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PewDiePieのローカルLLM「Ajax」発表、重みの公開は10月12日時点で未確認
文:クリスタルメソッド編集部 監修:河合 継(代表取締役)

PewDiePieのローカルLLM「Ajax」——発表されたが、2026年10月12日時点で重みの公開は確認できていない
YouTuberのPewDiePie(Felix Kjellberg)が、Alibabaのオープンウェイトモデル「Qwen 3.5 9B」を土台に調整したローカルLLM「Ajax」を発表した。この記事では、報道で確認できた範囲でAjaxの現状を整理し、あわせて個人がLLMをファインチューニングする一般的な手順を、Hugging Faceの公式ドキュメントで確認できた範囲で解説する。
結論から言うと、10月3日の公開が予告されていたが、報道では「まだダウンロードできない」とされ、2026年10月12日時点で当サイトはAjaxの重み(モデル本体)の公開を確認できていない。Hugging Faceの公開APIで「ajax pewdiepie」を検索しても該当するモデルは返らなかった(10月12日に当サイトが確認)。以下の学習方法やOpenAIとのやり取りは、いずれも本人の説明を報じたものであり、独立した検証を経たものではない。
ローカルLLMを自社で動かすときの判断基準は、DeepSeekの衝撃と日本企業の導入判断基準で解説しています。
Ajaxについて報道で確認できたこと
Popular AIによると、Ajaxは「Qwen 3.5 9Bをファインチューニングし、Odysseusでのツール使用に合わせたモデル」で、本人のセルフホスト型ワークスペース「Odysseus」向けに調整されている。用途は検索、ブラウジング、メール、カレンダーなどの作業だ。Interesting Engineeringは、常時稼働のローカルAIアシスタントとして動かす小型言語モデルだと報じている。
公開時期については、Popular AIが10月2日付の記事で、公式ページに「2026年10月3日 08:25 JST」の公開予定が示されていたと伝えた。ただし同記事は、その時点では「近日公開のモデルであり、公開ダウンロードではない」とし、最終的なモデルカード、公開ベンチマーク、ライセンスはまだ無いと述べている。
10月3日付のDecryptは「Ajaxはまだダウンロードできない」と報じ、ダウンロードページにあったカウントダウンのタイマーが消えていたと伝えている。10月5日付のGadget Pilipinasも「現時点でPewDiePieはAjaxを一般公開していない」と書き、本人は時刻を決めず、準備ができた時点で公開すると述べたとしている。これ以降の日付で、公開を伝える報道は今回の調査では見つからなかった。
| 項目 | 確認できたこと | 出典 |
|---|---|---|
| 土台のモデル | Qwen 3.5 9B(Alibaba) | Popular AI、Interesting Engineering |
| 公開予定 | 10月3日 08:25 JSTと予告されたが、その後タイマーは消えた | Popular AI、Decrypt |
| 重みのダウンロード | 10月3日・10月5日の報道時点でいずれも不可。10月12日時点で公開は確認できていない | Decrypt、Gadget Pilipinas |
| モデルカード・ベンチマーク | 10月2日時点で未公開 | Popular AI |
| ライセンス | Ajaxの重みのライセンスは未確認(土台のQwen3.5-9BはApache 2.0) | Popular AI、Interesting Engineering |
次に読む:ローカルLLMをミニPCで企業導入するには?
学習方法とOpenAIの停止について——いずれも本人の説明
以下は、PewDiePie本人が発表や動画で語った内容を各媒体が伝えたものだ。第三者による検証はない。
Popular AIによれば、本人は当初「数万件の実ユーザーのサンプル」を期待したが集まった量は少なく、生成データをフィルタして学習例に使ったという。さらに、Odysseus上のタスクで数週間にわたりGRPO(強化学習)を回したと説明している。Decryptは、訓練データの生成にOpenAIのモデル「GPT-5.6 Sol」を使ったと伝え、現在もGRPOでの学習を続けており、次は拒否の除去をやり直し、量子化とベンチマークを行う予定だとしている。
拒否応答の低減には、オープンソースのツール「Heretic」を使ったと本人は述べている。Popular AIによると、これは選んだ重みに方向性アブレーションをかける手法で、本人は他者や自分自身に害を及ぼす依頼への制限は残したと説明している。同記事は、Ajaxは「制限が少ない」のであって「拒否が一切ない」わけではないと整理している。Gadget Pilipinasは、安全策について、報じる側も独立した評価は行われていないとしている。
OpenAIとの件について、Popular AIは、本人の説明として「アカウントが停止され、異議申し立てで復旧し、その後再び停止された」と伝え、理由は独立に確認されていないとする。Decryptは、最初の停止はSolの推論トークンの蒸留を試みた後、2回目はSolでシードデータを作った後だったという本人の説明を伝えている。同記事によれば、OpenAIの利用規約は競合モデルの開発にOpenAIの出力を使うことを禁じているが、OpenAIからの公的な回答は見つからなかったという。本人は、早期版のAjaxが想定タスクを「10回中約9回」こなすと語ったが、Popular AIはこれを再現可能なベンチマークではないとしている。
必要なメモリの目安——Ajaxではなく土台のQwen3.5-9Bの値
VRAMの目安として「BF16で約22GB、FP8で約11GB」という数字が報じられているが、Popular AIによると、これはAjaxの値ではなく、土台であるQwen3.5-9Bのvllm向け手順に書かれた値だ。Ajax自体の必要メモリは、重みと量子化版が公開されていないため確認できていない。ファインチューニング時は、推論に加えて勾配やオプティマイザの状態が必要になるため、さらに多くのメモリを要する点にも注意したい。
個人でLLMをファインチューニングする一般的な流れ
ここからはAjax固有の話ではなく、Hugging Faceの公式ドキュメントで確認できた範囲での一般的な流れだ。
①データ準備
TRLのSFTTrainerは、通常のテキスト、会話形式(messages)、プロンプトと応答の組(prompt-completion)といった形式の学習データを受け付ける(Hugging Face TRLドキュメント)。ツール呼び出しを学習させる場合は、ツール呼び出しとその結果を含む会話、および利用可能なツールのJSONスキーマを各例に含める形式が用意されている。著作権、個人情報、ライセンス条件の確認はこの段階で済ませたい。
②土台モデルの選定
土台にするモデルのライセンスはモデルカードで確認する。報道によれば、Qwen3.5-9BはApache 2.0で公開されている(Popular AI)。
③SFTとLoRA
TRLのSFTTrainerは、PEFTライブラリのLoraConfigをpeft_configに渡すことで、モデル全体ではなくアダプタだけを訓練できる。公式ドキュメントは、アダプタ訓練では新しく学習するパラメータが少ないため、学習率を1e-4前後と高めにするのが一般的だと述べている。メモリを抑えたい場合は、quantization_configとpeft_configを組み合わせるとQLoRAの訓練になる(同ドキュメント)。PEFTのLoRAには、更新行列の大きさを決めるr(ランク)、スケーリングのlora_alpha、lora_dropout、対象を指定するtarget_modulesといった設定がある(Hugging Face PEFTドキュメント)。
④アダプタの統合
PEFTのmerge_and_unload()で、アダプタの重みを土台モデルに統合し、単体のモデルとして使えるようにできる。戻り値のモデルを変数に受けて使う必要があり、元のモデルをその場で書き換える関数ではない(PEFTドキュメント)。
⑤評価と安全性
Ajaxには、10月2日時点で公開ベンチマークが無いとPopular AIは述べている。自分で調整したモデルを他者や業務に提供する場合は、独自の評価セットでの確認が欠かせない。拒否応答を減らす処理を加える場合は、その影響を十分に評価したうえで採否を判断する必要がある。
強化学習の基礎は強化学習の基礎と応用で、テキストデータの前処理はテキストマイニングの手法解説で整理している。
日本のユーザーにとっての見方——事実と意見を分けて
ここからは事実ではなく、当サイトの見方である。
Ajaxの重みが実際に公開されれば、小型のローカルモデルでエージェント的な作業を動かす事例として、日本の個人や組織にも参考になる可能性がある。ただし現時点では、公開の有無、ライセンス、必要メモリ、性能のいずれも確認できていない。業務での採用を検討するのは、それらが公式に示されてからにすべきだろう。
また、本人の説明によれば開発中にクラウドLLMのアカウント停止が起きたという。これが事実どおりなら、外部サービスの規約変更や停止に開発が左右されるリスクを示す例になる。ただし理由はOpenAIから公表されておらず、個別の事情に一般化することは避けたい。
日本で訓練データを扱う際は、個人情報保護法や著作権法の観点での確認が必要になる。生成AIに関する制度の動きは変わりやすいため、最新の公的な情報を確認してほしい。
機械学習全般は機械学習の基礎解説、マルチモーダルモデルはマルチモーダルAIの解説で整理している。
参考文献
- Popular AI: PewDiePie Ajax AI model — https://www.popularai.org/p/pewdiepie-ajax-ai-model
- Interesting Engineering: PewDiePie Ajax AI model — https://interestingengineering.com/ai-robotics/pewdiepie-ajax-ai-model-local-pc-openai-ban
- Decrypt: OpenAI Banned PewDiePie Twice While He Built Ajax — https://decrypt.co/380001/openai-banned-pewdiepie-twice-ajax-uncensored-ai
- Gadget Pilipinas: PewDiePie Ajax AI model — https://www.gadgetpilipinas.net/2026/10/pewdiepie-ajax-ai-model/
- Hugging Face TRL: SFT Trainer — https://huggingface.co/docs/trl/sft_trainer
- Hugging Face PEFT: LoRA — https://huggingface.co/docs/peft/package_reference/lora
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