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AIブログ
ビジネスメール詐欺(BEC)の対策|手口・見分け方・初動を解説
文:クリスタルメソッド編集部 監修:河合 継(代表取締役)

結論:ビジネスメール詐欺の対策は、送金前の別経路での確認と承認ルールが最後の砦
ビジネスメール詐欺(BEC:Business E-mail Compromise)とは、取引先や経営者になりすました偽メールで従業員をだまし、攻撃者の用意した口座へ送金させる詐欺です。警察庁は、振込先が海外の口座であることが多く、一度送金すると回収は非常に困難だと注意しています。
対策は大きく3つに分かれます。①送金のルール(メール以外の手段での確認と、複数人による承認)、②メールアカウントを乗っ取られないための技術的対策、③だまされたときに最初に動く手順です。マルウェアも偽サイトも使わず文面だけでだますBECは、ウイルス対策ソフトや迷惑メールフィルタでは見つけにくいため、中心になるのは①です。
| 場面 | やること | 出典 |
|---|---|---|
| 送金・口座変更の依頼が来た | メールに書かれた連絡先ではなく、名刺やアドレス帳の連絡先に電話などで確認する。複数の担当者で承認する | 警察庁・警視庁・IPA |
| メールアカウントを守る | メールやSaaSには多要素認証を必須にする。長く複雑で使い回さないパスワードにする。転送設定などを定期的に確認する | IPA(2026年8月3日)・警察庁 |
| 受信者に気づかせる | フリーメールや、しばらくやり取りのないドメインからのメールに警告を表示する。不審メールを報告しやすくする | JPCERT/CC(2020年3月25日) |
| だまされて送金したとき | 最初に送金元の銀行へ連絡して組戻しを依頼し、メールとヘッダ情報を保存して警察に相談する | 警察庁・JPCERT/CC |
この記事では、まず手口の種類と見分け方、国内の実態調査と事例を確認し、そのうえで組織として決めておく送金手続きと技術的対策、被害に遭ったときの動き方の順に整理します。
メールのなりすましをAIでどこまで見抜けるかは、フィッシング対策にAIを使う方法で解説しています。
ビジネスメール詐欺(BEC)とは:手口の種類と攻撃の流れ
IPA(情報処理推進機構)は、ビジネスメール詐欺を「巧妙なだましの手口を駆使した偽のメールを企業組織に送り付け、従業員をだまして攻撃者の用意した口座へ送金させる詐欺の手口」と定義し、特定の企業組織を標的として行われる点を強調しています。
出典:IPA「企業組織を狙う攻撃メールの手口とその対策」(2026年8月3日)https://www.ipa.go.jp/security/support/rcu1hd0000019vmo-att/20260803_1.pdf
攻撃の流れ
典型的な流れは、メールのやり取りを盗み見る、取引先や経営者になりすます、偽のメールで口座変更や送金を指示する、攻撃者の口座へ送金させる、という順です。各段階に別々の対策があり、IPAは多層防御の考え方で重ねることを求めています。
手口の種類:IPAの2タイプと5タイプ
IPAは代表的な手口を2タイプに整理しています。IPAの企業組織向けサイバーセキュリティ相談窓口に寄せられる相談では、海外の取引先になりすましたタイプ1が多くを占めると記載されています。
| タイプ | 主な標的 | 攻撃の流れ | 典型的な偽メールの内容 |
|---|---|---|---|
| タイプ1:取引先との請求書の偽装 | 経理・購買担当者 | 取引先とのメールのやり取りを盗み見たうえで、途中から取引先になりすましてメールを送る。取引先の正規アカウントから送られる場合は、やり取りの流れに自然に割り込むため気づきにくい | 「送金先口座が変更になりました」 |
| タイプ2:経営者等へのなりすまし | 経理・総務担当者 | 経営者や役員のメールアドレスを調べて、なりすます。「CEO詐欺」「企業幹部詐欺」とも呼ばれる | 「至急、指定口座へ送金してください」 |
なりすまし方も、IPAは2通りに分けています。なりすます人物のメールアカウントを乗っ取って正規アカウントから送る方法と、組織のドメインによく似た別のドメインを取得して送る方法です。
IPAは、この2タイプを含めて、全体を5つのタイプに分類しています。JPCERT/CC は2020年の報告書で、この5タイプを使って国内の事案を分類しました。
| タイプ | 例(JPCERT/CC の報告書の記載) | 国内の事案での確認 |
|---|---|---|
| タイプ1:取引先との請求書の偽装 | 取引のメールの最中に割り込み、偽の請求書(振込先)を送る | 確認(最多で、全体の約75%) |
| タイプ2:経営者等へのなりすまし | 経営者を騙り、偽の振込先に振り込ませる | 確認 |
| タイプ3:窃取メールアカウントの悪用 | メールアカウントを乗っ取り、取引先に対して詐欺を行う | 確認 |
| タイプ4:社外の権威ある第三者へのなりすまし | 社長から指示を受けた弁護士といった人物になりすまし、振り込ませる | 未確認 |
| タイプ5:詐欺の準備行為と思われる情報の詐取 | 経営層や人事部になりすまし、今後の詐欺に利用するため、従業員の情報を詐取する | 確認 |
タイプ4は、依頼する人が社内の人でも取引先の担当者でもないため、見落としやすい型です。「社長から指示を受けた弁護士」のように第三者が間に入る依頼でも、送金の依頼は同じ確認ルール(名刺やアドレス帳の連絡先に、メール以外の手段で確認する)に載せます。タイプ5は、その場で送金させるのではなく、後の詐欺に使う従業員の情報を集める準備段階にあたります。
出典:JPCERT/CC「ビジネスメール詐欺の実態調査報告書」(2020年3月25日)https://www.jpcert.or.jp/research/20200325_BEC-survey.pdf
フィッシング・標的型攻撃メールとの違い
どれも攻撃メールですが、狙う相手も目的も違います。IPAの整理をもとに表にしました。
| 型 | 狙い方・送り方 | 主な目的・被害 |
|---|---|---|
| ビジネスメール詐欺(BEC) | 特定の企業組織を標的に、偽のメールで従業員をだます | 攻撃者の用意した口座への送金(金銭の窃取) |
| フィッシング | 実在する企業やサービスを騙るメールやSMSを、同じ文面で不特定多数に送る「ばらまき型」。偽サイトへ誘導してIDとパスワードを入力させる | フィッシングを起点とした不正ログイン、情報漏えい、不正送金 |
| 標的型攻撃メール | 標的とする人物を決め、業務内容を調べたうえで、業務に関連したメールを送る。添付ファイルやリンク先にマルウェアを仕込む | 機密情報の窃取、データの破壊など |
両者はつながっています。IPAは、フィッシングでメールアカウントの認証情報を盗まれると、取引先とのメールを盗み見られ、BECにつながると説明しています。BECの対策では、メールアカウントを守ることが前提になります。
次に読む:多要素認証の突破の手口とAIで防ぐ方法は?
偽メールの見分け方:確認する点と、見分けられない場合の考え方
経理・総務の担当者が、届いたメールを見て最初に確認する点を、IPA・警察庁・JPCERT/CC の整理から4つにまとめました。
| 確認する点 | 偽メールで起きがちなこと |
|---|---|
| 依頼の内容 | 「送金先口座が変更になりました」(取引先の請求書偽装)や、「至急、指定口座へ送金してください」(経営者等へのなりすまし)といった、送金先の変更や急ぎの送金を求める(IPA) |
| 差出人の表示 | 表示名は役員名でも、実際の送信元がフリーメールになっている。組織のドメインによく似た別のドメインから届く(IPA) |
| 送信元のドメイン認証 | 送信元の組織がSPF・DMARC等の送信元詐称対策を適切に行っていないと、メールソフトに表示される差出人は偽装できる。差出人のドメインが一見正しくても過信しない(IPA) |
| 連絡の手段 | メールだけでなく、ビデオ会議で複数人になりすまして送金を指示する例もある(英Arup、報道) |
調査から分かった「見抜くための勘所」
JPCERT/CC は、国内組織から集めた事案をもとに、BECに関係するメールを見抜くための勘所を次のように挙げています。
| 勘所 |
|---|
| 定常的なメールだが、発信元メールアドレスが以前と異なる |
| 定常的なメールだが、発信された時間帯やメールの文面(言い回し等)が以前と異なる |
| メールが営業時間終了間際や週末直前に届き、変則的な処理の要求を急かせている |
| 過去に取引がない会社から初めて届いたメール |
| メール以外の事前連絡なしに上司や幹部からメールで指示している |
| 以前に送金したことのない口座への送金を要求している |
報告書によると、偽装された請求書の添付ファイルはPDFが9割を占め、作成日時のタイムゾーンが関係国と異なっていることもありました。口座変更には「年次監査を受けていて口座が使えない」「銀行の吸収合併による」といった、もっともらしい理由が添えられることが多いとされています。いずれも一見正当に見えるため、理由の説得力では判断できません。
偽のメールアドレスの作り方と、同報先の細工
IPAは、J-CSIP(サイバー情報共有イニシアティブ)に参加する組織で2015年から2016年に起きた4件の事例をもとに、攻撃者が使う「メールアドレスの見た目」によるなりすましの手口を整理しています。公開は2017年ですが、今も確認の手がかりになります。
| 手口 | 内容 |
|---|---|
| 文字の入れ替え・追加・削除 | 本物のメールアドレスの文字を1文字入れ替える、1文字追加する、1文字削除する |
| 見間違えやすい文字への置き換え | メールアドレスの一部を誤認しやすい文字に置き換える(例:m を rn に置き換える) |
| フリーメールの利用 | フリーメールサービスを使って、それらしいメールアドレスを作る |
| 差出人表示名の細工 | メールソフトに表示される差出人名に、本物のメールアドレスに似せた長い文字列を使い、偽物だと気づきにくくする |
| 同報(Cc)先の改変 | 宛先(To)や同報先(Cc)のメールアドレスを偽のものに細工し、複数の担当者に同報されているように見せかける。実際に届いているのは、だます相手だけという状態になる(取引先は詐欺に気づけない) |
| 詐称用ドメインの取得 | 正規のドメインによく似たドメインを新たに取得し、DNSやメールサーバを設定する。事例では、詐称用ドメインにSPFレコードがあり、SPF検証がPassする状態だった |
最後の点は重要です。IPAは、詐称用ドメインを使われた場合、「フリーメールからのメールに警告を付ける」「SPF検証を行う」といった一般的なシステム対策は効果がないとして、受信者がメールアドレスのドメイン名の異常に気づくことが重要になると述べています。返信するときは、「返信」ボタンではなく「転送」を選んで正しいメールアドレスを入力するよう、IPAの資料に引用されたFBI IC3の対策に載っています。
また、同じ資料に引用されたIC3の対策には、「内密にしてほしい」「迅速に動いてほしい」という要求にはBECを疑う、という項目があります。経営者を名乗って口止めをする依頼は、この典型です。
出典:IPA「ビジネスメール詐欺「BEC」に関する事例と注意喚起 ~サイバー情報共有イニシアティブ(J-CSIP)の活動より~」(2017年4月3日)https://www.ipa.go.jp/archive/files/000058478.pdf
見分けられないケースがある
取引先の正規アカウントが乗っ取られている場合は、やり取りの途中に自然に割り込むため、受信者は不正に気づきにくいとIPAは述べています。JPCERT/CC の調査でも、被害を避けられた事案では、メールのやり取りの中で不審な点に気づいた時点で、電話やメッセージアプリなどメール以外の手段で相手に確認していました。文面の違和感を探すことより、送金先の変更や急ぎの依頼は例外なく別の経路で確認するルールを先に決めておく方が確実です。
国内の被害の実態と事例
国内での位置づけ:IPA 情報セキュリティ10大脅威
IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日決定)の組織向け脅威では、「ビジネスメール詐欺」は10位でした。2018年に初めて選ばれてから、9年連続9回目の選出です。順位は上位ではありませんが、毎年選ばれ続けていることから、国内の組織にとって継続して備える脅威だと読めます。
出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html
JPCERT/CC の実態調査から分かること
JPCERT/CC は2019年7月から11月にかけて、日本貿易会ISACや石油化学工業協会などの協力を得て、未遂を含むBECの事案を調査しました。12組織から117件の回答を得て、6組織にはヒアリングも行っています。回答組織は限られているため、国内全体の統計ではなく、事案の傾向を示す資料として読む必要があります。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 回答 | 12組織から117件(未遂を含む)。2019年7月8日〜11月22日に実施 |
| 手口の分類 | IPAの5タイプのうち、タイプ1(取引先との請求書の偽装)が全体の約75%。次いでタイプ2(経営者等へのなりすまし)。タイプ4(社外の権威ある第三者へのなりすまし)は確認されなかった |
| 使われた言語 | 英語が108件、日本語が8件(複数言語を含む事案は重複して数える) |
| 不正な請求額 | 被害の有無にかかわらず、把握した不正な請求額の合計は日本円換算で約24億円。被害に遭った事案では数百万〜数千万円規模もあった |
| 立場 | 詐欺メールを受信した組織と、自組織になりすまされた組織が、ほぼ同数だった |
| なりすましの詐称のタイミング | 請求書発行前が13件、請求書発行時が33件、請求書発行から振込までが29件、振込後が3件、支払プロセスに関わらないものが28件 |
調査からは、手口が単純な1対1のやり取りだけではないことも分かります。グループ会社や仲介業者が間に入った事案では、原因の特定が難しくなり、被害額を誰が負担するかが争点になりました。攻撃者が経営者と秘書の2人になりすまし、前日に「明日CEOから指示がある」と伝えておいてから送金を指示した事案もありました。
さらに、BECが発覚する直前に、利用者がフィッシングサイトにメールの認証情報を入力していた事案や、後からマルウェア感染が見つかった事案がありました。取引内容を攻撃者が把握していた背景に、先に起きていた別のインシデントがあった可能性があります。報告書は、アカウントの侵害や情報漏えいが起きたときは、その情報がBECに悪用される可能性を考えて警戒を高めるよう勧めています。
国内企業が関係した4つの事例(J-CSIP、2015〜2016年)
IPAがJ-CSIPの情報提供をもとに公開した4件の事例は、国内企業が支払う側、請求する側、親会社の社長のいずれの立場でもBECが起きることを示しています。なお、IPAの資料は公開時点(2017年)で、日本語の偽メールや国内企業同士の被害は確認されていないと記載しており、事例のメールはすべて英語でした。
| 事例 | 時期 | 概要 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 事例1:国内企業を狙った攻撃 | 2015年12月・2016年1月 | 国内企業(支払い側)と米国企業(請求側)の取引で、攻撃者が請求側の担当者になりすまし、偽の口座への支払いを依頼。1月には、未払いの別の請求についても改めて偽の口座への支払いを要求した | 国内企業が偽物と気づき、送金せず被害なし |
| 事例2:国内企業の海外支社を狙った攻撃 | 2015年8月 | 海外支社(支払い側)とチリの企業(請求側)の取引で、攻撃者が請求側の担当者になりすまして偽の口座への支払いを依頼。同時に支払い側の担当者にもなりすまして、請求側に「支払いは確認中なので待つように」と伝え、直接の確認を思いとどまらせた。成功後は、支払期日前の請求についても前倒しの支払いを要求した | 海外支社が偽の口座へ送金し、被害 |
| 事例3:海外取引先を狙った攻撃 | 2016年9月 | 国内企業の海外支社(請求側)とベトナムの企業(支払い側)の取引で、攻撃者が両社に似た詐称用ドメインを取得。請求側の担当者になりすまして口座変更と支払いを要求した | 支払い側のベトナム企業が送金し、被害。請求側の国内企業には直接の被害はなかったが、損害の補償や訴訟の可能性が懸念された |
| 事例4:海外関係企業を狙った攻撃 | 2015年7月 | 国内企業の社長になりすまし、スイスにある子会社の社長に、海外の法律事務所の担当者と連絡を取って送金するよう指示。提示された法律事務所のドメインは、実在する法律事務所のドメインによく似た偽のドメインで、同じ攻撃者が取得した可能性が示された | 子会社が金銭的被害に至ったかは確認できていない |
事例2のように、攻撃者が両方の側になりすまして互いの確認を妨げる型や、事例4のように、社長の指示に加えて法律事務所の担当者という第三者を登場させる型があります。事例3のように、自社が「なりすまされる側」になり、取引先が被害を受ける場合もあります。
出典:IPA「ビジネスメール詐欺「BEC」に関する事例と注意喚起 ~サイバー情報共有イニシアティブ(J-CSIP)の活動より~」(2017年4月3日)https://www.ipa.go.jp/archive/files/000058478.pdf
日本航空(2017年)
2017年12月20日、日本航空が公表した事例では、支払先担当者を装った人物からの請求書に記載された香港の銀行口座へ送金し、合計約3億8,000万円を詐取されました。内訳はボーイング777-300ER型機のリース料約3億6,000万円と、米国拠点の貨物地上業務の委託料約2,400万円です。指定口座は偽のもので、資金の行方は分からないと報じられました。海外口座への送金後は、資金の回収が極めて難しくなることを示す国内の代表例です。
出典:J-CASTニュース(2017年12月20日)https://www.j-cast.com/2017/12/20317156.html
英Arup(香港拠点、2024年):ビデオ会議でのなりすまし
英エンジニアリング大手Arupの香港拠点で、従業員が英国本社のCFOを名乗るメッセージを受け取り、続いて参加したビデオ会議では、CFOらしき人物と複数の同僚がデジタルで再現されていたと報じられています。従業員は15回に分けて計2億香港ドル相当を送金し、本社に確認して詐欺と分かりました。メールフィルタが効かない型の例であり、メール以外の手段にも「別経路での確認」のルールを広げる必要があることを示しています。
出典:Computing「Deepfake fraud costs engineering giant Arup £20m」https://www.computing.co.uk/news/4209651/deepfake-fraud-costs-engineering-giant-arup-gbp20m
海外の統計:FBI IC3 の報告
FBI IC3の2025年版の報告書では、米国でのBEC苦情は24,768件、報告された損失額は約30.5億ドルで、サイバー犯罪の損失額では投資詐欺に次ぐ2位でした。国内の統計ではありませんが、被害が長く続いている規模を示しています。
出典:FBI IC3「2025 Internet Crime Report」https://www.ic3.gov/AnnualReport/Reports/2025_IC3Report.pdf
組織としてのビジネスメール詐欺対策:送金手続き・確認ルール・技術的対策
JPCERT/CC は、BECはIT部門の対策だけでは防ぎにくく、送金を担う経理部門が疑わしい依頼を見抜いて依頼元に確認することが必要だと述べています。IT部門の技術的対策と、経理・営業・法務などの実務を組み合わせ、組織全体の課題として取り組む形です。費用対効果と即効性から、次の順で整えるのが現実的です。
優先度1:送金手続きと確認ルールを決める
警察庁・警視庁・IPAが共通して最も重要な対策に挙げているのが、メール以外の手段での確認と、複数人での承認です。社内規程に落とすときに決めておく項目を、各機関の記載から整理しました。
| 決める項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 別経路での確認 | 送金に関するメールは、電話やFAXなどメール以外の方法で、送信元の取引先担当者に内容を確認する。連絡先はメール本文のものではなく、名刺やアドレス帳に載っているものを使う | 警察庁・警視庁・JPCERT/CC |
| 確認の対象 | 振込先や決済手段の急な変更、緊急の送金、以前に送金したことのない口座への送金。IPAは、急な振込先の変更が発生した場合にメール以外の方法で確認するよう求めている | IPA・JPCERT/CC |
| 承認の体制 | 送金の承認ルールを整え、複数の担当者でチェックする。営業部門の確認に加えて経理部門も確認する二重の確認を行った組織がある | IPA・警視庁・JPCERT/CC |
| 二次チェックの立場 | 至急だと焦らせたり上司になりすましてプレッシャーをかけたりする文面に動揺しないよう、客観的な立場から冷静に確認できる人を送金の流れに入れる。日ごろからスケジュールに余裕を持った送金処理を行う | JPCERT/CC |
| 過去の取引との照合 | 過去の取引とメールで指示された取引を並べたチェックシート(送信元の組織名・担当者名・電話番号・メールアドレス、金額、金融機関名、口座情報、メールの送信日時のタイムゾーンなど)で、相違点を確認する | JPCERT/CC |
| 社内の報告 | 不審なメールは社内で共有する。報告先と書式(受信日時、送信元、URLや添付ファイルの有無、クリックや開封の有無)を決め、被害に至らなかったヒヤリハットも集める | IPA・警察庁 |
新規取引の契約を結ぶ段階で起きるBECは、既存の口座と比べて気づく機会がないため、既存取引よりも見極めが難しいという意見がJPCERT/CC の調査にありました。新しい取引先の口座は、契約書など別の資料と突き合わせる運用にしておくと安心です。
優先度2:メールアカウントを乗っ取られないようにする
取引先の正規アカウントから偽メールが送られる場合、その前提には、取引先や自社のメールアカウントの乗っ取りがあります。IPAはインターネットから直接アクセスできるSaaSやメールには多要素認証を必須にし、長く複雑で使い回さないパスワードを組織で徹底するよう求めています。IPAは同じ資料の中で、ワンタイムパスワードまで偽サイトで入力させて多要素認証を突破する「リアルタイムフィッシング」が増えていると注意しており、設定したあとも不審なログインを疑う姿勢が必要です。
警察庁は、メールアカウントへの不正ログインに加えて、外部への転送設定や、普段見ないフォルダへの振り分け設定がないかを調べるよう案内しています。JPCERT/CC の報告書にも、乗っ取られたアカウントには転送設定や受信メールを削除する設定が追加されていることがあると書かれています。定期的な確認項目に入れておく価値があります。
優先度3:受信者に気づかせる仕組みと、なりすまされない対策
最初に、送信ドメイン認証(SPF・DKIM・DMARC)の仕組みを整理します。IPAが「送信元の組織が対策を適切に行っていないと、表示される差出人は偽装できる」と述べているのは、この仕組みのことです。
| 技術 | 仕組み | 注意点 |
|---|---|---|
| SPF | 送信側がDNSにSPFレコードを追加し、受信側が受信メールの送信元IPアドレスがそのレコードに一致するかを検証する。電子署名を使う方式より導入しやすい | メール転送などで配送経路が変わると送信元IPアドレスが変わり、認証できなくなる |
| DKIM | 送信側があらかじめ自ドメインの公開鍵をDNSに登録し、送信メールサーバがメール1通ごとに秘密鍵で電子署名を作ってメールヘッダに付ける。受信側は公開鍵で検証する。メール本文の改ざんも検知できる | 送信側で秘密鍵の作成・管理が必要で、SPFに比べると導入コストが相対的に大きいといわれる |
| DMARC | SPFとDKIMの認証結果を使い、メールの作成者アドレス(From)のドメインを基本に認証する。失敗したメールの扱いを送信側がポリシーとして宣言でき、受信側は認証結果を送信側へ報告できる。警察庁は、なりすましメールを受信者に届けない(reject)か迷惑メールとして扱う(quarantine)設定ができると案内している | 送信側のDMARC導入は、すでにSPFまたはDKIMを導入していれば容易とされる。受信側にも処理機能の追加が必要 |
IPAのJ-CSIP事例には、攻撃者が取得した詐称用ドメインにSPFレコードが設定され、SPF検証がPassする状態だったものがあります。受信側がSPF検証に通ったという結果だけでは、取引先のメールだと判断できません。
総務省の資料は、現在の仕組みでは「認証できたもの=正規メール」「認証できなかったもの=詐称メール」と必ずしも言えないとも述べています。転送されたメールやメーリングリスト宛のメールは、正規のメールでも認証に失敗することがあるためです。認証が通っていることは安心材料の1つにとどまり、送金の依頼は別経路で確認するルールが引き続き必要になります。
出典:総務省「特定電子メール等による電子メールの送受信上の支障の防止に資する技術の研究開発及び電子メール通信役務を提供する電気通信事業者によるその導入の状況」(令和4年4月)https://www.soumu.go.jp/main_content/000813789.pdf、警察庁「Cyber Police Agency Letter R5 Vol.11 DMARCでフィッシングメール対策!」https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/pdf/Vol.11cpal.pdf
次に、受信者に気づかせる仕組みと、なりすまされないための対策を表にまとめます。
| 対策 | 効果と注意点 | 出典 |
|---|---|---|
| フリーメール・未受信ドメインへの警告表示 | フリーメールから届いたメールに警告を添える。一定期間やり取りのないドメインからのメールに、その旨を表示する。ある組織では過去3か月受信していないドメインからのメールに注意のポップアップを出していた | JPCERT/CC |
| 不審メールの報告ボタン | 受信箱に報告用のボタンを設け、報告の手間を減らした組織がある | JPCERT/CC |
| 類似ドメインの監視 | 有償サービスで類似ドメインの登録を監視し、見つけたら社内に注意喚起したり遮断したりする組織がある。ただし、正規ドメインの作成から平均2日ほどで類似ドメインが作られ、数も多いため、効果は高くなく運用コストも大きいとされている | JPCERT/CC |
| 電子署名・添付ファイルのパスワード | メールの電子署名機能で、なりすましを見破れる場合がある。添付ファイルにパスワードを設定すると第三者の介在を防ぎやすい。FBI IC3の対策には、取引先とのメールのやり取りに双方の電子署名を使うことも挙げられている | 警察庁・警視庁・IPA(IC3の対策を引用) |
| 基本のセキュリティ対策 | OSとソフトウェアを最新に保ち、ウイルス対策ソフトを導入する。攻撃者は事前にウイルスでメールのやり取りを盗み見ている可能性がある | 警察庁 |
| ログの保管 | メールのログとログイン履歴を含む監査ログを取得して保管する。送金の取消を依頼するとき、金融機関から被害を示す根拠を求められることがある。JPCERT/CC は高度なサイバー攻撃を考慮して最低1年以上の保管を推奨しており、BECも同等が相当としている | JPCERT/CC |
JPCERT/CC の報告書は、BEC対策には「だまされない」対策に加えて「なりすまされない」対策も必要だと述べています。調査では、だまされた側とほぼ同数の組織が、自社の名前や役職員を使われていました。損害を受けた相手から賠償を求められることも考えられるため、メールのログを残しておくことが、自社に過失がないことを示す材料にもなります。
優先度4:教育と、組織内の体制
IPAは、被害を防ぐには情報システムの担当者だけでなく組織の全員が手口を知る必要があるとして、不審メールの教育・研修と訓練を定期的に行い、報告の手順まで演習するよう求めています。JPCERT/CC の調査では、報告先が定まっていなかったり、IT障害の窓口に埋もれたりして、BECに気づけない恐れがあることが指摘されました。IT障害とメールに関する相談先を分けたり、総務・法務・経理・営業とBECの情報を共有する場を設けたりする組織がありました。
内部の事情に詳しい人が関わっている可能性も、報告書は否定していません。決裁金額の上限にきわめて近い請求が繰り返された事案があるためです。情報に触れられる人を必要な範囲に絞る、アクセスの記録を確認するといった内部不正への備えも、対策の一部に入ります。
被害に遭ったら:送金後に最初にやること
偽の口座へ送金してしまったとき、警察庁は次の順で動くよう案内しています。
1. 送金元の銀行に連絡する:速やかに送金のキャンセルや組戻の手続を依頼します。海外の口座が指定されることが多く、一度送金すると回収は非常に困難とされるため、最初の連絡が最優先です。JPCERT/CC は、手続きの中で金融機関から被害の根拠を求められることがあるため、調査結果や保存したメール、ログを準備しておくよう勧めています。
2. 時系列をまとめる:メールが届いた経緯を整理して被害の全体像をつかみます。取引先にも、攻撃者からのメールを受信していないか調査を依頼します。
3. メールとヘッダ情報を保存する:攻撃者から届いたメールとメールヘッダ情報を残します。取引先にもなりすましメールが届いている可能性があるため、同じ保存を依頼します。
4. 原因を調べる:パソコンのウイルスチェックとメールアカウントのパスワード変更を行い、不正アクセス、外部への転送設定、普段見ないフォルダへの振り分け設定がないかを調べます。社員には、不審なメールを開いていないか、パスワードを他のサービスと使い回していないかを聞き取ります。
5. 警察に通報・相談する:攻撃者のメールを持って最寄りの警察署へ行きます。事前に電話で担当者と日時や持参資料を調整すると進めやすくなります。
警察庁は、内部の犯行の可能性もあるため、調査は最小限の関係者で進めるよう注意しています。
自社の立場を確認する:受信した側か、なりすまされた側か
JPCERT/CC は、不正な送金依頼と分かった時点で、まず自組織が「詐欺メールを受信した」立場か、「なりすまされた」立場かを確認するよう整理しています。受信した立場なら、送金の有無を確認し、送金済みなら直ちに金融機関へ取消を依頼します。なりすまされた立場なら、取引先が送金したかどうかにかかわらず、偽メールの送信ドメインが自社で業務上使っているドメインかどうかを確認します。自社のドメインから送られていた場合は、自社のメールアカウントが侵害されている可能性が高く、先に起きた侵害の調査が必要です。
自社になりすましたBECが取引先などからの連絡で分かったときは、同じ試みが広い範囲に行われている可能性があります。報告書は、被害の拡大を防ぐため、送信元メールアドレスや送金先口座(銀行名、支店名、口座番号、口座名義人名)など具体的な情報を、取引先への個別通知やホームページで速やかに伝えることを勧めています。
送金後でも、すぐ動けば資金が戻る可能性がある
FBI IC3の2025年版報告書には、FBIの回収チーム(Recovery Asset Team)が受取口座の凍結を速やかに依頼した結果、オレゴン州の市の機関へ送金された600万ドル超が組み戻された例が記録されています。同チームが2025年に扱った資金凍結の手続き(Financial Fraud Kill Chain)は3,900件で、盗まれそうになった金額は約11.6億ドル、実際に凍結できたのは約6.8億ドル(成功率58%)でした。BECに限らない詐欺全体の数字ですが、IC3は不正な送金を見つけたら直ちに金融機関に連絡して組戻しを依頼するよう求めています。送金の前後を問わず、「誰に・何分以内に連絡するか」を事前に決めておくことが、被害額を左右します。
出典:FBI IC3「2025 Internet Crime Report」https://www.ic3.gov/AnnualReport/Reports/2025_IC3Report.pdf
AIメール検知は補助:できることと限界
送金前の確認ルールと運用を固めたうえで、AIを使ったメール検知は入口の段階を補助できます。ただし各段階に限界があるため、導入の判断ではその前提を置く必要があります。
| 段階 | AIの役割(一般的な仕組み) | 限界・注意点 | 出典・根拠 |
|---|---|---|---|
| ①受信前後のなりすまし検知 | 文面、送信元ドメインの類似、普段のやり取りとの差異からなりすましを判定する | フリーメールの正規アカウントや、乗っ取られた正規アカウントからの送信はフィルタを回避しやすい | IPA(2026年8月3日) |
| ②送信ドメイン認証との組み合わせ | SPF・DMARCと連動して差出人ドメインの正当性を補強する | 送信元の組織が対策をしていないと、差出人表示は偽装できる | IPA(2026年8月3日) |
| ③アカウント保護・不審ログイン検知 | ログインの挙動の異常や、外部転送設定の変化を検知する | 検知する前に乗っ取り期間中の盗み見が終わっていることがある | 警察庁 |
| ④送金直前の口座変更・緊急依頼の検出 | 口座変更や緊急送金の依頼を拾い上げ、承認の手続きに回す補助 | 最終判断は人とルール。ビデオ会議でのなりすましはメール判定の外側にある | IPA(2026年8月3日) |
具体例として、トレンドマイクロの「Writing Style DNA」は、経営幹部などの文体を7,000以上の特徴で学習し、なりすましが疑われるメールをその文体と照らし合わせて見つけます。見つけたときは、なりすまされた本人・受信者・IT部門に知らせます(トレンドマイクロの2018年4月17日の発表)。Microsoft Defender for Office 365の「メールボックスインテリジェンス」は、利用者がふだんやり取りする相手とのメールの傾向を学習し、正規の送信者となりすました送信者を見分ける助けにします(Microsoft Learn)。
ただしMicrosoft Learnには、攻撃者がそっくりなドメインを取得して送信ドメイン認証の設定を正しく行えば、SPF・DKIM・DMARCの確認を通過しうると明記されています。判定を厳しくするほど、正常なメールを誤って止める件数も増えます。AIの検知は、送金前の確認ルールを置き換えるものではありません。
メールセキュリティ製品の例:Microsoft Defender for Office 365
メールサービスの機能として検知を補う例に、Microsoftの製品があります。Microsoftの公式ページ(2026年11月2日に確認)には、次の内容が載っています。
| 項目 | 内容(Microsoft公式ページの記載) |
|---|---|
| プラン1 | 1ユーザーあたり月299円相当(年払い、年間サブスクリプションで自動更新、消費税別)。フィッシング対策として、悪意のあるリンクやQRコードへのリアルタイム保護と、言語モデルをもとにした感情分析を含む |
| プラン2 | 1ユーザーあたり月749円相当(年払い、年間サブスクリプションで自動更新、消費税別)。攻撃シミュレーショントレーニングを含む |
| なりすまし・BEC関連 | SPF・DKIM・DMARCに照らしてメールをチェックし、送信者のIDを確認してドメインの不正使用を特定する。BEC対策として、侵害されたユーザーの自動無効化、侵害されたデバイスの隔離、配信後の悪意のあるメールの削除を挙げている。どの機能がどのプランに含まれるかは、ページ上では明確に示されていない |
出典:Microsoft「Microsoft Defender for Office 365」https://www.microsoft.com/ja-jp/security/business/siem-and-xdr/microsoft-defender-office-365(価格は変わることがあるため、導入前に公式ページで確認してください)。ほかのメールサービスや製品も、機能と料金は各社の公式ページで確認する必要があります。
攻撃者側がAIで本物らしい文面を作る動きは、AIを使った攻撃の被害事例や、AIセキュリティの全体像をたどるAIセキュリティ対策の解説でも追えます。BECの防御では、AIの検知精度よりも、メール以外の経路で確認する手順が守られているかどうかが分かれ目になります。
ほかの侵入の手口と対策
BECは、ほかの手口と組み合わせて使われることが多い攻撃です。たとえばメールアカウントの乗っ取りの前には、フィッシングやブルートフォース攻撃、多要素認証の突破があります。それぞれの手口の仕組みと対策は、次の解説ページに分けてあります。
| 手口(詳しい解説へ) | どんな攻撃か |
|---|---|
| サプライチェーン攻撃 | 委託先・取引先・OSS・クラウドなど、自社の外にあるつながりを経由して侵入する攻撃 |
| VPNの脆弱性を狙う侵入 | VPN機器など外部に公開している機器の、修正されていない弱点から入り込む攻撃 |
| フィッシング | 本物そっくりのメールやサイトでID・パスワードを入力させて盗む手口 |
| 多要素認証の突破 | 承認通知の連打・中継型の偽サイト・SIMの乗っ取りで、2段階目の確認をすり抜ける手口 |
| ブルートフォース攻撃 | パスワードの総当たりや、流出したID・パスワードの使い回しを試してログインする攻撃 |
| ラテラルムーブメント | 侵入した後、社内ネットワークを横に移動して管理者の権限や重要なデータへ近づく行為 |
| 内部不正 | 社員・退職者・委託先が、与えられた権限を悪用して情報を持ち出す行為 |
| DDoS攻撃 | 多数の機器から大量の通信を送りつけ、サイトやサービスを止める攻撃 |
よくある質問
Q. ビジネスメール詐欺(BEC)とはどのような詐欺ですか?
取引先や経営者になりすました偽メールで従業員をだまし、攻撃者の口座へ送金させる詐欺です。IPAは「取引先との請求書の偽装」と「経営者等へのなりすまし」の2タイプを代表的な手口として挙げています。特定の企業を標的に、メールのやり取りを盗み見るなどしてから実行されることがあるため、文面が自然になります。
Q. ビジネスメール詐欺の対策で、まず何をすればよいですか?
送金や口座変更の依頼を、メールに書かれた連絡先ではなく、名刺やアドレス帳の連絡先に電話などで確認するルールと、複数の担当者で承認する体制を決めます。費用がかからず、警察庁・警視庁・IPAが共通して挙げている対策です。あわせて、メールやSaaSに多要素認証を設定します。
Q. 送金先変更のメールが来たらどう対応すべきですか?
送信元アドレスが本物によく似た偽装でないかを確認したうえで、メール以外の手段で取引先の担当者に確認します。連絡先はメール本文のものを使いません。口座変更の理由がもっともらしくても、確認は省きません(警察庁、JPCERT/CC)。
Q. 国内ではどのくらい被害が出ていますか?
国内全体の被害額を示す公的な統計は、本稿で確認した資料には見当たりませんでした。JPCERT/CC の2020年の調査(12組織117件)では、把握した不正な請求額の合計が日本円換算で約24億円で、被害に遭った事案では数百万〜数千万円規模もありました。2017年には日本航空が約3億8,000万円を詐取された事例が報じられています。
Q. 誤って送金してしまったら何をすべきですか?
直ちに送金元の銀行へ組戻しを依頼します。そのうえで、攻撃メールとヘッダ情報を保存し、最寄りの警察署に通報します。ウイルスチェックとパスワード変更、不正アクセスや外部転送設定の調査も行います。調査は内部関与の可能性を考えて少人数で進めます(警察庁)。
Q. AIでBECを完全に防ぐことはできますか?
できません。AIはメールの文面や送信元の異常を検知する段階では役立ちますが、正規アカウントからの送信やビデオ会議でのなりすましは、メールフィルタの外側にあります。別経路での確認と承認ルールを前提に、AIは補助として使います。
参考文献
- IPA「企業組織を狙う攻撃メールの手口とその対策」(2026年8月3日)
https://www.ipa.go.jp/security/support/rcu1hd0000019vmo-att/20260803_1.pdf - IPA「ビジネスメール詐欺(BEC)対策」
https://www.ipa.go.jp/security/bec/bec_measures.html - IPA ビジネスメール詐欺(BEC)対策特設ページ
https://www.ipa.go.jp/security/bec/about.html - 警察庁「ビジネスメール詐欺(BEC)」
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/countermeasures/bec.html - 警視庁「ビジネスメール詐欺」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/cyber/notes/business_mail.html - JPCERT/CC「ビジネスメール詐欺の実態調査報告書」(2020年3月25日)
https://www.jpcert.or.jp/research/20200325_BEC-survey.pdf - IPA「ビジネスメール詐欺「BEC」に関する事例と注意喚起」(2017年4月3日)
https://www.ipa.go.jp/archive/files/000058478.pdf - Microsoft「Microsoft Defender for Office 365」
https://www.microsoft.com/ja-jp/security/business/siem-and-xdr/microsoft-defender-office-365 - IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」
https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html - 総務省「特定電子メール等による電子メールの送受信上の支障の防止に資する技術の研究開発及び電子メール通信役務を提供する電気通信事業者によるその導入の状況」(令和4年4月)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000813789.pdf - 警察庁「Cyber Police Agency Letter R5 Vol.11 DMARCでフィッシングメール対策!」
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/pdf/Vol.11cpal.pdf - FBI IC3「2025 Internet Crime Report」
https://www.ic3.gov/AnnualReport/Reports/2025_IC3Report.pdf - FBI IC3「2024 Internet Crime Report」
https://www.ic3.gov/AnnualReport/Reports/2024_IC3Report.pdf - FBI IC3「2021 Internet Crime Report」
https://www.ic3.gov/AnnualReport/Reports/2021_IC3Report.pdf - トレンドマイクロ(2018年4月17日発表)Writing Style DNA
https://www.trendmicro.com/en_au/about/newsroom/press-releases/2018/2018-04-17.html - Microsoft Learn「Anti-phishing policies in Microsoft Defender for Office 365」
https://learn.microsoft.com/en-us/defender-office-365/anti-phishing-policies-about - J-CASTニュース(2017年12月20日)JAL報道
https://www.j-cast.com/2017/12/20317156.html - Computing「Deepfake fraud costs engineering giant Arup £20m」(報道による)
https://www.computing.co.uk/news/4209651/deepfake-fraud-costs-engineering-giant-arup-gbp20m
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