、SMICの先端ノード(7nm以下)の生産能力について、保守的な見積りとして2025年末に月産4.5万枚、2026年に6万枚、2027年に8万枚と予測した。同じ分析は、HBMの生産が最大のボトルネックだとも述べている。
2026年2月25日のTrendForceは、日本経済新聞の報道として、中国が7nmと、5nm級を含む比較的先進的なチップの生産量を、現在の2万枚未満から1〜2年で10万枚に引き上げようとしていると伝えた。2030年までにさらに50万枚分の能力を加える、より野心的な目標もあるという。TrendForceは、米国の輸出規制で先端製造装置の入手が制限されるため、そこまで拡大できるかは不確かだと書いている。
一方、2026年7月のThe Next Webは、SMICは最先端から数世代遅れた7nmプロセスにとどまっていると広く報じられ、AIチップの歩留まりも低いままだと伝えている。生産能力の目標と、実際に使えるチップの数は別の話である点に注意したい。
2026年5月のDIGITIMESは、規制当局がSMICによる過去最大規模の資産取得(約406億元、約59.8億ドル)を承認したと報じた。有料記事のため、取得対象の詳細までは確認できていない。
HuaweiのAIチップ
RCR Wirelessによると、Huaweiは2025年9月の年次会議で、Ascend 950PRを2026年第1四半期、950DTを同年第4四半期に投入し、Ascend 960を2027年第4四半期に出すと発表した。8,192個のAscendを載せるAtlas 950 SuperPoDは2026年第4四半期に提供開始とされ、Huaweiは「1年周期で、リリースごとに演算性能を倍にする」方針を示している。
ロイターは2026年3月27日、関係者の話として、Huaweiが年内に950PRを約75万個出荷する計画で、1月に顧客へサンプルを送り、4月に量産を始め、本格的な出荷は下期になると報じた(RTHK掲載のロイター電)。ByteDanceやAlibabaが発注を計画しているという。関係者の情報に基づく報道であり、計画どおりに進んだかは確認できていない。SemiAnalysisは2025年のAscend出荷を80.5万個(うち910Cが65.3万個)と推計しており、これも推計値である。
米国の輸出規制の変化と、中国側の反応
CNASの分析によると、米商務省産業安全保障局(BIS)は2026年1月13日の規則で、先端AIチップの中国向け輸出を個別審査で認める方針に転じた。H200とAMDのMI325Xに25%の輸入関税がかかり、実質的に25%の輸出手数料になる。中国向けは各チップの米国販売の50%が上限で、米国内の第三者施設での試験も義務づけられる。CNASは、この規則は恒久的な制約ではなく「現時点の方針の表明」だとしている。
ところが、Techloyが引いたロイターの情報では、中国の税関は2026年1月、米国が輸出を承認した直後にH200の搬入を阻止し、当局は国内の大手IT企業に「必要でない限り買わない」よう伝えた。ある関係者は「当面は事実上の禁止」と述べたという。米国が規制を緩めても、中国側が国産チップへの移行を優先する構図がうかがえる。
The Next Webによれば、2026年7月には、DeepSeekが推論用の自社AIチップを設計中だとロイターが報じた。DeepSeekは確認しておらず、記事も「設計図は動くチップではない」と慎重だが、SMICで製造される想定だという。同記事は、DeepSeekのR2が華為製ハードでの学習失敗で遅れ、学習はNvidia、推論は国産チップという使い分けに戻ったとも伝える。
TIME100 AI 2026に中国の半導体関係者が入った件
アナドル通信によると、TIMEは2026年8月27日に「TIME100 AI」の2026年版を発表し、中国からはSMICの共同CEOであるLiang Mong Song氏が「Leaders」部門に入った。ほかにバイトダンスのLiang Rubo氏、アリババのEddie Wu氏らが選ばれている。AI競争を語る場で、モデル開発者だけでなく半導体製造の幹部が選ばれたことは、競争の焦点が計算基盤にも広がっていることを示す材料の一つだ。ただし、この選出自体が製造能力の優劣を示すわけではない。
日本企業への影響
ここからは事実と意見を分けて書く。まず事実として、日本は2023年7月に23品目の先端半導体製造装置の輸出を制限した(出典:Startup Fortune)。同記事によると、東京エレクトロンの中国向け売上比率は、前年度第4四半期の47.4%から2026年度第4四半期には26.8%に下がり、通期の中国向け売上は2,794億円から1,755億円になった。通期売上高は過去最高の2兆4,435億円だった。報道は出典ごとに数値が食い違うため、正確な数字は同社の決算資料で確認してほしい。
以下は筆者の見方である。製造装置・素材メーカーにとって、中国の国産化は需要の減少という面を持つ。AIを調達する企業にとっては、特定の国のチップやモデルに依存しない選択肢を残すことが、規制変更への備えになる。基礎知識の整理にはディープラーニングの基礎と応用が参考になる。
| 立場 | 確認したいこと |
|---|---|
| 製造装置・素材メーカー | 中国向け売上比率の推移と、日米蘭の規制対象品目の最新状況 |
| AIを調達する企業 | 利用するモデルや計算基盤の調達元が、規制変更で使えなくなる場合の代替手段 |
| 経営企画・法務 | 米国の輸出管理の更新(H200の個別審査など)を定期的に確認する担当の明確化 |
次の一手:2026年第4四半期に見るべき点
確認できる範囲では、2026年第4四半期にHuaweiのAscend 950DTとAtlas 950 SuperPoDの提供開始が予定されている。計画どおり出荷されるか、SMICの歩留まりとHBM供給が追いつくかが、中国の計算基盤の実力を測る材料になる。また、米国のH200規則が維持されるか、中国側の阻止が続くかも注視したい。最新のAI動向は最新AIモデルの動向解説やブログ一覧も参照されたい。
参考文献
- CSIS, “DeepSeek, Huawei, Export Controls, and the Future of the U.S.-China AI Race”(2025年3月7日) — https://www.csis.org/analysis/deepseek-huawei-export-controls-and-future-us-china-ai-race
- SemiAnalysis, “Huawei Ascend Production Ramp”(2025年9月8日) — https://newsletter.semianalysis.com/p/huawei-ascend-production-ramp
- RCR Wireless, “Huawei outlines roadmap for Ascend AI chips”(2025年9月22日) — https://www.rcrwireless.com/20250922/ai-infrastructure/huawei-ai-chips
- CNAS, “Unpacking the H200 Export Policy”(2026年1月16日) — https://www.cnas.org/publications/commentary/cnas-insights-unpacking-the-h200-export-policy
- Techloy, “China blocks Nvidia H200 AI chips at customs despite U.S. export approval”(2026年1月14日) — https://www.techloy.com/china-blocks-nvidia-h200-ai-chips-at-customs-despite-u-s-export-approval/
- TrendForce, “China reportedly aims to boost 7nm/5nm output fivefold”(2026年2月25日) — https://www.trendforce.com/news/2026/02/25/news-china-reportedly-aims-to-boost-7nm-5nm-output-fivefold
- RTHK(ロイター電、2026年3月27日) — https://news.rthk.hk/rthk/en/component/k2/1849055-20260327.htm
- DIGITIMES(2026年5月12日) — https://www.digitimes.com/news/a20260512VL211.html
- Startup Fortune, Japan chip equipment makers and China(2026年6月21日) — https://startupfortune.com/japans-chip-equipment-giants-are-losing-china-and-betting-on-ai-to-fill-the-gap/
- The Next Web, “DeepSeek is reportedly designing its own AI chip to sidestep US curbs”(2026年7月7日) — https://thenextweb.com/news/deepseek-own-ai-chip-smic-inference-report
- Anadolu Agency, “TIME names 100 most influential people in AI for 2026″(2026年8月27日) — https://aa.com.tr/en/world/time-names-100-most-influential-people-in-ai-for-2026/4039480
監修
河合 継(クリスタルメソッド株式会社 代表取締役)
AI・ディープラーニングに関する特許16件の発明者。過去、国立がん研究センターとの共同研究や、テレビ番組でのAI解説実績を持つAI研究者として、AIの研究開発を主導している。
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